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夏祭りや花火大会、子どもの夜間外出は何時までOK? 保護者同伴でも特例はナシ

2023年07月26日 10:11  弁護士ドットコム

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全国の学校で夏休みが始まりました。お祭りや花火大会など夜間まで続くイベントも多い夏休み期間。最近では昼間の暑さを避けるため、夕方から始まる行事も増えています。保護者としては「どこまで自由を許してもよいのか」が気がかりになるものです。


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とくに、子どもだけの外出は、警察に補導されてしまったり、無用なトラブルに巻き込まれたりするので「何時までOK?」という基準を改めて知っておいたほうがよいでしょう。(ライター/元警察官・鷹橋公宣)



●子どもだけの外出が許されるのは何時まで?

18歳未満の未成年の子どもは「青少年」にあたります。各都道府県が定めている「青少年健全育成条例」には青少年の深夜外出を制限する定めがあり、この定めを基準に子どもの外出OKの時間帯を判断するのが基本です。



ただし、青少年健全育成条例が考える「深夜」の時間帯には各都道府県によって差があります。たとえば、東京都をはじめ多くの地域では午後11時から翌日の午前4時までの間を深夜と定義していますが、群馬県では午後10時から午前4時まで、兵庫県では午後11時から午前5時までとされており、全国統一ではありません。



地域によって条例が定める時間帯が異なるので、お住まいの地域の青少年健全育成条例を確認しておきましょう。



●子どもだけの外出は時間制限アリ、では保護者同伴なら?

夏休み期間中は、保護者の休暇を利用して家族連れで思い切り遊ぶ機会も多くなります。青少年健全育成条例が規制しているのは「保護者の委託や同意を得ていない青少年の連れまわしなど」であり、保護者が同伴していれば規制の対象外です。



ただし、青少年の保護者には、正当な理由や特別な事情がない限り、青少年を深夜に外出させないよう努力する義務が課せられています。規制対象外ですが、条例は「保護者同伴なら何時でもOK」といっているわけではないことを覚えておいてください。



ここでいう「正当な理由」や「特別な事情」に具体的な基準はありませんが、青少年健全育成条例がどんな目的をもっているのかを考えればどのようなケースを指すのかがわかります。



青少年健全育成条例は、青少年を有害な行為から守ることで健全育成を図るという目的をもった条例です。



たとえば遠方への帰省で移動が深夜帯にかかった、天体観測などで深夜帯に外出したといったケースは、青少年の健全育成にとって有害とはいえないでしょう。一方で、深夜の繁華街を連れまわしていたなどの状況があると、たとえ保護者同伴でも条例の目的に反しています。



このようなケースでは、パトロール中の警察官から職務質問を受けて詳しい事情の説明を求められるかもしれません。



もちろん、親子であることを説明すれば取り締まりを受けることにはなりませんが、疑いの目を向けられるのは気分が悪い話だし、なにより子どもの健全育成にとって悪影響を与えるので、やむを得ない事情がない限り控えたほうがよいでしょう。



●子どもは何時までゲームセンターを利用できる?



ゲームセンターは「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(通称:風営法・風適法)」の規制を受ける施設です。



この法律では、ゲームセンターへの立ち入りを年齢で規制しており、18歳未満の子どもは午後10時以降の立ち入りが認められません。また、16歳未満の子どもの場合、午後6時以降は立ち入り禁止です



この規制に従うと、子どもだけでのゲームセンターの利用が許されるのは、中学生以下では午後6時まで、高校生でも午後10時までとなります。



ただし、2016年に風営法の一部が改正されたことを受けて全国的に施行条例が改正され、保護者同伴の場合に限って16歳未満でも午後6時以降の立ち入りが認められるようになりました。



たとえば、ショッピングモールや宿泊施設などに併設されているゲームセンターでは、買い物や食事のあとに「ちょっとみんなでゲームセンターに行ってみよう」といった流れになることもあるでしょう。



従来までのルールだと、たとえ保護者同伴でも16歳未満の午後6時以降の立ち入りは認められていませんでしたが、現在は多くの地域で保護者が同伴していれば午後10時までは入場OKとなっています。



なお、この規制緩和も全国統一ではありません。一部、保護者同伴でも16歳未満の立ち入りは午後8時までとする地域や、従来どおり保護者同伴でも16歳未満の午後6時以降の立ち入りを認めていない地域が存在します。



旅行先などではお住まいの地域と規制内容が異なることがあるので、とくに注意が必要です。




※風営法施行条例によるゲームセンターの立ち入り規制 ●宮城県・埼玉県・神奈川県・徳島県 →16歳未満は保護者同伴で午後8時まで ●福島県 →16歳未満は保護者同伴で午後8時まで、16歳以上18歳未満は保護者同伴で午後10時まで ●岩手県・茨城県・栃木県・鳥取県・沖縄県 →従来からの変更なし(16歳未満は保護者同伴でも午後6時まで) ●ほかの都道府県 →16歳未満は保護者同伴で午後10時まで




●花火大会などのイベントがあるときは特例として許される?

夏休みの期間中は、花火大会・夏祭り・盆踊りなど、夜間に開催されるイベントも多数あります。しかし「イベントだから」という理由で青少年健全育成条例の規制が緩和されるわけではないので、18歳未満の子どもは深夜にあたる時間帯のイベントには参加できません。



主催者側もこの点は十分に承知しているので、会場にいるとスタッフなどによる確認を受けて退場させられてしまう可能性があります。夜間に開催されるイベントでは、管轄の警察署内でも少年補導のための班が編成されるので、会場や付近にいれば補導されてしまう危険が高いでしょう。



また、大規模なイベント開催時は、交通機関の混雑などで予定どおりに帰宅できないこともあります。このような場合でも、やはり青少年健全育成条例の規制が特別に緩和されるわけではありません。



もっとも、交通機関の混雑など想定外の理由で帰宅が遅れたからといって「午後11時を過ぎているから即補導!」というわけではなく、帰宅するための行動を取っていれば注意だけで済まされるはずです。



例年の開催となっているイベントでは、あらかじめある程度の混雑状況が予想できるものです。子どもだけでイベントに参加する際は、安全に帰宅できるように、ご家庭で「混雑するから、このくらいの時間には会場を出たほうがいい」と指導してあげてください。



●条例で規制されるのは子どもでなく「周囲の大人」

子どもたちにとっては、せっかく待ち焦がれた夏休みなのに条例によって「自分たちの外出が許されている時間」を縛られているように感じてしまうかもしれませんが、そうではありません。



青少年健全育成条例によって規制を受けているのは、子どもではなく「周囲の大人」です。



青少年の保護者には深夜に青少年を外出させないよう努める義務があるし、正当な理由がなければ、誰であっても保護者の委託や同意を得ず深夜に青少年を連れまわす行為が禁止されています。



深夜でも営業しているお店の関係者は、深夜に客として訪れた青少年に帰宅を促すよう努めなければなりません。青少年健全育成条例は、深夜に外出している子どもを規制するのではなく、子どもの深夜外出を許していたり、黙認していたりする大人が規制を受けるのだと理解してください。



夏休み期間中はさまざまなイベントが開催され、気分が開放的になりがちですが、そういったときほどトラブルに巻き込まれやすくなります。



子どもたちは、警察から補導されたり、学校に知られたりすることばかりに不安を抱くものです。しかし、本当に怖いのは、人混みによる雑踏事故、ケンカなどの暴力事件、痴漢や連れまわしなどの性被害、略取・誘拐などに巻き込まれてしまうことだと、周囲の大人が教えてあげなくてはいけません。



充実した夏休みになるように、改めてご家庭で子どもの外出における時間や場所のルールを話し合ってください。