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ジャニーズ事務所は「飴のまき方がうまい」松谷創一郎さんが語る芸能界の「義理と人情」

2023年07月22日 08:01  弁護士ドットコム

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ジャニーズ事務所の創業者、故ジャニー喜多川氏(享年87)による性加害問題をめぐり、国連の人権理事会の専門家が7月下旬に来日して、元所属タレントからヒアリングをおこなう予定だと報じられている。


【関連記事:【3本目】ジャニーズ事務所は「曖昧にしたまま逃げ切れるわけがない」、今後のシナリオは?】



国際社会からも厳しい目が向けられる中、すでに被害を告白している元ジャニーズJr.の二本樹顕理さんが7月12日、弁護士ドットコムニュースのYouTubeライブに出演した。



芸能界とメディアの関係を長年取材するジャーナリスト、松谷創一郎さんとともに、これまでの性加害報道を振り返りながら、今後の被害者救済のあり方について議論を交わした。





約1時間のライブ放送を3本の記事に分けて、一部書き起こしで紹介する。2本目にあたるこの記事では、ジャニー喜多川氏の性加害をなぜこれまでメディアで大きく扱われてこなかったのか。ジャニーズ事務所の「メディアコントロール手法」について、松谷さんが語っている。





●告発ではなく「暴露」と捉えられた

司会:ジャニー喜多川氏の性加害をめぐる報道を振り返りたいと思います。性加害をめぐる最初の報道は1965年にありました。1980年代にはジャニー氏からの性加害を告白する報道が相次ぎ、2000年代には裁判でセクハラ行為についての記事の真実相当性が認められました。





このように、1960年代からジャニー氏の性加害をめぐる報道がありましたが、なぜここまで大きな問題とならず、メディアも社会も見過ごしてきてしまったのでしょうか。松谷さんは、どのような背景があるとお考えになりますか。



松谷創一郎さん(以下、松谷):いろいろな理由があると思うんです。一番大きいのは、やはりジャニーズ事務所という存在が、非常に大きな権力を持っていた(こと)。特にテレビはそうですね。



報道においても、たとえば北公次さんとかあるいは元タレントの方の告白本は、告発ではなくて暴露というかたちの印象が強かったんですね。



おそらく当事者としても、嫌なことだったけれども、これが性的な被害だというふうに受け入れたくなかったみたいなところもあると思うんです。だから、どっちかというと、告発ではなくて暴露という形になった。



また、2004年に『文春』の裁判で行為自体は事実であろうということが認められているんですけれども、『文春』の裁判というのは、そもそも原告はジャニーズ事務所とジャニー喜多川さんなんですよ。ですから、被害者がジャニーズ事務所を訴えたというかたちは、今に至るまで一度も起きていない。



報道においては、裁判が起きるとか法的な問題が生じるというのは、これは不倫とかでもそうなんですけども、一つ大きな基準となってくるんですね。これが今もまだ起きていないので、やはり扱いにくかった側面もあると思うんです。そういったさまざまな状況があって、しかもジャニーズ事務所が強いからスルーをしてきた。



司会:どうしてテレビがそこまでジャニーズ事務所に忖度をしてしまうんでしょうか。



松谷:これはシンプルにジャニーズのコンテンツは数字が取れるからですね。



司会:それは俳優として出る番組もそうだし、アーティストとして出る音楽番組もそう?



松谷:そうですね。



司会:ビジネスパートナーになっているということですね。



松谷:ジャニーズのファンの方々は、熱心で母数が広いです。それだけで視聴率だと何パーセントという基礎票が期待できるというわけです。それだけで(番組が)外れなくなりますよね。だからそれプラスの上積みをするんだったら、もっと番組で工夫をしてもいいけど、やはりその基礎票が大事で、それは企画を通しやすくなるんですよ。



●被害告発後、メリー喜多川氏から「お前は頭がおかしくなってしまった」

司会:1980年代には元タレントの北公次さんの暴露本で告発がおこなわれた。それでもテレビも他の雑誌も報じないということで、被害者の方からすると声を上げても黙殺されてしまうんだという諦めにつながった背景もあるのかなと思うんですが、その点、二本樹さんはどうお考えになりますか。



二本樹顕理さん(以下、二本樹):当時から暴露本とか出てまして、私自身も在籍中に読んだのか退所してから読んだのかちょっと覚えてないんですけど、そういうものが出てもまったくニュースにも出なかった。そういう様子を見ていて、やはりこれは何か訴えても無駄なんだなという絶望感みたいなのも味わっておりました。



実際、今、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」を結成したんですけども、そこに在籍してる方の中には、当時、事務所に対して声を上げたとおっしゃってる方もいるんですよ。



でも、そのときにメリー喜多川氏から「お前は頭がおかしくなってしまった」とか、そういうことを言われて。「こっちはもう裁判でも何でも訴えてもらっても構わない」と。



そういったことを言っていて、それで「何を言っても取り合ってもらえないんだなというような印象を受けた」とおっしゃっていました。



松谷:それは、文春裁判の前ですかね。



二本樹:前ですね。40年ほど前に在籍されてたとおっしゃっている方なので。



司会:二本樹さんが入所したのは1996年で、その当時も報道は一応はされていた。雑誌報道とか情報としてはあったわけですけれど、二本樹さんご自身はそういったお話、性加害についての話は、入所前は知っていたんですか。



二本樹:記憶にあるのが、小学校時代に同級生の女の子でジャニーズが好きな子がいて、当時ホモとかそういうワードを使っていたと思うんですけれども、「あそこの事務所はホモなんだって」という話は聞いて、当時の私はホモとか聞いても、男性が男性を好きなんだなぐらいしか思っていなかったので、そういった意味では深い理解がなかったと思いますね。



司会:恋愛感情が芽生えるけども、性行動に移るとは思わなかったということですよね。



●「タレントを引き上げる」手法

司会:このジャニー喜多川氏の性加害問題については、積極的に報じてこなかった報道機関、特にテレビ局に批判も多く寄せられてきました。マスコミはなぜこんなにジャニー氏の性加害報道に消極的だと松谷さんはお考えになりますか。



松谷:今回ですよね。



司会:はい。これまでも含めてですね。



松谷:先ほどもお話しした通り、数字を取れるコンテンツであるということと、まだ法的には何も起きてないんですね。



報じるにおいてもきっかけが必要で、そこの基準は、まったくダメだとも思わないんですよ。何らかの基準があって、ここから先を報じる、報じないというのがそれぞれあっていいと思うんですけど、そういう点でいうと、法的な問題や裁判が起きてないというのは報じにくいところはあると思います。



司会:ビジネスパートナーとしてテレビ局が報じづらい状況は理解できるといいますか、恐らくそうなんだろうなと思うところなんですが、一方で、いわゆる報道機関、新聞ですよね。それについてはどうしてこんなにここまで報じてこなかった?



松谷:新聞記者の方々はそれぞれ個人個人はですね、別に報じなかった理由はないというのはありますけれども、もちろん最初の暴露本が出ているところの出版社が、ある種、暴露本、本当に暴露系のネタばかり扱うような出版社であったのも間違いないですね。ブラックジャーナリズムという感じの話ですから。



あとは週刊誌の報道もそうだけども、他がやってるから後追いするということをなかなかやりたがらないという傾向があるんですよ。



司会:いろいろなそういった自主規制、メディアもさまざまな事情があって報じてこなかったということですけれど、具体的に、ジャニーズ事務所がどういうふうにメディアをコントロールしてきたんでしょうか。



松谷:まあ、よく言われるのは引き上げるという話をしますよね。



司会:タレントを引き上げる。



松谷:自分たちに何か不利なことが起きたら引き上げる。



●ジャニーズ事務所は「義理と人情を重んじる」

司会:テレビ局もそうですし、出版社ともビジネスパートナーとしての関係を構築してきたから、週刊誌もテレビも報じないということになっていたんですね。



松谷:そうですね。飴のまき方がうまいんですよ。ジャニーズ事務所はよくすごく巨悪の組織だと捉えられるんだけども、ある種、昔ながらの日本の義理と人情を、お中元お歳暮ということをすごく丁寧にやる。ただし、義理と人情に反したら、それはもう大きな制裁が待っている。「あなたたちは仲間じゃないのね」とコンテンツを引き上げる。



司会:松谷さんも著書でお書きになってますけど、ジャニーズ事務所はどういう事務所なのかというと、義理と人情という。



松谷:芸能界自体が全般的にそういう個々人の関係性とか、ウェットな、昔ながらの日本的な関係で続いてきたのは間違いないですし、ジャニーズはことさら、それをちゃんとやる会社だと思っています。むしろ、他の会社は結構、マネージャーとかでもグダグダな人がいたりというのはよく見かける。ジャニーズはそこはすごく丁寧で細かい。



司会:ジャニーズ事務所もそうですけど、メディアも義理と人情を重んじてやっているところがあったのかもしれないですよね。



松谷:メディアもそうですよね。あと体育会系ですよ。



司会:今現在(再発防止特別チームによる)調査がおこなわれていますけれども、調査をするにあたって、どうしても現役で活動しているタレントさんへの調査をどうするんだとか、いろいろなしがらみが非常に多いと思います。二本樹さんは全容解明を求めるというお立場ですが、今後、どういう調査をやっていくべきだというふうに考えてらっしゃいますか。



二本樹:私もそこは専門家ではないので、難しいところではあると思うんですけれども、私のところにも実際に今、調査依頼というものが来てまして、特別チームから依頼が来たのが6月26日だったと思うんですけれども、来週の木曜日(7月20日)にズームで面談を約束しております。



私自身が懸念しているのは、網羅的な調査をおこなわないというふうに会見でおっしゃっていたので、被害の規模が矮小化されてしまうのではないか。それと、やはり性被害に遭われた方に対して最大限配慮するというのはもちろん重要ではあると思うんですけれども、一方でこのセンシティブという言葉に隠れてしまって、真相の解明がおこなわれないとか、そういう方向に進んでしまうのが非常に心配している部分でありますね。





●山下達郎さんと会社のスタンス「意外性はなかった」

司会:松谷さんはこの問題の背景として、芸能界全体にはびこる特異な体質があることを指摘されていました。最近では、音楽プロデューサーの松尾潔さんがラジオ番組でジャニーズ性加害問題に触れたことをめぐって、業務提携先の音楽プロダクションのスマイルカンパニーからマネジメント契約の解除を申し入れられたことが話題になっています。今回の件をどのように見ていらっしゃいますか。



松谷:あのときにやはり義理と人情を、スマイルカンパニーと山下達郎さんは重んじたということですよね。だから、私は実は意外性はなかった。山下達郎さんの態度とかスマイルカンパニーのスタンス。特にスマイルカンパニーはメリー喜多川さんとすごく関係が深かった小杉さんという方がやっている会社なので、そこの関係を取ったというのはわかるなと。わかるというのは、そうするだろうな、という意味ですよね。



これは山下達郎さんも言っていたけども、解雇とかではなくて、契約関係が終わったというだけの話なんですよ。もちろんそれは制裁ではあるんだけれども、むしろ我々が今からしなければいけないことは、松尾さんがまともにこれからちゃんと仕事ができるような状況を業界が作ってあげることだと思うんですね。



松尾さんは、テレビ朝日の関ジャニが出ている「関ジャム」という番組に時々出ていたりとか、これはもうジャニーズと関係ないんですけど、中居正広さんの番組で音楽に関してコメントされていたりしていて、私もね、松尾さんの解説はすごく勉強になるなと思って、いつも見ていたんですね。



松尾さんは、大人としてこの問題をこのままウヤムヤにしてはいけない、という当たり前の話しかしてないんですよ。



なので、そんな人が業界からパージされるような状況はもちろん良くないですから、松尾さんを今後、テレビ朝日の「関ジャム」という番組もそうですけれども、自分たち個々人で一人一人が何が正しいことなのかということを考えて判断をしていかないと、多分そういうことをやらない世界の方が、僕は沈んでいくと思います。



司会:実際に過去にジャニーズ事務所と不幸な別れ方といいますか、パージされてしまったという事例はあるんでしょうか。



松谷:たくさんありますよね。それはSMAPを辞めた新しい地図の3人が圧力かけられていた疑いがあると公正取引委員会が2019年に注意をされた。最近だと手越祐也さん、彼は別に違法なことを一つもしてないんですよ。安倍昭恵さんとコロナ禍でちょっとお酒飲みに行ったとか、そういうことですよね。ただ良くない別れ方をして、もう完全にテレビというか、レガシーメディアからは消されてしまう。



もちろん、山P(山下智久)とかは、今NHKやNetflixの番組に出たりして、そうじゃない動きもあるので、状況はかなり変わってきていますが、ジャニーズ以外、のんさんのケースとかも含めて、そういうことはまだこの業界にはたくさんあるなと思います。



司会:義理と人情を重んじてということなのでしょうか。



松谷:本当に彼らに感情的な紐帯はちゃんとあるのかというと、私はちょっと微妙だと思っていて、ただ前例を踏襲していて誰も何も考えていない。そのシステムに乗っているだけではないか。本当に個人が考えて判断をしていって、声を上げていくということになれば、状況が変わってくるだろうと。



司会:二本樹さんは、松尾さんをめぐる問題をどのように見ていましたか。



二本樹:非常に残念な話だなと思いますね。実績も才能もある方が、そういう形で表舞台から淘汰されてしまうというのはあってはならないことだと思います。



私自身、音楽をやっているんで、山下達郎さんは本当にミュージシャンのレジェンドでいらっしゃいますので、そういう影響力がある方がきちんとしたスタンスといいますか、いけないものに対してはいけないという姿勢をとってくれたら、すごい影響力があるんじゃないかと思いますので、そうしてほしかったなという気持ちがあるのは正直なところですね。



●各社の「ジャニーズ担当」とは?

司会:松谷さんにもう一つ質問があって、ジャニーズ担当と言われている記者たちは各メディアにいるものなんですか。



松谷:いますよ。新聞社にもテレビ局にもいますし。ジャニーズ側との窓口を1本化するということですね。それは報道の方にもいるし、制作の方にもいる。



司会:この人たちのお仕事は具体的にどういうものなんですか。



松谷:要はジャニーズ側と密にやりとりをするということですね。情報のやりとりだけではなくて、交渉もそうだし。ジャニーズ側としては多分いろんなところから言われるよりも、たしかに情報の窓口は1本にしたほうがいいんですけど、ただジャニーズ側は要はそこをうまく手懐けるんですね。



今はどうかわからないけども、昔はジャニーズ担当を集めて飲み会をしたりとか。そこにタレントが現れて、お酌をしたりとかというのはあった。大体40代から50代の女性です。



司会:そうなんですか。なんでなんですかね。



松谷:いろんな理由があると思うんですね。私も『日経エンタテインメント』のライターをやってましたが、男性タレントには女性ライターで女性タレントには男性ライターみたいなことが多かったので、ジャニーズを男性のライターが取材するなんてことはあんまりないと思いますよ。新聞とか以外では。雑誌とかではないと思います。



●理解されてこなかった男性の性被害

司会:これはまた芸能取材の独特な慣習なのかもしれないですよね。テレビについてはあんまり報じられない事情があった。雑誌については、たとえば週刊文春のようにすごく頑張ってやっているところがあったわけですけれども、ほかはみんな沈黙していた。それはもちろん、ビジネス上の理由というのもあったと思うんですけれども、ほかにも報道をしたくなくなる事情はあったんでしょうか。



松谷:たとえば、2007年か2008年に朝日新聞の記者の方が被害者の方に取材をして、この問題を取り上げようということをしていた方がいらっしゃった。記事でちゃんと被害に遭われた方にも取材をして、記事化直前までいっていたけども、記事化しなかった。なぜかというと、その方が言うには、ジャニーさんからそういう行為を受けていたにもかかわらず、誰一人として、被害を訴えなかったからなんですね。



BBCのドキュメンタリーの中に、リュウさんという方が出てきますね。彼は基本的に未遂の段階だったんだけれども、今もジャニーさんには感謝していると。このジャニーさんに感謝してることを、被害に遭いながらも言う人はたくさんいらっしゃる。



私自身も今回の問題が事実かどうか、はっきりわからなかった。長年はっきり自分でも確信を持てなかったのは、ジャニーさんがそういう行為をしていながら、もう一方で被害に遭われたかもしれない現役のタレントたちが、テレビとかでジャニーさんのことをものすごく親しげに言うじゃないですか。「YOUはなになにだよ」みたいな。おかしいよなと思ったんですよね。



BBCのモビーン・アザー記者のすごく大きな功績は、そこに「グルーミング」という概念をちゃんと導入してくれたことです。これは性犯罪においてはよく知られている概念だとは思うんですけれども、日本では全然知られていなかったですよね。



アメとムチといえばそうなんだけれども、被害を被害だと思わせないような手口もそこにあったということ。それで腑に落ちたところがあるんですよ。



司会:記者の方もそうだったんですかね。グルーミングだから被害を訴えている人たちは、こういうジャニーさんに対する親愛の情みたいなものを示すといっても一方で、被害は被害だということを受けとめるまでにちょっと時間がかかったんですかね。



松谷:朝日の方に関していうと、そこがはっきりしなかったと言っていましたね。それはちょっとやっぱわかるんですよ。今回被害を訴えている方の中にも、実は被害を受けてたんだけども、それを被害だと認識してない人とか、あと、したくないという人もいたと思う。



男性が男性から被害を受けていたということを被害として認めたくない。プライドとしてあったと思うんですよ。だけど、あれは被害だったんだということを自分の中で認めるというプロセスが今生まれてきているんだと思うんですね。



司会:社会の成熟、変化というのもある。二本樹さんはご自身が被害を被害だと受けとめるのには、時間がかかりましたか。



二本樹:そうですね。間違った行為がおこなわれてるという認識はあったんですけど、それがはっきりと性被害だと認識できるまでは、相当な年数を要したと思いますね。それを自覚し始めたのは、20代後半ぐらいだったと思います。



松谷:10年ぐらい?



二本樹:そうですね、そこからもう自分でカウンセリングを受けようと決心して、初めてきちんと専門家の方のケアを受けながら、自分の性被害の体験についても語ったという背景があります。



司会:二本樹さんが被害に遭われたのはまだ1990年代半ばで、この頃は男性も性被害に遭うんだということに対する社会の認識がまだ乏しかったところがあるのかなと思いますよね。



二本樹:特に日本においてはそうだったと思います。



司会:それはメディアにとっても恐らくそうだったんじゃないのかなと思います。週刊文春の裁判になった1999年の報道でも、今現在のような性加害という文脈ではなくて、「ホモセクハラ」という表現で使われていましたよね。



松谷:男性が性的な被害を受けるという法律が、2017年までなかったんですよね(*1)。一般的な認識だけではなくて、社会の法律のレベルでそうした合意がなかったというふうに見ていいと思います。



(*1)2017年に被害者を女性に限っていた「強姦罪」が廃止され、男性も対象に含める「強制性交等罪」が新設された。



司会:もしかしたら、新聞をはじめとした報道機関がきちんと報じてこなかったというのもそういう背景があったんでしょうかね。多分、これが被害者が女性だったら全然違ったんじゃないかと思うんですね。



松谷:もちろんそうです。被害者が女性のアイドルグループだったら、本当に大きな騒動になっているはずなんだけど、今もまだここまでというのは、やはりまだ初めて問題化したケースだというのもありますけども、多くの人がまだ想像力が追いついてない人も結構いらっしゃるんだろうなと思いますね。



ただ、欧米ではこういうケースはいっぱいあるので、ワインスタイン(*2)とかがよく出されますけども、アメリカだとカトリック教会の神父の件とか、イギリスのジミーサヴィル(*3)という芸能界の件とかあるので、そっちを見ると、今回のケースのより理解が深まるとは思いますね。



(*2)セクハラや性的被害を告発する「#MeToo」運動のきっかけになったハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによる性的暴行。米紙ニューヨーク・タイムズの調査報道により、多くの女優や従業員が被害を受けたことが明るみに出た。



(*3)イギリスのBBCテレビの人気司会者。2011年に死去後、50年にわたって少年少女に性的暴行を繰り返していたことが発覚した。