「中高年になっても恋愛をしたいと望む女性は増えています」そう語るのは、結婚相談所を主宰する鎌田れいさん。恋愛ブランク長めだからこその失敗やトラブルとは? 趣味のサークルが、中高年の恋愛の場になっているってホント? 「最後の恋」を求めるシニアの悲喜こもごも……。
60代以上の会員は現在12万人超え
「気軽に友人などに会えなくなったコロナ禍をきっかけに、孤独感や将来への不安からパートナーを求める50~60代の相談が増えました」
そう話すのは、週刊女性のウェブ版「週刊女性PRIME」で婚活のリアルを描いたコラム「仲人白書」を連載する仲人の鎌田れいさん。
お見合いだけでなく、シニア層をターゲットにした婚活パーティーやマッチングアプリも登場しており、出会いを求めて利用している初婚、再婚のシニアが増えていると話す。国内最大級のマッチングアプリ「ペアーズ」では、60代以上の会員は現在12万人超えだ。
「今、マッチングアプリの利用者数は結婚相談所の登録者数に比べてひとケタ多いといわれますが、それはシニア層も同じ。女性は登録料が無料のものも多く、出会いの場として利用する際のハードルが低いのがメリットだと思います」(鎌田さん)
しかし、誰もが利用しやすい反面、リスクもあると鎌田さん。「マッチングした男性と身体の関係を持った後に、既婚者だと判明した」、「相手は生命保険会社の営業。高い保険を契約させられ、その後は音沙汰なし」といったトラブルを耳にすることも少なくないと注意を促す。
「マッチングアプリで知り合った女性から言葉巧みに100万円を振り込まされ、その後連絡が取れなくなったという59歳の男性もいました。年齢を重ね、これからの人生を支え合える相手を探している世代にとっては、お金以上にダメージが大きいと思います」(鎌田さん)
一方、中高年ならではの思わぬ“恋愛の落とし穴”も。
例えば、男性におもてなしされたい“バブル女子”が多いのもこの年代。62歳の女性とマッチングした61歳の男性は、最初のデートから食事はすべて女性が指定した“会席タイプ”の店へ。デート中の支払いは男性が行い、2回のデートで10万円ほどの支出を負うことになったが、女性は一切財布を開くそぶりを見せなかったという。
また、50代前半の女性とデートをした50代後半の男性は、食事を「ファミレスでいい?」と聞いただけで気まずい空気が流れ、デートが終了となった。
「女性は“私って、すごくお金がかかる女だから”と捨てゼリフを放って帰ったそうです! 今の20~30代は割り勘が当たり前で、デートでファストフードに行くことも厭わないのに対し、男性が奢るのが当たり前と思っている50~60代の女性は少なくありません。バブル期だった若いころの恋愛感覚が抜けないのだと思います」(鎌田さん)
シニア層には“恋愛に夢見る乙女”も多いと指摘する鎌田さん。57歳の女性は、マッチングした同年代男性の「指毛が長いからいや」、別の55歳の女性は「手が小さい。長い指のセクシー男性じゃなきゃ」という理由で交際を終了したというから、年齢と思考とのギャップに驚く。
現代の若者より理想の男性を求める気持ちが強い
「年収800万円台で59歳の男性を“(高収入で年下だけど)見た目が老けているから無理!”とNGを出した62歳の女性もいました。現代の若者よりも“白馬の王子様”のような理想の男性を求める気持ちが強い人も少なくないですね」(鎌田さん)
お見合いの席に介護施設のパンフレットを持ってきて女性をドン引きさせた60代の男性も。介護が現実に迫っている世代とはいえ、恋愛への幻想を捨てきれないのが本音だ。
また、出会いの場は恋愛を目的とした婚活市場だけではない。ワインや料理教室、株や投資のセミナーなど、趣味や学びの場でもシニアの恋の炎は燃え上がっている。
「あまりにお盛んでびっくりしました!」
と興奮ぎみに教えてくれたのは、中高年の性と愛をテーマにYouTubeでも発信する編集者の原田純さん。趣味で入会した山岳会で、会員同士の恋愛が活発だったことに驚いたと話す。
参加者は40代後半から60代の既婚者が多かったが、夫婦で入会している人は少なく、会員同士の不倫カップルも。活動日ではない日に「なぜあの2人が一緒に!?」という現場を目撃したのも1度や2度ではなく、原田さん自身も“お誘い”を経験した。
「山岳会の打ち上げ飲み会の後、タクシーで帰ろうとしたら、急に60代半ばの会員の男性が同乗してきて。行き先を尋ねたら“原田さん家に”って。びっくり仰天しましたよ! もちろん、丁重に断って降りていただきましたが、慣れている感じがしたので常套手段なのかも」(原田さん)
山を登るという体育会系の集まりだから、エストロゲン(女性ホルモン)やテストステロン(男性ホルモン)の活発な人が多いことも恋愛が盛んになる理由かも、と冗談交じりに笑う原田さん。サークル内では、頼りがいがある筋肉質の男性と女性らしい身体つきの女性がモテたと話す。
「恋愛の“ノリ”は大学のサークルと変わらないですよ。むしろ、恋愛に対して守りに入りがちな今の若い人より、50~60代のほうが肉食系かもしれません!」(原田さん)
身体は年齢とともに老化しても、「気持ちは20~30代に負けていない中高年は多い」というのは鎌田さんも同意見。30万円ほどかけて膣のレーザー治療を行い、膣のアンチエイジングに励んでいる50代の女性や精力剤を飲みながら、夜も“現役”を続行している70代の男性もいると教えてくれた。
表立ったトラブルや大失恋は少ない
逆に、若いころの恋愛と違うのは“長く続けることを前提にしていないところ”と、原田さん。
「お互いに恐る恐る近づいて、いつ終わるかわからないけど、一緒にいることが楽しい間は一緒にいようというスタンスの人が多いと感じます。大恋愛で始まっても、一生その関係が変わらず連れ添えるなんて、夢みたいな話だとわかりきっている年代ですから(笑)。そういう意味では、若いころのように表立ったトラブルや大失恋は少ないかもしれません」(原田さん)
人生の酸いも甘いも経験してきた年代だからこそ、恋愛を楽しんでほしいと原田さんも鎌田さんも背中を押す。
「やっぱりいくつになっても心をほぐして、楽しい気分にしてくれるのが恋愛。人生を豊かにするトキメキは大事だなと思いますね」(原田さん)
「ひと昔前は“この年で恋愛・再婚は恥ずかしい”という引け目がありましたが、今は違う。60歳でも70歳でもトライしてほしいです」(鎌田さん)
取材・文/河端直子
原田 純さん 編集者。径(こみち)書房代表取締役。1954年生まれ。膣ケアを提唱するなど、女性の性意識に変革を起こす。著書に自身の恋愛・性体験を記した『人生最高のセックスは60歳からやってくる』(径書房)ほか。
鎌田れいさん 婚活ライター、仲人。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、メディアで婚活事情の発信も行う。近著に『100日で結婚』(星海社)。