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シンポジウム「ウクライナ避難民の日本での未来を考える」- KAZKA×SUGIZOが平和を訴える

2023年07月13日 15:11  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから500日が経過するなか、東京・渋谷区の国連大学では7月12日、シンポジウム「ウクライナ避難民の日本での未来を考える」が開催された。ウクライナの人気ポップスバンドKAZKA、日本のロックミュージシャンSUGIZOさんらが参加し、ウクライナ支援の現状を報告。あらためて国際平和を訴えた。


○■「『心のケア』交流センター ひまわり」の活動に感謝



同イベントは、心理カウンセラーの業界団体「一般社団法人全国心理業連合会(全心連)」が運営する「心のケア」交流センターの主催によるもの。KAZKAのメンバーは「心のケア」交流センターが滞在費などをサポートする形で6月下旬より日本に滞在しており、これまで福岡、沖縄、関西、山梨、東京をめぐってウクライナ避難民を元気づけてきた。


イベントの冒頭、衆議院議員の茂木敏充氏は以下のようにメッセージを寄せた。「日本では、これまで2,400名以上のウクライナ避難民を受け入れてきました。祖国を追われた人々を支援しているのが、全心連が立ち上げた「心のケア」交流センター、通称『渋谷ひまわり』です。『渋谷ひまわり』を知らないウクライナ避難民の方はいない、とも聞いております。皆さんのこれまでの支援活動に心より感謝いたします」。政府としても、引き続きウクライナ支援を着実に実施していきたい、と続けた。



また、駐日ウクライナ特命全権大使のセルギー・コルスンスキー氏は「これまで日本の各地域を周り、ウクライナから避難してきた人たちに話を聞きましたが、皆さん現地の日本人の皆様にさまざまな支援をいただいている、と感謝の言葉を口にします。日本の方々の支援に心より感謝します。ロシアによる侵略が始まってから500日が経ちましたが、残念ながら戦争はまだ続いています。ヨーロッパの国々では”支援疲れ”という言葉も聞かれ始めましたが、ウクライナには皆さんからの引き続きの支援が必要不可欠です」。戦後の復興に向けても、日本のリーダーシップに大いに期待しています、と説明した。


このあと、セルギー氏は全心連の浮世満理子代表に感謝状を手渡した。


浮世代表は「もともと私たちは避難民の専門家でもなく、支援のプロフェッショナルでもありませんでした。ただ、ウクライナから避難してきた方たちの声を聞きながら、少しでもできることがあれば良いな、そんな思いでやってまいりました。普段、私たち全心連をサポートくださっている皆様へのお礼も兼ねて、今回はこのようなイベントを実施しました」。



このあと『渋谷ひまわり』のこれまでの活動をスライドショーとともに振り返った。昨年(2022年)5月に1組のウクライナ避難民の家族を迎い入れたところから活動がスタートしたそうだ。


イベントの後半には、KAZKAの2人、そしてギタリストのSUGIZOさんを迎えたパネルディスカッションが行われた。


ロシアによる侵略戦争が始まる前は、人々を愉快にさせる楽曲をたくさん歌っていた、と話すオレクサンドラ・ザリツカさん。1年前に、戦争の生々しさを伝える新曲「I AM NOT OK」をYouTubeにアップすると、その視聴回数は原稿執筆現在で361万回にまで達している。


国としてはソビエト連邦の崩壊にともない1991年にようやく独立を果たしたウクライナではあるが、民族の歴史は1000年ほど昔にまで遡れるという。ドミトロ・マズリャクさんは「戦争は民族の文化も奪います。私は沖縄を訪れたとき、踊りを見たり島唄を聞いたりして、土地のユニークな伝統文化が今日まで残っているのを知りました。いま祖国ではウクライナ語を話しただけで逮捕されるようなことが起きていますが、ウクライナの文化を大事に保護していくことで、もっともっとウクライナの国を強くすることができるのでは、と思いました」と決意を新たにする。


もともと2016年頃から中東の難民キャンプなどでライブコンサートをやってきたんです、と話すのはSUGIZOさん。現在はウクライナ避難民に向けたコンサートに力を入れている。

「ウクライナは過去のツアーでも訪れていて、大好きな国でした。特にキーウは景色も綺麗で、街並みも素敵だし、ライブの印象も良かった。もう良い思い出しかないんですよ。その街が侵略され、破壊されている。自分にできることはないか、ずっと模索する日々でした」。皆んなで一緒に平和を願い、メッセージを発信することが、今すべきとても重要なことだと思うんです、と力を込める。


また、こうも話した。「命が危険にさらされている紛争地域の人々にとって(音楽を含めた)芸術、そしてスポーツなどは、ひょっとしたら不必要なものかもしれない」。そのうえで、穏やかな口調で以下のように続ける。



「でもね、そうした方たちが命をつないで、難民としての生活を強いられながらも安全に住める場所にたどり着いた―――。そのとき、芸術やスポーツが求められると思うんです。自分も最初、『難民キャンプで音楽を演奏するなんて不謹慎だ』と思っていました。でも、そんな考えは真逆だったんです」(SUGIZOさん)。



ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2022年2月の時点で、ウクライナのアーティストと一緒に音楽を奏でたいと思っていた、と明かしたSUGIZOさん。すでにKAZKAとは一緒にコンサートを周り、コラボ曲も完成させている。「戦争が終わったら早い段階でウクライナでも一緒にライブをしましょう」と呼びかけるSUGIZOさんに、KAZKAの2人も笑顔で応じていた。


近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら(近藤謙太郎)