2023年07月20日 19:11 弁護士ドットコム
日本郵便で働いていた時給制契約社員の男性が、正社員にのみ支給されている寒冷地手当を同社に求めていた訴訟で、東京地裁(伊藤由紀子裁判長)は7月20日、原告の請求を棄却した。
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判決後に開かれた会見で、男性は「もらえるものがもらえず、家計が苦しい。このような格差が認められるわけない」と話した。原告側は引き続き訴訟で戦っていくとして、直ちに控訴する意向を示した。
原告側は2020年2月の提訴段階では、寒冷地手当のほか(1)住居手当(2)年末年始勤務手当(3)扶養手当(4)夏期冬期休暇の付与(5)有給の病気休暇の付与(6)年始期間の祝日給ーなどの支給も求めていた。
ところが、2020年10月に(1)~(6)を有期契約社員に支給・付与しないことは労働契約法20条違反とする最高裁判決が出たため、(1)~(6)などを是正することを内容とする原告57人全員の和解が2023年3月に成立(和解金3680万円)。今回の判決では、最高裁で判示されず和解が成立しなかった原告男性の寒冷地手当についてのみ判断された。
地裁判決は、寒冷地手当は「正社員間の公平を図る趣旨で支給されているもの」と指摘。勤務地域によって基本給の差異がない正社員のための、寒冷地における生計費増を緩和するものとした。
一方、時給制契約社員の基本賃金は、地域別最低賃金において勤務地域ごとに必要な生計費も考慮して定められていると説明。不支給は「不合理であると評価できるものではない」とした。
判決によると、同社は、北海道や東北地方の寒冷積雪地で勤務する正社員に対し、11月~3月までの5カ月間分を支給。原告の勤務地(岩手県)では「月額7360~1万7800円」と定められていた。
原告側は訴訟を通じて、寒冷地手当が支給される趣旨は、労働者の暖房費等の増加分を補助するのがメインだと主張。暖房費の増加が地域別最低賃金に反映されていないと訴えたが、東京地裁は認めなかった。
原告代理人の水口洋介弁護士は、判決について「非常に不当だ」と強く批判。原告6人が提訴して札幌地裁で審理中の同様の訴訟への影響について懸念を示した。
郵政産業労働者ユニオン・中央執行委員長の日巻直映さんは、寒冷地で勤める組合員から暖房費の値上がりを懸念する声があがっているとし、「車の燃費も悪く、ガソリンの値上がりも怖いと聞きます。寒冷地手当は当然に支給すべきです」と話した。
原告の男性は、すでに日本郵便を退職しているが、前述の最高裁判決以降も社内の制度自体は変わっていないと元同僚から聞くという。
「最高裁判決で違法認定され、訴訟を戦った人には和解金を払いましたが、会社の対応はほとんど変わっていません。(寒冷地手当含めた各種)制度のあり方そのものを変えないといけない。引き続き戦っていきたいと思います」