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『ドラえもん』人を認め、鼓舞し、愛を伝える……心に響く名ゼリフ3選

2023年08月05日 14:20  リアルサウンド

リアルサウンド

『ドラえもん』1巻

 1969年に連載が開始され、今もなお愛され続けている不朽の名作『ドラえもん』。漫画版の累計発行部数は1億を超え、2019年12月から2020年11月にかけて発売された50周年記念関連のコミックスは500万部を突破するほどの人気ぶりだ。


(参考:【写真】日本の帽子メーカーが本気を出した『ドラえもん』デザインのニットキャップがすごい


 『ドラえもん』が人気のひとつは、子どもが読んでも大人が読んでも楽しめるというところだろう。お笑い芸人のバカリズムや、麒麟の川島明、ミュージシャンのHYDEは『ドラえもん』好きを公言しており、バラエティ番組「アメトーーク!」では芸人たちが『ドラえもん」について熱弁していた。


 そんな『ドラえもん』には、心に響く名セリフがたくさん登場している。本稿ではあらためて、その一部を紹介したい。


■「のび太くんを選んだきみの判断は正しかったと思うよ」


 こちらは25巻「のび太の結婚前夜」での、しずかちゃんのお父さんがしずかちゃんにかけた言葉だ。


 ある日のび太は、将来本当にしずかちゃんと結婚できるのか心配になり、タイムマシンでドラえもんと一緒に自分の結婚式を見に行く。しかしドラえもんがタイムマシンの設定をうっかり間違えてしまい、結婚前夜に来てしまう。そこでは、大人のしずかちゃんがお父さんにさよならの挨拶をしているところだった。


 自分が結婚することで両親に寂しい思いをさせてしまうのではという想いから、突然、しずかちゃんは結婚をやめると言い出してしまう。そんな彼女に向けてお父さんがかけた言葉が、「のび太くんを選んだきみの判断は正しかったと思うよ」である。


 お父さんは続けて、「あの青年は人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ。それがいちばん人間にとって、だいじなことなんだからね。かれなら、まちがいなくきみをしあわせにしてくれると、ぼくは信じているよ」と述べている。


 一見ダメ男に思われがちなのび太の人間性を見抜いた言葉に、胸を打たれた人も多いことだろう。結婚前のナイーブな心境の女性であれば、親からこんな言葉をかけられたら「彼を選んだ自分を信じよう」と安心できるのではないだろうか。


■「負けてもいいから戦うぐらいの勇気をもて」


 自信がなくチャレンジできない人に対して、これだけストレートに鼓舞し、背中を強く押すフレーズもなかなかないだろう。ジャイアンにいじめられてドラえもんにひみつ道具を出してもらったものの、満足できるものがなかったため「いっそジャイアンに謝ってくる」と言い出したのび太。これはそんなのび太にドラえもんがかけた言葉である。


 このエピソードは第2巻の「大きくなってジャイアンをやっつけろ」中の出来事だ。作中でのび太は実際に立ち上がることはなく、「中学生の自分なら、小学生のジャイアンに勝てるのでは?」と思い立ちタイムマシンに乗り込む。どこまでも他力本願なのび太に、思わずクスッと笑えるのも本エピソードの見どころだ。


 勝てそうもない勝負や、どうしても勇気が出ない時は誰にでもあるもの。しかし立ち向かわないことには、勝利を手に入れることもできない。ドラえもんのこの言葉を聞いて、「やってやろう」と立ち上がった人も多いはず。


■「見たろ、ドラえもん。かったんだよ。ぼくひとりで。もう安心して帰れるだろ、ドラえもん」


 こちらは第6巻「さようなら、ドラえもん」で、未来に帰ってしまうドラえもんに向かってのび太が放った言葉だ。ドラえもんが心配しないよう、一人でジャイアンに立ち向かうのび太。結果的にのび太はボロボロにされるが、のび太の揺るぎない気迫にジャイアンは逃げ帰ったのだ。


 これまでのび太を見てきたドラえもんからすると、感慨深いものだろう。読者からしても、のび太の男らしさと底力を目の当たりにして惚れ直した人も多いのではないだろうか。何より、わりと打算的な面もあるのび太が、損得勘定なく、むしろ自分が傷ついてまでドラえもんを思った行動を取ったことに、深い愛情を感じる。


 笑いと、涙なしでは読めない『ドラえもん』。作中で生み出された数々の名セリフは、今を生きる現代人を勇気づける。大人になった今、読み直してみると新しい発見があるかもしれない。


(文=鳥羽竜世)