パーン! パーン! パーン!
栃木県佐野市内にある寺院の本堂に、何かを叩く音が響きわたる。
四つん這いにさせた女性の下着越しの尻を、僧侶が修行に使う『警策(けいさく)』で叩く音だ。満足した僧侶は、女性の尻をなでまわし抱き寄せた。そして、
「痛かったね」
そう、耳元で囁いたという――。
強制わいせつの疑いで逮捕された住職の「地元の評判」
栃木県警は、7月19日に市内にある寺院『法雲寺』の住職だった鷲見一道容疑者(83)を強制わいせつの疑いで逮捕した。
「逮捕容疑は、今年5月の午後1時ごろ、鷲見容疑者は30代の女性のズボンを下げて、尻を木の棒で3回叩いたうえで、尻を手でなでた疑いです。鷲見容疑者は、寺の境内を散歩していた女性に声を掛け、本堂に連れて行った。本堂では“修行だから”と女性を四つん這いにさせ、口頭でズボンを脱ぐように指示。事件翌日、女性は夫と一緒に佐野署を訪れ被害届を提出しました。鷲見容疑者は“尻を木の棒では叩いたが、手では触っていない”と容疑を否認しています」(捜査関係者)
また、煩悩にまみれた僧侶がひとり……。さぞ修行が足りなかったのだろうと、寺院の周辺で話を聞いた。近隣住民の男性はこう話す。
「私が子どもの頃からのお付き合いですが、面白くて人を惹きつける魅力のある素敵な人ですよ。言うならば、現代の一休宗純ですね」
一休はかつて実在した僧侶で、とんちを働かせて難題を解決するアニメ『一休さん』のモデルとなった人物。書や詩などでその才能を発揮していた一方、禅僧にも関わらず酒や肉を好み遊郭に通うなど、仏教の戒律を守らなかった破戒僧としても知られる。
「鷲見さんは自身の欲求に素直な人です。宗教家としても、決めたことはやり遂げる。近くの川が決壊して、この地域周辺はひどい水害に遭いました。そのとき、特に被害の酷かった方のために本堂を解放して、お世話していました。確かに女性が好きというのはありましたけど、それは男性として健全ではないですか?」(同・近隣住民男性、以下同)
逮捕される少し前には、男性の自宅の庭に入って、手入れをしてくれたという。
「法雲寺は檀家が少ないため、鷲見さんは庭師としても働いていました。高齢なのに、高い木に梯子をかけて登ったりもして、丁寧に仕事をしてくれましたよ。うちではウサギを飼っていたのですが、逃げ出して行方がわからなくなっていたんです。
鷲見さんは庭仕事をする中で、うちの庭の隅で亡くなっていたウサギを見つけてくれたんです。そして木の板に戒名を書いて、丁寧に供養してくれました。そういう心ある人なんです。うちの子どもたちも、鷲見さんに懐いていますよ」
『法雲寺』の檀家の男性も、こう話す。
「おおらかで気持ちのいい人です。鷲見和尚は、創意工夫を凝らし、書画や彫刻のほか、美しい音を奏でる庭園の装飾のひとつである水琴窟なども手掛け、広く評価されています。最近では御朱印なども人気で、遠方から訪れる人もいた。そればかりか、お寺で音楽界やお茶会を開いたり、以前は子どもたちに向けて英語の塾を開いたりと、地域を一生懸命に盛り上げようとしていたのです。だからこそ新聞で事件を知って驚きました。何かの間違いだろう……と。女性はなぜ言われるがままズボンを脱いでしまったのか」
そう話す背景には、こんな事情がある。前出の近隣住民男性が明かす。
「もう60年ほど前のことです。鷲見さんがわいせつ行為をした疑いで警察沙汰になって新聞に載ったことがあったよう。ただそれは、鷲見さんが僧侶になる前のこと。それ以降、問題があるなんて話は聞きません」
過去のわいせつ疑いの相手は女児
この事情について、前出の檀家の男性が話を引き継ぐ。
「私の祖父に聞いた話ですが、近所の子どもがお寺でイタズラをしていたそうなんです。それを見つけた鷲見和尚が、叱ろうと“いかんでしょう。こっちにきて尻を出しなさい“と言ったところ、女の子がパンツまで下ろしてしまった。それを偶然に見た人が警察に通報したそうなのです。鷲見和尚としては、叱るためにパーンとお尻を叩いて終わりにしようと思ったのでしょうが……。だから今回も、何かの誤解があったのではないか」(同・檀家の男性、以下同)
そして、ある彫刻を手に取って、こう続けた。
「この布袋様は、以前に鷲見和尚が彫ったもの。見てください。よこしまな気持ちがある人に、こんな顔の布袋様は彫れないと思うんです……」
一部の地域住民からの信頼は厚い。が、その一方でこんな話も。
「あの人は生臭僧侶ですよ。私の姉も被害に遭っていたんです」
そう強く批判するのは、佐野市内に住む女性だ。いったい何があったのか。
「姉が小学生のころですから、もう50年以上前の話です。姉が友だちとお寺で遊んでいたら、鷲見容疑者に呼ばれ今回のように本堂に連れて行かれたそうです。そこで、同じようにお尻を出させられ、お尻を叩かれて触られたって……」(市内に住む女性、以下同)
もしかしたら、先のようにイタズラをした子どもを叱っただけかも? ただ、鷲見容疑者はこんなことも話していたという。
「お尻を触られた後に鷲見容疑者から“親には言うなよ”と言われたので、律義に黙っていたそうです。姉は怖くなってそれからお寺に近づかなくなったと話していました。今回の事件が起きたことを姉に伝えたら“そんなの昔からよ”と言って、話してくれたんです。いくつになっても変わらないんですね。最低ですよ」
子どもに口止めをするとは、何か後ろめたい気持ちがあったからとも思えてしまう。
事件について話を聞こうと『法雲寺』を訪ねた。インターフォンを押すと、昨年10月に住職の座を引き継いだ鷲見容疑者の息子が応答するも、
「被害者の女性には大変申し訳なく思っていますが、捜査中のためお答えは控えさせていただきます」
と言葉少なだった。
「手で触ってはいない」
そう容疑を否認している鷲見容疑者。仮に手で触っていなかったとしても、女性を四つん這いにさせて木の棒で尻を叩く行為に必然性があるとは思えない。煩悩にまみれ、女性を傷つけた罪は重い。