ジャガーは7月26日、イギリスの高級車ブランドが誇るスポーツカー『F-TYPE(Fタイプ)』のエンジンサウンドを後世に伝えるべくこれを録音し、イギリスの国立図書館である大英図書館に保存すると発表した。
将来の全モデルラインアップ完全EV化に向けて準備を進めているイギリスのメーカーは、この移行に先立ち、現在彼らが持つ財産のひとつである大排気量ガソリンエンジンのサウンドを録音した。これをロンドンの大英図書館に保存することにより、無音で走るジャガーのクルマが当たり前となった時代においても、かつて存在した“ジャガーの咆哮”を何世代にもわたって鑑賞できるようになる。
録音作業は、ジャガーが量産車の音質を開発、テストするために使用しているゲイドン・エンジニアリング・センターの半無響室で行われた。
使用された車両は、ジャガーのスポーツカー誕生75年周年を祝うと同時に最後の内燃機関モデルとして登場した『Fタイプ R75』だ。このクルマには最大出力575ps、最大トルク700Nmを発揮する5.0リットルV型8気筒スーパーチャージドガソリンエンジンが搭載されている。
Fタイプの“最終モデル”が奏でる特徴的なV8サウンドは、クルマの内側と外側の両方から鮮明に録音された。30秒と47秒の2種類が用意されたサウンドデータは、いずれも2023年秋から大英図書館のアーカイブに格納される予定だ。なお車外で録音されたサウンドは大英図書館のウェブサイトで鑑賞可能なほか、ジャガー公式サイト(https://media.jaguar.com/news/2023/07/it-wont-go-quietly-unmistakeable-jaguar-f-type-v8-sound-preserved-british-library)でも聴くことができる。
ジャガーのシニア・サウンド・エンジニアであるチャールズ・リチャードソンはFタイプのエンジンサウンドが大英図書館に収蔵されることを光栄に感じている。
「『Fタイプ』のV型8気筒スーパーチャージドガソリンエンジンは、パワートレイン全体、特に吸排気システムに施した綿密なチューニングにより、独自のサウンドを奏でる」とリチャードソン。
「このモデルを導入するまでに、このチューニングを85回以上繰り返し、その後も継続的な開発を行ってきたんだ」
「私たちはその集大成である『Fタイプ R75』が生み出すサウンドを、今後何世代にもわたって記録したいと考えた。大英図書館のサウンド・アーカイブに保存することで、それが実現する。これは私たちにとって大変光栄なことだ」
また、大英図書館の野生動物および環境サウンドのキュレーターであるシェリル・ティップ氏も、今後失われるジャガーのエンジンサウンドを保存することができることを喜んでいる。
「世界中のジャガー愛好家のために、『Fタイプ』のエンジンサウンドを保存できることを嬉しく思う」と同氏。
「このエンジンの生産が終了するときに、このユニークな音は今日では聞くことができなくなった他の音源とともに大英図書館のアーカイブに保管されることになる」