人手不足からセルフレジを導入する店舗が増えている。セルフになれば客からの理不尽なクレームが減るかと思いきや、そうとも限らないようだ。小売店で働いていたある女性は、今でも忘れられないクレーマーがいるという。
「数年前、50代後半くらいと赤ちゃんを抱っこした20代後半くらいの母娘にいわれのないクレームをつけられたことがあります」
発端は、その母娘がセルフレジで会計した際にレシートが詰まってしまった事だという。キャリコネニュースは女性に取材を申し込み、当時の状況について詳しく聞いた。
「いきなり年配母親らしき人が『すいませーーーん』とレジで叫びました」
その日、フロアにはすぐに駆けつけられるスタッフがいない状態だった。 すると
「いきなり年配母親らしき人が『すいませーーーん』とセルフレジで叫びました。私が一番レジの近くで品出しをしていたので駆けつけるまで叫び声は続いてました」
女性が確認すると、レジのレシートが詰まっていた。女性は「プリンターのエラーで再起動するまでに時間がかかります」といった旨を伝えたが、相手のクレームはヒートアップしていった。
「『いつまで待たせるんだ!レジは何分後に直るんだ?』『こっちは赤ん坊を抱いてるんだぞ!』と赤ちゃんを抱っこした娘さんのほうまで怒りだしました」
とにかく激怒していた二人に対し、当時の思いをこう振り返る。
「お怒りの一次原因は、レジのレシートが詰まったときに近くにすぐ対応できるスタッフがいなかったことだと思います。ですが、その時にレジ担当だったスタッフは他のお客様の対応をしていました」
「私も買い物に行くときには客の立場になりますが、そんなときは他の客の対応のキリがついたところでスタッフに声をかえてなんとかしてもらうものではないでしょうか? いきなり叫んで人を呼ぶなんて、普通の感覚ではしませんよね」
プリンターの再起動はほんの3分ほどで終わったが、「その間ずーっと怒りっぱなし」だったという。この時間、女性は生きた心地がしなかっただろう。「なんとかレシートを渡してお帰りいただいた」というが、これで一件落着とはならなかった。
「店長は事なかれ主義でお客様と本部の顔色ばかりうかがう人」
その母娘は怒りが収まらなかったようで、なんと翌日長文のメールを本部に送ってきた。女性は店長から事情聴取されることに。
「私も内容を読ませてもらいましたが、『昨日の話だけでは細かいことまで伝わっていないので、きちんとメールでお伝えします』という文章から始まっていました」
「昨日と同じ話を言葉を変えてクドクドと書き連ねている感じで、そのうえ『赤ん坊を抱っこしているのに長時間待たされた』とか、『床にしゃがんでいたスタッフが、はいはいとめんどくさそうにやって来た』とか、言いがかりばかり」
しかも、「当時の店長は事なかれ主義でお客様と本部の顔色ばかりうかがう人で、こちらの言うことは全然聞き入れてくれず本当に嫌な思いをしました」と苛立ちを隠せない。
「最初からスタッフが悪いと決めつけたような口調でした。対応時にどんな言い方をしたかも細かく聞かれて、その都度揚げ足取りのようなことを言われました」
落ち度はないのに店長から「どうして床にしゃがんでいたのですか?」と責めるように聞かれ、女性は「棚の最下段の品出ししてたんですがダメですか?」と思わず聞き返してしまったという。
「事情聴取される前にベテランスタッフさんから、やってないことはキッパリ言わないとダメよとアドバイスをもらっていたので、言い返せました」
店長が守ってくれないから、従業員どうしで助け合うしかないのだろう。
「赤ん坊を抱っこしていたと言いますが、そもそも建物の中の店舗で雪の降る中で待たせていたわけではないし、赤ちゃんは熟睡してました。こんな母親と祖母に育てられる赤ちゃんが気の毒でなりませんでした」
「犯罪スレスレの出来事は日常茶飯事です」
問題の母娘は来店しなくなったというが、この店は、「客層のあまり良くない地域なので犯罪スレスレの出来事は日常茶飯事でした」とも振り返る。一体どんなことが起きるというのだろうか。
「万引きはしょっちゅうですし、スタッフへの付きまといやパワハラのような言動、度を越したサービスの要求などもありました。他の店舗から安い商品を大量に取り寄せさせて、駐車場の自家用車まで運ぶよう要求してくる人もいます」
とこれだけでも大変だが、中には「性犯罪未遂の言動」を受ける被害もあるという。
「若い女性スタッフにつきまとい、LINE交換をしてほしいと仄めかしたり、シフトを聞き出そうとしたり。電話をかけてきて商品のことを聞くふりをして、女性スタッフに卑猥な言葉をかけるとかもありました」
「一発やらせろと言われて泣き出したアルバイトの女子学生スタッフもいました。様子を見ていた男性スタッフが走って行きましたが、駆けつけたときには退店していて確保はなりませんでした」
こんな過酷な状況では、安心して働くこともできないだろう。女性はカスタマーハラスメントの問題について、
「お客様は神様です、はサービスを提供する側の言葉であってサービスを受ける側が使うべきではないと思います。1日も早く、この国のサービスを受ける側の人間の認識が“普通”になりますようにと願っています」
と切実な思いを語ってくれた。
※キャリコネニュースでは「あなたが目撃した衝撃クレーマー」をテーマにアンケートを行っています。回答はこちらから。https://questant.jp/q/BNPYRIJ9