2023年08月05日 08:30 弁護士ドットコム
ホテルに泊まったら、ホームページや予約サイトの写真と実際の部屋が全然違う。そんな経験はありませんか。
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Twitterにも、「写真はイメージですってよくあるけど、違いすぎ」「部屋の半露天風呂、写真と全然違う」「良いホテルおさえたつもりだったけど完全に写真詐欺でビジホレベル」など、予約時とのギャップに驚く声が多数投稿されています。
景色や内装が写真と大きく違った場合、ホテル側に返金を求めることができるのでしょうか。大村真司弁護士に聞きました。
——部屋に入ってガッカリしたという経験をした人も多くいそうです。
ホテル側に返金を求めるということは、「話が違う」とキャンセルしたのではなく、泊まりはしたのでしょうね。その場合、残念ながら、ほとんどのケースでは返金は難しいと言わざるを得ません。
——返金は難しいのですね。なぜなのでしょうか?
今回のケースの場合、返金を求めるための法律上の言い分として、「錯誤(民法95条)」か「詐欺(民法96条)」を理由とした契約の取消しが考えられます。
簡単にいうと、錯誤は、いいホテルであると「勘違い」することです。ただ、契約の重要部分であることが必要です。また、動機の部分で勘違いしていたという「動機の錯誤」なので、ホテル側への表示(契約までにホテルにその動機を把握させること)が必要です。
詐欺は、ホテル側に「騙された」ということです。この場合、騙されていなければ契約しなかったと言えるかが問題になります。
契約上、ホテルの義務の中核は「宿泊する場所を提供すること」です。泊まった以上は、顧客はその義務を果たしてもらっていることになります。そうすると、イメージの違いがあったとしても、「契約の意味を無にするほどの重要な違いだった」とか、「騙されていなければ泊まっていなかった」といえるケースはなかなかないでしょう。人によって感じ方は違いますが、一般人にとってどうかということです。
別の法律上の言い分として、「債務の不完全履行」として宿泊費の一部相当額の損害賠償を求めるということも考えられます。ホテル側が完全には義務を果たしていないので、一部を返金するというものです。
こちらのほうがまだ可能性がありそうですが、宿泊代金の客観的な相場を認識することが難しく、ましてや写真のイメージ通りの宿泊と実際の宿泊の価値の差を算定することはさらに難しいので、現実的には難しいと思います。
【取材協力弁護士】
大村 真司(おおむら・しんじ)弁護士
広島弁護士会所属。広島弁護士会 非弁・業務広告調査委員会委員長、消費者委員会委員、国際交流委員会副委員長、子どもの権利委員会委員
事務所名:大村法律事務所
事務所URL:http://hiroshima-lawyer.com