寝過ごして終電がなくなれば、タクシーを使う人もいるだろう。「八王子でタクシードライバー」をしている60代後半の男性(東京都/技能工・設備・交通・運輸/年収400万円)は、「寝過ごした可哀想なお客様」を乗せたことがある。(文:永本かおり)
高尾駅南口でタクシー待機していた時のこと。フラフラとサラリーマン風の40代ぐらいのお客が近づいて来て、こう尋ねた。
「運転手さん、ここどこ?」
「飲み代5000円だったのにそんなあ」
運転手の男性は「高尾山で有名な八王子の高尾駅ですよ…」と答えると、サラリーマン風のお客は、
「え!自分は間違いなく荻窪から東京行きに乗ったのになんで!」
と状況をつかめず驚いた様子。投稿には書かれていないが、中央線の東京行きに乗っていたのだろう。男性が、
「お客様、おそらく東京駅ですぐに折り返し高尾行きになりますから、その間爆睡されてたと思いますよ」
と教えたところ、状況を理解したお客は「一気に酔いが冷めたのか真っ青な顔」になったという。
男性が行き先を尋ねると、お客は「千葉の八千代市」だと言い、「いくらぐらいかかるんでしょう…」と続けた。男性は「高速で約2時間少し、3万円ぐらいかな」と答えると、お客は驚いた顔で、
「飲み代5000円だったのにそんなあ」
と、さらに青い顔になった。長距離である上に、深夜となれば高額になるだろうが、それでも帰宅に3万円の出費は高額だ。
その日は金曜日で、外泊すると奥さんに何言われるかわからないからと、お客は高額出費を覚悟した様子でVISAカ―ドを提示し、「住所言うからナビ入れてください」とタクシーに乗った。
男性は、車内でのお客の様子を
「しばらく走ってるとまたイビキかいて寝てたお客様を見て、長距離営業は嬉しいけど、むなしい気持ちになったのを覚えてます」
と振り返った。
到着すると「奥さんが玄関先に出てきてキツイ一言を…来月のおこづかいは5000円ね!」と言われていたようで、男性は、
「(お客には)見えないようにクスッと笑いながら、ハンドルを回し八王子へ戻った」
と締め括った。
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