「毎日同じことばかりで、このままでいいのか…」
「この会社では成長ができない感じがします…」
「もっと成長のできる仕事ができる会社を探しています…」
仕事で成長を感じられていない新入社員や若手社員から、こんな悩みや戸惑いの声が出ることがあります。こうした若手は、放っておくと遅かれ早かれ退職していきます。人材不足の中でやっと採用できた若手が辞めていくのは、企業にとっては大損害ですし、若手を預かる管理職としてはマイナスの評価をもらってしまうことでしょう。
このような状況にならないためには、どのような関わりをしていったらいいのでしょうか? 今回は、若手が求める成長実感を中心に、お話を進めてまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
「仕事の質的負荷」と「自律支援的な職場環境」が大事
リクルートの就職未来研究所が昨年12月に発表した調査結果によると、大学生の民間企業への就職確定者が就職先を確定する際に決め手となった上位項目は、以下のようになっています。
1位:自らの成長が期待できる(47.7%)
2位:福利厚生(住宅手当等)や手当が充実している(43.5%)
3位:会社や業界の安定性がある(39.5%)
このことから、皆さんの若手部下の多くが、“成長実感”を望んでいることが分かります。
「成長実感を若手に育むことができていますでしょうか?」
この問いに、「出来ています」と即答できればいいのですが、忙しい中でうまくできていないのが現状でしょう。
リクルートワークス研究所の発表した「成長実感が高い新入社員と職場環境等の分析」によると、成長実感と相関が高いものの中に、「仕事の質的負荷」と「自律支援的な職場環境」といった要素が挙げられています。
「仕事の質的負荷」とは、ある程度ストレッチした仕事が与えられることを示しており、「自律支援的な職場環境」とは、ある程度の裁量権を与えられ、自身で考えながら仕事を回すことができる環境があることを示しています。若手に成長実感を育むポイントは、このあたりにありそうです。
成長実感を育み、若手の定着を促進するために経験学習モデルを回す
若手に成長実感を育むためには、「仕事の質的負荷」と「自律支援的な職場環境」を踏まえつつ、経験学習モデルを回していく必要があります。経験学習モデルとは、デービッド・コルブが唱えたフレームであり、次の4つの循環で示されています。
・具体的経験:仕事の中で、様々な具体的経験をする
・リフレクション:やった仕事を振り返る
・概念化:振り返った内容から、学びや教訓を引き出す
・能動的実践:学びや教訓を新しい仕事に適用していく
自身で経験した仕事を振り返り、成功体験や失敗経験から学びを得て、その学びを次の仕事に活かしていくことが自律型支援になっていきます。ここに「仕事の質的負荷」を組み合わせることができれば、若手部下の成長実感を醸成することができます。
実際の現場においては、管理職に以下のような関わりが求められることになります。
・具体的経験:背伸びできれば達成できるような、ストレッチ仕事を任せる
・リフレクション:なぜ仕事が「うまくいったのか?」「うまくいかなかったのか?」を振り返させるタイミングを持たせる
・概念化:「うまくいった要因」「うまくいかなかった要因」を言語化させる
・能動的実践:次の背伸び仕事を与え、概念化したものを適応させる支援をする
経験学習モデルの流れを、1ON1等の中で支援していきましょう。
以上、若手が求める成長実感を醸成するために経験学習を中心に、管理職の関わり方をご紹介してまいりました。経験学習モデルは、管理職自身にも適用させていくことが大切です。自身の成長を感じながら、部下の成長も支援してまいりましょう。