GT300クラスにトヨタGRスープラがデビューしたのは2020年シーズン。埼玉トヨペットGB GR Supra GTが口火を切り、その車両開発には過去に何台ものレーシングカーを独自に製作してきたaprが協力。2021年にはLM corsaとMax Racing、2022年にはHOPPY team TSUCHIYAがGRスープラにマシンをスイッチしている。Max RacingのHACHI-ICHI GR Supra GTこそ“吊るし”の状態に近いが、GRスープラはチームが独自に開発を進め、三車三様の仕立てになっているのが興味深い。それは2023年規定への対応も同じだ。
■前方から後方までトータルで気流制御。軽量化も実現の埼玉トヨペットGB GR Supra GT 埼玉トヨペットGB GR Supra GTは、風洞実験を繰り返してエアロを開発してきた。2023年規定に合わせたエアロも風洞をかけたが、1回目の数値は2022年仕様の性能を上回れなかったという。新規定導入の今季においては、ボディとフロアを分け、それぞれで2022年規定のままでの参戦も認められている。
■性能に加え見た目にもこだわったSyntium LMcorsa GR Supra GT Syntium LMcorsa GR Supra GTは2021年にGRスープラを導入すると、2022年にはフロントマスクを刷新。LM corsaの母体は大阪トヨペット(OTG)であり、ディーラーチームとして市販車の販売にもつながるようにと、フロントバンパー開口部の形状をベース車両のGRスープラに近いデザインとした。さらに、CFD(数値流体力学)によるシミュレーション解析によってフロントフェンダー周辺も改良。ドラッグを減らし、リヤウイングの効率を上げるべく、フロントフェンダー前方が張り出したデザインを採用した。しかし、2023年規定でそれが禁止になってしまった。
フロントフェンダー後方とサイドステップは昨年を踏襲しつつ、フロントカウルを作り直したことでのバランス調整のために小変更。リヤフェンダー後方は、ほとんどのチームが「空力にはあまり影響しない」という見解だったが、凝ったデザインになっている。ボンネットダクトの左右端はリューターによる手仕上げになっているなど、仕上がりが美しいのもSyntium LMcorsa GR Supra GTの特徴だ。OTGではフロントバンパーのような大きなパーツもドライカーボンで成形できるオートクレーブを自社完備しており、だからこそ見た目にもこだわった大掛かりなチャレンジができたという。
■つちやエンジニアリングの2台は旧規定との“ハイブリッド”仕様 GRスープラで3年目を迎えたHACHI-ICHI GR Supra GT(初年度はたかのこの湯 GR Supra GT)、2年目のHOPPY Schatz GR Supra GTはともに、つちやエンジニアリングがメンテナンスを担当している。HACHI-ICHI GR Supra GTは、いわゆるカスタマーカーとなるが、HOPPY Schatz GR Supra GTはつちやエンジニアリングが独自に製作したもので、ほかの3台のGRスープラとは一線を画す存在となる。
プライベーターチームということもあり、費用対効果を重視して2台ともボディは2022年仕様のままとした。そのため、HOPPY Schatz GR Supra GTのフロントフェンダー前方は、昨年同様に張り出したデザインを継続している。シーズン中のアップデートは認められなくなるが、デビューイヤーとなった昨季はエアロのアップデートにリソースを集中していた。今季はセッティングを進化させる1年と捉えているのだろう。
ボディは2022年規定、フロアは2023年規定の“ハイブリッド”仕様となる2台。GT300規定車両の特権とも言えるシーズン中のアップデートはできないが、HACHI-ICHI GR Supra GTは第1戦岡山で荒れた展開を味方につけながら3位表彰台に登壇。HOPPY Schatz GR Supra GTにはセッティングによる進化が期待できる。残り5戦、2台の存在は侮れない。