2023年07月16日 08:51 弁護士ドットコム
花火大会に行った友人が尿意を我慢できずに河原で「こっそり済ませた」ようだけど問題ないのか——。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
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友人は「雑草が生い茂っていて管理されているようには見えない」大きな橋の下付近で、こらえていたものを放出し難を逃れたようです。話を聞いた時は笑って済ませた相談者ですが、本当に「法的にセーフなのか」が気になっているようです。
夏の花火大会は人出が多く、限られた数しかないトイレの順番を待っていては間に合わないこともありそうです。人の目につかないよう「立ちション」することは法的に問題ないのでしょうか。坂口靖弁護士に聞きました。
——立ちションは法律違反になるのでしょうか。
軽犯罪法(1条26号、科料または拘留)違反、公然わいせつ罪(刑法174条、6月以下の懲役等)に該当する可能性があります。
——人から見られにくい場所で用を足したようですが、それでもアウトでしょうか。
軽犯罪法1条26号は、「街路または公園その他公衆の集合する場所」(軽犯罪法1条26号)を対象としています。
街路とは、市街地の道路のことを指すものと解されていますので、今回の事案における立ちションをした場所は、「街路」や「公園」には該当しないことは明らかですので、「その他公衆の集合する場所」と評価しうるか否かが問題となります。
過去の裁判例では、「その他公衆の集合する場所」は「性質上多数の人が集合するような場所」を指すとされています。
今回の河原にある「雑草が生い茂っていて管理されているようには見えない大きな橋の下」は、確かに、花火大会時においては、多数の者らが来る場所の近くにあります。
しかし普段は人が集まるような場所ではありませんので、「性質上」多数の者が集合する場所とは評価できないため、軽犯罪法違反で罰せられる可能性は極めて低いものと考えられます。
——「立ちション」が現実に取り締まり対象となる可能性はありますか。
「街路やその他公衆の集合する場所」すなわち街中等で立ちションをした場合には、軽犯罪法違反として処罰を受ける可能性はあります。
実際に、15台ほど停められる街中の駐輪場で立ちションをしたという事例で、同駐輪場は「街路」に該当するとして、軽犯罪法1条26号違反として刑罰を受けた事案が存在しています。
もっとも、軽犯罪法は、極めて軽微な迷惑行為について軽い刑罰を科すという法律であり、真に緊急性がある中で、突発的に目立たず人目に触れないように立ちションをしたような場合には、注意を受けるのみで、実際に刑罰まで受けることは少ないように思われます。
なお、立ちションに乗じて殊更に陰部を他者に見せようとしていると評価されるような場合には、公然わいせつ罪として処罰を受けてしまう可能性もあります。
【取材協力弁護士】
坂口 靖(さかぐち・やすし)弁護士
大学を卒業後、東京FM「やまだひさしのラジアンリミテッド」等のラジオ番組制作業務に従事。その後、28歳の時に突如弁護士を志し、全くの初学者から3年の期間を経て旧司法試験に合格。弁護士となった後、1年目から年間100件を超える刑事事件の弁護を担当。以後弁護士としての数多くの刑事事件に携わり、現在に至る。YouTube「弁護士坂口靖ちゃんねる」 <https://youtube.owacon.moe/channel/UC0Bjqcnpn5ANmDlijqmxYBA> も更新中。
事務所名:プロスペクト法律事務所
事務所URL:https://prospect-japan.law/