トップへ

走って楽しいミニバンが完成? 新型「ヴェルファイア Zプレミア」に乗る!

2023年08月08日 11:41  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
ショーファーカーの「アルファード」、ドライバーズカーの「ヴェルファイア」という立ち位置の違いが濃厚になったトヨタの大型高級ミニバン2台。今回は2.4L直列4気筒ターボエンジンを搭載するヴェルファイアの専用グレード「Zプレミア」(Z Premier)に乗った。ミニバンなのに走って楽しい……そんなクルマは作れた?


○ヴェルファイアに訪れた「変曲点」



もともとヴェルファイアは、今回のフルモデルチェンジで廃止されるはずの運命だった。アル/ヴェルのチーフエンジニアを務める吉岡憲一氏によると、「アルファードに一本化するにあたって、ヴェルファイアのユーザーが取れるように『アルファード エアロ』というモデルを当初は計画していました。しかし、豊田(章男)会長から『ヴェルファイアを名指しで買ってくれるお客様がいるのだから、大事にしよう』という助言を受け、ヴェルファイアの新型を作ることになったんです」とのことだ。



新型ヴェルファイアの開発はどのような考え方で進めたのか。吉岡氏の答えはこうだ。



「前のヴェルファイアは『ヤンチャにしすぎた』のが反省点。アルファードもそうなのですが、先代のマイチェンモデルあたりがピークで、世の中は、それにだいぶ疲れてきたんじゃないかな、と思いました。そこでまた飛びすぎると、前と同じことになってしまう。ヴェルファイアの『答え』は、実はアルファードに近いところにあるのではと考えました。つまり、今は高度成長期からの変曲点で、そこで同じ“過ち”を繰り返してはいけない(笑)。開発の最初はアルファードに一本化する方向だったので、しっかりと熟成ができ、ミニバンの王道がきちんと作れたおかげで、ヴェルファイアの本来あるべき姿が考えやすくなった、という面があります。先代では2台が同時スタートだったので、お互いが牽制しあって、あっちが縦で行くならこっちは横で(これはグリルの話だろう)、2眼なら4眼(これはライトの話)といった傾向があったんです」

○ヤングアットハート(?)なヴェルファイアを味わう



というわけで、「ヤングアットハート」(試乗会当日のヴェルファイアの説明文に記載されていた文言)な気分を鼓舞する気持ちのいい走りをヴェルファイアに与えるため、専用パワートレインとしてハイパワーな2.4Lターボエンジンを搭載し、足回りの強化と専用の加飾を施したのが「Zプレミア」グレード(FF)だ。本体価格は655万円で最上級の「エグゼクティブラウンジ」(Exective Lounge)グレードに比べたら200万円以上お安くなるのだけれど、ユニバーサルステップやドラレコ、フロアマットなどのオプションを含めると700万円近くなるので、やっぱり高額なモデルであることに変わりはない。


最高出力205kW(279PS)、最大トルク430Nmの2.4L直4インタークーラー付きターボエンジンは、先代が搭載していたV型6気筒エンジン(301PS/361Nm)の代替と見ていい。最高出力はわずかに劣るものの、1,700rpmという低回転域から発生する最大トルクは70Nm近くもアップしている。


走り始めると「Direct Shift-8AT」(トランスミッション)とのマッチングがよくて、エンジンは乾いた音を立てながら大きなボディを気持ちよく加速させてくれる。ボディ強化のウリとなったフロントパフォーマンスブレース(ヴェルファイアには全車採用)をはじめ、3バルブの周波数感応(伸び側のみ)型ダンパーやアルミを使用してバネ下荷重を軽減した専用チューニングの足回り、標準から2インチアップした225/55R19サイズのダンロップ「SPスポーツMAXX」タイヤになどより、アップダウンや狭いコーナーが連続する首都高でミニバンとは思えないようなビシッとした走りを披露してくれた。


ハイブリッドのTHS-Ⅱに乗った際には時折顔を出していたラバーバンドフィールは影を潜めた。角度が立ち上がったステアリングの操舵感、ショートストローク化したアクセルペダル、そしてエンジン音が一体化したダイレクトな感じなどは、走り屋さんにアピールできるストロングポイントだ。メーターはエンジン回転数がよくわかる専用の表示スタイルになっている。

一方で、コンフォート面重視の2列目、3列目については、さすがに最上級モデルに比べたらわずかに劣る。とはいえ、それはあちらがすごすぎるので仕方ないし、わずかな差で抑えているところはむしろ評価すべきポイントなのかもしれない。Zプレミアの快適性は、十分に満足できるレベルにある。


サンセットブラウンカラーのコンソールやオットマン付きのナッパレザーシート(リアマルチオペレーションパネルがない代わりに、3列目へのウォークスルー幅が確保されている)による室内は、落ち着きと明るさを両立している。同乗する家族から不満が出ることはないだろう。

○いつ手に入るの?



もう1台、ヴェルファイアの最上級グレード「エグゼクティブラウンジ」のE-Four(4輪駆動)モデルにも乗ることができた。こちらはアルファードの同グレードより20万円高い892万円。ブラックのボディにメッキの横バーグリル、225/55R19タイヤと切削光輝+ブラック塗装のアルミホイール、シーケンシャルの前後ウインカーなどの組み合わせは、先代のぶっ飛んだイメージから大きく変化していて、意外にシックでエレガントだ。


ブラックナッパレザーのエグゼクティブラウンジシートはアルファードの同グレードよりもわずかに引き締まった乗り心地を示すのだが、こちらの方が好きだというVIPもいらっしゃるはず。ホスピタリティの面も含め、ショーファーカーとしても大満足の仕上がりだと思う。


先代ヴェルファイアは売り上げが伸び悩んでいたが、新型アル/ヴェルでは販売比率を7:3まで持っていきたいというのがトヨタの目論見。改良の方向性が図に当たったのか、今のところは狙い通りの販売比率で売れているという。



ただし、新型アル/ヴェルで問題となるのはその納期だ。8,500台/月の生産枠については、すでに1年分があっという間に完売状態。バックオーダーを含めたら2~3年先まで手に入らない可能性があるという。売れ筋モデルの宿命で、試乗中に絶えず周りからの視線を感じたのは人気の証拠なのである。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)