2023年07月17日 10:31 弁護士ドットコム
みなさんは会社で有給休暇を取得した際に、会社にお土産を買っていきますか。弁護士ドットコムには、有給を取得しようとしたら、上司からお土産を強要されたという相談が寄せられました。
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相談者によると、有給休暇を申請する際に上司が「休ませてやるのだからお土産を買ってこい」と伝えてきたそうです。相談者は、このように物品の購入を強制することはパワハラや恐喝にあたる可能性があるのではないかと考えています。
ツイッターでも「(有給取得後に)会社にお土産買って行かなきゃいけないような雰囲気を無くしたいです」「合法的に有給を使用した休みにもかかわらずお土産買うのは何故なのか」など、有給明けのお土産文化についての投稿が複数ありました。
上司の発言は法的に問題ないのでしょうか。宍戸博幸弁護士に聞きました。
——そもそもお土産を買ってこなければいけないのでしょうか?
有給休暇は、一定期間勤続した労働者に与えられる法律上の権利です。会社には、従業員に有給休暇を取得させる法的義務があります。心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与される休暇であり、有給休暇を取得するのに理由はいりません。
ネット上では「お土産は買ったほうがいい」というアドバイスもあるようですが、法的にはお土産を買って職場に配る義務は当然ありません。
「休ませてやるのだからお土産を買ってこい」という発言は、職務命令の範囲を逸脱したものと言わざるをえませんので、こうした要求に応える法的義務はありません。
——ではパワハラになるのでしょうか?
上司の発言が、ただちにパワハラや恐喝にあたり、違法と評価されるわけではないと思います。
ただ、こういった発言をする上司がいるということは、労働者の権利について十分な知見がないということですので、会社全体として労働者の権利を軽視している傾向があるのかもしれません。
問題が山積みになり、いずれパワハラ問題に発展する可能性もありますので、こういった言動を受けた方は手元に記録を残しておくのがよいと思います。
管理職や経営者の方は、労働者の権利をしっかり守っていくことの重要性を認識するケーススタディとして、他人事と思わず、会社の環境(管理職の教育)をもう一度見直していただければと思います。
【取材協力弁護士】
宍戸 博幸(ししど・ひろゆき)弁護士
債権回収・企業法務に特化し、年間の事件処理数(事務所ベース)は2000~3000件にも上る。法科大学院の講師として教鞭をふるうほか、休日には趣味の茶道を嗜む。
事務所名:弁護士法人黒川法律事務所
事務所URL:https://kurokawa-lawoffice.com/