普通の会社は暴力団や総会屋など、反社会的勢力とは極力関わらないようにしているものだが、怪しい人物が勝手に近づいてくることもある。東京都の30代前半の男性はかつて、職場に勝手に冊子を送りつけて金銭を要求する人物に遭遇したことがある。
当時、男性が所長を務めていた営業所に、毎月「〇〇展望」という小冊子が届けられていた。発注した覚えも記録もなく、封筒には連絡先の記載もなかったため、そのままにしておいたようだ。
半年が経過したころ、「強面のオールバックで纏めた髪型で派手なスーツ姿の男性」がアポ無しで営業所を訪れ、「ここの所長さん、いるかい?」と言いながら大声で入ってきた。
「あのペラペラ小冊子一冊が、おそらく2万円だと言うのでしょう」
「いろいろガナリ立てるのですが、まとめると『◯◯展望』の購読料の集金に来た、ついては現金で12万円払えというのです。半年で12万円ですから、あのペラペラ小冊子一冊が、おそらく2万円だと言うのでしょう」
突然やってきて、契約した覚えのない商品について代金を支払えという。投稿者の男性は「発注した記録も記憶もない」と伝えると、
「そのヤクザ風の男性は更に声を荒げて『この名刺は、オタクのと違うのか!名刺受け取ってこっちは受注しとるんじゃ!』と自分の名刺を掌で机の上を叩きながら見せて来ました」
と脅された。確かに自分の名刺ではあったが、
「営業所長ですから、部下の帯同でお相手さんに名刺を渡す機会なんかゴマンとあります。当然、中にはどこかへ捨て置く、放置したままという方もおられたと思いました」
と勝手に拾われ、悪用されたのではないかと推測する。
「その名刺一枚で、難癖つけて12万円も請求されたのですからたまったモノではありません。そのヤクザ風男性は、『おまえ、今まで受け取っておきながら注文した覚えは無いだの、金は払えないだのと、都合良すぎんか、おっ?だったら今まで受け取って来たウチの機関誌をそっくり返せやー!』と怒鳴って来たのです」
【後編に続く】
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