Text by CINRA編集部
音楽プロデューサー・作詞家・作曲家の松尾潔が7月1日、自身のTwitterでスマイルカンパニーとのマネージメント契約が中途で終了したことを発表。それを受け、7月9日、スマイルカンパニーに所属する山下達郎が自身のラジオ番組『山下達郎の楽天カード サンデー・ソングブック』でコメントを発表した。
松尾は契約終了について「私がメディアでジャニーズ事務所と藤島ジュリー景子社長に言及したのが理由です。私をスマイルに誘ってくださった山下達郎さんも会社方針に賛成とのこと、残念です」とツイート。7月6日発売の『日刊ゲンダイ』連載「松尾潔のメロウな木曜日」特別版には、スマイルカンパニーとの年間契約が15年目の中途で終了した理由、ジャニーズ事務所、藤島ジュリー景子社長、山下達郎、竹内まりやについて綴られており、現在、全文無料公開されている。
松尾が所属していたスマイルカンパニーの代表取締役社長・小杉周水は7月5日、オフィシャルサイトで、「この度、スマイルカンパニーと業務提携をしておりました松尾潔氏と松尾潔事務所との業務委託契約が本年6月30日をもって双方の合意により終了しましたことをお知らせ致します。契約終了直後に、松尾氏がTwitterで弊社所属の山下達郎の名前にも触れてツイートを行ったことが各方面で取り上げられておりますが、今回の契約解除は、松尾氏によるこれまでの社内外での言動等に鑑み、弊社代表である私自身の判断により、松尾氏との協議の上、合意により終了することとなったものです」と発表した。
山下達郎は7月9日、自身のラジオ番組でこの問題について言及。
松尾の契約終了については、「私の事務所と松尾氏は、彼から顧問料を頂く形での業務提携でありましたので、雇用関係にあったわけではない。また彼が所属アーティストだったわけでもなく、したがって解雇には当たりません。弁護士同士の合意文書も存在しております」と説明。契約終了は「事務所の社長の判断に委ねる形で行なわれました」とし、「松尾氏と私は直接、何も話をしておりませんし、私が社長に対して契約を終了するよう促したわけでもありません」「今回、松尾氏がジャニー喜多川氏の性加害問題に対して憶測に基づく一方的な批判をしたことが契約終了の一因であったということは認めますけれど、理由は決してそれだけではありません」と語った。
また、「ネットや週刊誌の最大の関心事はですね、私がジャニーズ事務所への忖度があって、今回の1件もそれに基づいて関与しているのでは、という根拠のない憶測です。今の世の中は、なまじ黙っていると言ったもの勝ちで、どんどんどんどんウソの情報が拡散しますので、こちらからも思うところを正直に率直にお話ししておく必要性を感じた次第であります」とコメントした。
ジャニー喜多川の性加害問題については、「今回の一連の報道が始まるまでは漠然とした噂でしかなくて、私自身は1999年の裁判のことすら聞かされておりませんでした。当時私のビジネスパートナーはジャニーズの業務を兼務していましたけれど、マネージャーでもある彼が1タレントである私にそのような内情を伝えることはありませんでした」とコメント。
「性加害が本当にあったとすれば、それはもちろん許しがたいことであり、被害者の方々の苦しみを思えば、第三者委員会等での事実関係の調査というのは必須であると考えます。しかし、私自身がそれについて知っていることが何もない以上、コメントの出しようがありません。自分はあくまで一作曲家、楽曲の提供者であります。ジャニーズ事務所はほかにもダンス、演劇、映画、テレビなど業務、人材も多岐にわたっておりまして、音楽業界の片隅にいる私にジャニーズ事務所の内部事情など、まったくあずかり知らぬことですし、まして性加害の事実について、私が知る術は全くありません」と語った。
そのうえで、「私の人生にとって、一番大切なことはご縁とご恩です。ジャニーさんの育てた数多くのタレントさんたちが、戦後の日本でどれだけの人の心を温め、幸せにし、夢を与えてきたか。私にとっては、素晴らしいタレントさんたちやミュージシャンたちとのご縁を頂いて、時代を超えて長く歌い継いでもらえる作品を作れたこと、そのような機会を与えて頂いたことに、心から恩義を感じています」とジャニー喜多川への感謝を語り、「私が一個人、一ミュージシャンとして、ジャニーさんへのご恩を忘れないことや、ジャニーさんのプロデュサーとしての才能を認めることと、社会的、倫理的な意味での性加害を容認することとは全くの別問題だと考えております。作品に罪はありませんし、タレントさんたちも同様です。繰り返しますが、私は性加害を擁護しているのではありません」と述べた。
最後に「性加害に対する様々な告発や、報道というのが飛び交う今でも、そうした彼らの音楽活動に対する私のこうした気持ちに変わりはありません。私の48年のミュージシャン生活の中でたくさんの方々から頂いた、ご恩に報いることが出来るように、私は、あくまでミュージシャンという立場からタレントさんたちを応援していこうと思っております」と述べ、「彼らの才能を引き出し、良い楽曲を共に作ることこそが、私の本分だと思ってやってまいりました。このような私の姿勢をですね、忖度、あるいは長いものに巻かれていると、そのように解釈されるのであれば、それでもかまいません。きっとそういう方々には、私の音楽は不要でしょう。以上が今回のことに対する私からのご報告です。長々失礼しました。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます」と締めくくった。