「管理職として仕事にどんな魅力を感じていますか?」
「管理職の仕事の魅力を部下に語ることが出来ていますか?」
こんな質問を、管理職向けのマネジメント研修ですることがあります。すると多くの皆さんは、
「管理職の魅力を言葉にできません……」
「魅力というより、しんどさしか思いつきません……」
といった、反応や答えをされます。
多くの管理職が、その仕事に疲れ、一種の被害者意識を持ちながら仕事をされているようです。この記事を読まれている皆さんはいかがでしょうか?
管理職が組織の中で仕事をする姿は、部下に大きな影響を与えています。上記のような管理職の態度は、部下のキャリア目標を喪失させ、主体性を下げてしまうことでしょう。
今回は、部下の主体性を上げる管理職の関わり方や姿について、お話を進めてまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
部下に「あきらめ」を感じさせていないか
まず自分自身が若手のころに先輩管理職に感じた「あきらめ」と「認められた瞬間」を思い出してみましょう。そこに部下の主体性を下げたり、上げたりするポイントがあります。
「あきらめ」を感じた瞬間を聞いてみると、次のような答えが返ってきます。
「成功体験を武勇伝のように聞かされ続けたとき」
「出した提案がなんの説明も無く却下されたとき」
「質問に答えをもらえず、しのごの言わずにやれと言われたとき」
「自ら主体的に取り組んだことが評価されなかったとき」
逆に「認められた瞬間」を聞いてみると、次のような答えが返ってきます。
「自分のアイディアや提案を、上司が取り上げてくれたとき」
「上司から意見を求められたとき」
「新しいプロジェクトにアサインされたとき」
「失敗の原因を一緒に考えてくれたとき」
現在の皆さんの部下への関わり方は、どちらが多いでしょうか? 部下に「あきらめ」を多く感じさせているとしたら、主体性は下がっていくばかりですし、「認められた瞬間」を多く作ることができていれば、逆に主体性は上がっているでしょう。
部下の「社会帰属欲求」と「承認欲求」を満たしていく
マズローの「欲求5段階説」では、人間の欲求は「生理欲求」→「安全欲求」→「社会帰属欲求」→「承認欲求」→「自己実現欲求」へと段階的に上がっていくと説明しています。
主体性を発揮するようになるためには、部下自身が「自己実現欲求」を抱いていることが重要です。そのためには、いいチームといい上司との繋がりを感じられる「社会帰属欲求」と、認められる瞬間がもたらす「承認欲求」を満たしていく必要があります。部下とのコミュニケーションで相互の信頼関係を作りながら、認められた瞬間を作り上げていくのです。
そして、部下とのコミュニケーションの中で見せていきたいのが、上司の仕事に対するワクワク感です。上司の姿は、部下にとっては自分の将来の姿でもあります。上司の姿にワクワクすることができれば、部下の主体性は更に上がっていきます。部下にとっての目標ができるからです。そのために次のようなことを日々考え、部下に語っていきましょう。
「自身の会社の未来で、ワクワクすることは何なのか?」
「業界の未来で、ワクワクすることは何なのか?」
「ワクワクするビジネスの潮流は何なのか?」
「若い頃から持っている人生への拘りや思いは何なのか?」
上司自身のワクワクする姿は、部下に夢や希望を与えていきます。夢や希望に向かっていく姿は、部下の主体的な行動を生み出していきます。日々の関わりの中で、管理職自身のワクワクしている姿を見せていきましょう。それが、組織成果を上げていくことに繋がっていくのです。