2023年07月18日 10:01 弁護士ドットコム
週末に自動車で家族と出かけたヒロアキさん(40代)は、高速道路での渋滞に巻き込まれた際、バイクが車の間をすり抜けていく様子を見て落ち着かなかったといいます。
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「片側2車線の車線間を結構なスピードで走っていくので、車のドアミラーにでもぶつかったらと思うと見ているだけでもヒヤヒヤします。自分たちさえ早く目的地に着けばいいんだという振る舞いとも思えます」
バイクの運転手としては、渋滞で動けない車を横目にスイスイと進めるかもしれませんが、追い抜かれる側にとってはぶつかられるリスクしかありません。バイクで車の間やわきをすり抜けるのは法的に問題ないでしょうか。
道路交通法にすり抜けそのものを禁止する規定はありません。ただし、すり抜け方次第では道交法違反に当たる場合があります。
片側2車線の車線間をすり抜ける行為は、「追い越し」(道交法2条1項21号)またはいわゆる「追い抜き」に当たります。
追い越しは、進路変更(車線変更)して前方の車の前に出ることです。追い抜きは、一般に進路変更せずに前方の車の前に出ることを指しますが、道交法で定義されているわけではありません。違いは「進路変更の有無」です。
追い越しの場合は、原則として追い越そうとする車両の右側を通行しなければならず(道交法28条1項)、片側2車線以上の場合には右側の車線へ進路変更して通行しなければいけません(車両通行帯違反、同20条3項後段)。
ヒロアキさん目撃のケースが進路変更を伴わない走行だった場合には「追い抜き」、すなわち「追い越し」ではないため、追い越し違反などが適用されない可能性があります。
もっとも、バイクのすり抜けは、車線(車両通行帯)を区画する車線境界線上付近を走行しているケースも少なくありません。左右の車線を行ったり来たりしているようなすり抜けは、ウインカーを出しておこなう車線変更をせずに「追い越し」をしているとして、道交法違反になる場合もありそうです。
追い越し違反は「3月以下の懲役または5万円以下の罰金」(道交法119条1項6号)、車両通行帯違反は「5万円以下の罰金」(120条1項3号)が定められています。
すり抜けは、たとえ道交法違反にならない場合でも、追い抜こうとした車のボディやドアミラーなどにぶつかるリスクがあります。また、一般道なら、右左折しようとする車との接触事故にもつながりうる危険な行為です。運転時には、早く目的地に着くことで得られるわずかな時間を惜しむのではなく、生命・身体の安全を最優先にすべきだと心がけましょう。