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ロールス・ロイスのセレブなユーザーは電気自動車に前向き?

2023年07月26日 11:41  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
ロールス・ロイス初の電気自動車(EV)「スペクター」が先日、日本に初上陸を果たした。ロールス・ロイスといえばV型12気筒エンジンというイメージなのだが、電動化について既存のオーナーさんたちはどんな反応を示しているのだろうか。発表会で聞いてみた。


○お金で時間を買えるクルマ?



スペクターは前後2モーターで最高出力430kW/584PS、最大トルク900Nmを発生する2ドアクーペ。0-100km/h加速は4.5秒、最高速度は250km/hで、フル充電での航続距離は530km(WLTPモード)だ。1回の充電で走行できる距離以外は、スペック的に既存のロールス・ロイスに引けを取らないスペクターではあるのだが、そもそも同ブランドのファンはEVを歓迎しているのか。



スペクターの発表会に登壇したロールス・ロイス・モーター・カーズ アジア太平洋地域ディレクターのアイリーン・ニッケイン氏は、このクルマを「ロールス・ロイス・モーターカーズ史上、最も待ち望まれているモデル」と紹介した。とすると、どうやらユーザーからは好反応を得られているらしい。


同社のプロダクトスペシャリスト・エレクトリフィケーションストラテジー フレッド・ウィットウェル氏によれば、「ロールス・ロイスのラグジュアリーなクライアントは『マネー・リッチ、タイム・プア』という人たちです。『お金で時間が買えるのなら買いたい』と思っている方々には、わざわざガソリンスタンドに行かなくても、家庭で充電するだけでクルマを使っていただけるというメリットを提供できます」とする。EVは忙しい毎日を送るロールス・ロイスオーナーのライフスタイルに適したクルマということなのだろう。



では、V12の乗り味を気に入っていた人たちを満足させることはできるのか。「既存のV12モデルの特徴は『静かさ』と『瞬間的にトルクが出せること』でした。スペクターは電気モーターでそれらの特徴を完全に実現できています」というのがウィットウェル氏の回答だ。性能面を担保するために、スペクターの開発にあたっては極限の温度環境(マイナス40度からプラス50度まで)や北極圏の氷雪、砂漠、高山の山道、世界各国の巨大都市に至るさまざまなコンディションにおいて、合計で400年以上の使用を想定した250万kmに及ぶテストを実施したとのこと。ブランド120年の歴史の中で、最も過酷な開発プロセスを乗り越えてきたのがスペクターというEVなのだ。

「ロールス・ロイス級のクルマを買う人たちはEVについて、ある程度はナーバスなところがありましたが、『ロールス・ロイスであれば間違いなく信用できる』ということでお買い求めいただいている部分もあります」とウィットウェル氏。ロールス・ロイスでは昨年、世界で計6,021台のクルマを販売したそうだが、その数字とスペクターの受注台数(非公表)を突き合わせてみると、このクルマが「最も待ち望まれた1台」であることがわかるのだという。



最初のEVを2ドアクーペとした戦略については、「2ドアクーペのエモーショナルなスタイルは何ものにも変えられない大きな要素であり、電動化にフィットしたものと考えています。ガソリンエンジンのファントムが出て、SUVのカリナンが出たあとだったので、ローンチのタイミングとして2ドアクーペは最適でした」(ウィットウェル氏)とのこと。


○1台で全てをまかなう必要なし?



筆者が考えるに、ロールス・ロイスのオーナーは、普段はショーファーカー「ファントム」の後席で移動しながら仕事をこなし、休日はSUVの「カリナン」で別荘に向かい、その別荘からは環境にやさしいEVのスペクターで近隣のゴルフ場に向かう、といったセレブらしいクルマの使い方をしているのではなかろうか。長距離を走るのであれば、EVではなく別のロールス・ロイスか他メーカーのクルマにするという選択の自由を持っているはずで、たった1台のEVに全てを求めているわけではないのだ。



ガレージにはテスラやポルシェ「タイカン」など別のEVがあるかも知れず、それなら当然、高性能なウォールボックス(家庭用の充電器)をすでに持ってもいるだろう。そうしたオーナーに今、ぴたりとハマるのが2ドアクーペのスペクターなのだ。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)