2023年07月27日 16:31 弁護士ドットコム
うつ病を発症して「公務災害」の認定を受けた元国家公務員総合職の女性(28)が7月27日、安全配慮義務違反があったとして、国家賠償法などに基づき、国を相手取り約1586万円の損害賠償などを求める訴訟を東京地裁に起こした。
【関連記事:コンビニの日本人店員が「外国人の名札」を着けたら…客の態度に劇的変化】
原告側によると、女性は大学卒業後の2017年4月、国家公務員総合職として環境省に採用された。翌2018年6月、福島地方環境事務所に配置換えとなり、恒常的に長時間労働を余儀なくされるようになったという。
2019年2月初めには、福島県内で、中間貯蔵施設整備事業開始後初となる作業員の死亡事故が発生したことから、緊急度・重要度の高い業務に従事することになった。同月、うつ病を発症し、6月まで自宅療養。途中復職と再休職を経て、2020年2月に退職した。
女性は2019年11月に公務災害を申し立て、「発症前に長時間の時間外勤務を行っており、死亡事故発生以降、通常時と比べて緊急度・重要度の非常に高い業務及び作業が発生し、共同の精神的、肉体的負荷を受けたと認められる」などとして、2021年6月に認定された。
原告側によると、認定された発症前6カ月間の時間外労働時間は、多い月で135時間、発症1カ月前は102時間を超えたという。2022年6月、国を相手方として損害賠償を求める民事調停を申し立てたが、国がこれに応じず調停は不成立となり、今回の国賠提訴に至った。
この日の提訴後、原告女性と弁護団が、東京・霞が関の厚生労働省で記者会見を開いて、次のように述べた。
「環境省にはとてもお世話になり、提訴という手段を選ばざるを得なかったことを非常に残念に思います。提訴によって職員の仕事を増やすことになり本意ではないのですが、度重なる不誠実な対応により、この状態を解決するには提訴に踏み切るしかないと提訴に至りました。
官僚の改善は着実に進んでいると思います。しかし、志があったのに辞めざるを得ない若手は多くいます。環境省の仕事は大きなやりがいもあり、周りの方々にも恵まれ、何事にも代えられないものでした。
その仕事を辞めざるを得なかったこと自体がつらく、いまだにそれを超えて志望する仕事を見つけられていません。退職した現在も、通院、投薬は続いており、仕事ができないことが寂しくて、悲しくて、つらいです。
今回の提訴によって議論が生まれることで、働く人を大切にして、一緒に働いていくという意識の醸成があってほしいと思います。今まで涙を呑んできた先輩、同期、後輩の少しでも希望になればと思っています」