NTTインディカーシリーズ第12戦、アメリカ・アイオワ州のアイオワスピードウェイで行われたダブルヘッダーのレース2は、まるでレース1をリプレイしているかのようなジョゼフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が圧勝で2連勝を飾った。
チップ・ガナッシ・レーシングから参戦した佐藤琢磨は、レース1の9位を上回るべくレースに臨んだが、ウォールとの接触もあり25位に終わった。
琢磨はレース2に向けてまったく光明を見出せていないわけではなかった。
第1レースのデータを元にマシンへ変更を施した結果、朝のウォームアップ走行では2番手のタイムをマークして、これでようやく戦えるクルマになったと思うとコメントを残している。
しかし、琢磨の感じた淡い期待が裏切られたのは、レース開始のグリーンフラッグが振られた直後だった。
「スタートしてターン1を曲がったらすぐにおかしいとわかった」と言うほど、カーナンバー11のマシンは性格を変えてしまっていた。
「フロントはいいけどリヤがすごく不安定で、まったくアクセルを踏んでいけなかった」と言う琢磨は、13番手のスタートポジションから2周目に17番手、17周目に19番手、21周目には21番手まで陥落してしまった。
厳しい状態でなんとか走り続け、34周目にはラップダウンとなるも54周目に最初のピットイン。
しかしタイヤを交換し、フロントウイングの調整をしてもペースは戻らず、マシンセッティングが根本的に厳しい状態にあるのは明らかだった。
その後の第2スティント、第3スティントも厳しい状態は続くも、87周目の最初のイエローコーションでひとまずはラップバックし、同一周回に戻った。
しかし迎えた141周目、17番手で走行を続けていた琢磨だったが、不安定なマシンは我慢しきれずついに右リヤをウォールにヒットさせてしまった。
琢磨はすぐさまピットに戻り、クルーが足回りを修理したがコースに戻った時には10周近い遅れとなっている。
上位入賞の可能性は完全に消えたが、それでも完走してポイントを加算すべく、琢磨はレースを走り続けた。
トップ集団は、ニューガーデンが昨日の走りを彷彿とさせるスピードを見せていたが、ペンスキー勢とマクラーレン勢が争うなか、琢磨のチームメイトでポイントリーダーのアレックス・パロウが健闘。
ペンスキーのニューガーデン、ウィル・パワーが1-2フィニッシュを決めるなか、最後のイエローコーションから上手くリスタートを決め、3位表彰台を獲得して見せた。
レース1、レース2とペンスキー勢が席巻した一方で、チップ・ガナッシのパロウが辛うじて一矢を報いた格好だ。
琢磨にとっては好みのコースで、相性の良いアイオワではなんとか上位に食い込んでおきたかったが、レース1の9位、レース2は25位と悔しい週末となってしまった。
レースが終わりピットボックスで走行データを確認すると、琢磨のマシンは他の3台と明らかに異なる不安定なデータを示していたと言う。
朝のウォームアップ走行ではタイムも感触も良かっただけに、琢磨自身も予想外の展開に失望を隠せなかった。
また、このレースには琢磨とチップガナッシのテクニカルパートナーでもあるデロイトの招きもあり、日本から塚越広大(Astemo NSX-GT)がアイオワに視察に訪れていた。
塚越がドライブするリアルレーシングのAstemo NSX-GTもデロイトがテクニカルパートナーでもある。
自らもドライバーでもあり、スーパーフォーミュラではThreeBond Racingのドライビングアドバイザーも務めている彼にとって、今回のアイオワのレースはどのように映ったのだろうか?
「今回はちょうど日程的にも都合が良くデロイトさんにも声をかけていただいたので、アイオワに来ました」と塚越。
「違うカテゴリーではありますけど、何か参考になることもあるでしょうし、ショートオーバルと言う日本にはないかたちで、戦略とかも新鮮でした」
「ピットでは無線も聴かせてもらって、自分のやっているレースとの違いとかも参考になりました。ただ、250周は長いレースでしたね(笑)」
「今回はペンスキー勢の速さが目立っていましたが、インディカーはチームごとにダンパーエンジニアがいたり、チーム・ペンスキーはダンパーの開発を自分たちでやっているらしいので、彼らの速さはそういったところにあるのかもしれませんね」と、作戦や技術面などで日本のレースとは違った景色を感じていたようだ。
日本とアメリカではモータースポーツの歴史も土壌も違うが、インディカーに参戦している日本人ドライバーは佐藤琢磨だけになって久しい。琢磨に次ぐドライバーが、そろそろアメリカにいてもいい頃ではないだろうか。