2023年08月02日 11:00 弁護士ドットコム
既婚の男性客と関係をもってしまったが、慰謝料請求されてしまう可能性はあるのかーー。こんな悩みを抱えるキャバクラ勤務の女性から、枕営業の法的問題について、弁護士ドットコムに相談が寄せられた。
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相談者の女性は、アフターで男性客と一度だけ肉体関係を持ったが、既婚者と知ってからは、関係を解消したそうだ。女性はその後、水商売から足を洗った。
しかし、女性が再び水商売の世界に戻ってきたことで、また連絡を取るようになり、過去の関係が気になっているそうだ。
もし、男性客の妻に過去の関係がバレて慰謝料請求された場合、認められる可能性はあるのか。鈴木淳也弁護士に聞いた。
「不貞行為で慰謝料請求が認められるためには、不貞相手に故意または過失があることが必要となります。
ここでいう故意とは、肉体関係を持った相手が既婚者であると知っていたことで、過失とは相手が既婚者であると認識すべきであるのに不注意によって認識していなかったことです」
今回のケースはどうだろうか。
「相談者が男性客を既婚者であると認識したのは肉体関係をもった後ですので、不貞行為時に故意がなかったといえます。詳細な事情はわかりませんが、既婚者と認識し得ない状況だったのであれば、過失も否定されますので慰謝料請求は認められません」
また、別の考え方もあるという。
「仮に過失が認められる場合であっても、今回は、相手が顧客という立場であって、いわゆる枕営業という特殊性があります。
過去の裁判例では、ホステスが男性顧客と肉体関係を持っていたことで男性顧客の妻から慰謝料請求されたという事案で、『ホステスが男性顧客と性交渉を継続してもそれが枕営業であると認められる場合には売春婦の場合と同様に、顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず、何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないからそのことを知った妻が精神的苦痛を受けたとしても、当該妻に対する関係で、不法行為を構成するものではない』としたうえで、実際に当該事案が典型的な『枕営業』に該当すると認定して、慰謝料請求を否定したものがあります。
ただ、これはあくまで地方裁判所の一つの裁判例に過ぎません。その後、似たような事案において、仮に不貞行為の動機が枕営業であったとしても不法行為が成立すると判断したものもあります。基本的には、慰謝料請求が認められる可能性が高いと考えた方がいいでしょう」
【取材協力弁護士】
鈴木 淳也(すずき・じゅんや)弁護士
第一東京弁護士会所属。大学時代は理学部に所属し、地球温暖化システムについての研究をしていた。しかし、多くの人と触れ合い、広く社会の役に立てる仕事に就きたいと考え、決まっていた就職を辞退し、司法試験を目指すことに。気象予報士の資格を持つ理系弁護士として、民事・刑事を問わず困っている人に寄り添う弁護活動を行う傍ら、お天気情報をブログで発信している。
事務所名:鈴木淳也総合法律事務所
事務所URL:https://law-sj.com/