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「今年から夏休み廃止!有給でよろしく」新社長の宣言に激震…まかり通るのか?

2023年07月12日 10:31  弁護士ドットコム

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社長が「夏休み」を廃止すると言い出した——。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。


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相談者の勤め先では、有給休暇とは別に5日間の夏季休暇が与えられていましたが、新社長が「夏休みをとりたい場合は有給を利用しろ」と宣言したそうです。



理由として「就業規則に定めのない休暇の付与は闇給与に当たる」と言い、規則変更にも応じません。この会社には長年夏休みがありましたが、社長は「みな有給を使っていると思っていた」そうです。



相談者は、社長の言い分に納得がいかないようです。突然の夏休み廃止は問題ないのでしょうか。近藤暁弁護士に聞きました。



●夏休みが「労使慣行」かどうかがカギ

——夏休み(夏季休暇)は法的にどのような位置づけでしょうか。



夏季休暇は、法律上定められた休暇ではなく、就業規則などで認められる休暇です。期間や、有給とするか無給とするかについても会社の自由です。



もっとも、長年にわたって従業員が反復継続して取得していた場合、就業規則などに明記されていなくとも、夏季休暇の取り扱いが労使慣行として労働契約の内容となり、会社や従業員を拘束するルールとなることがあります。



——どのような場合に「労使慣行」と認められるのでしょうか。



労使慣行の成立要件は、(1)同種の行為または事実が長年にわたって反復継続されてきたこと、(2)労使双方がその慣行によることを明示的に排斥していないこと、(3)当該慣行が労使双方の規範意識に支えられていること(過去の行為を将来にわたって受忍する意識を有していること)、が必要とされています(土田道夫『労働契約法【第2版】』189頁、菅野和夫『労働法【第12版】』167頁)。



(1)や(2)の要件について、裁判例では、ある慣行が契約的効力を認められるためには、当該事項について決定権限を有する管理者(使用者)がその慣行を規範として意識していたことを要求し、その内容についても、使用者が明確に異議を述べなくとも慣行の是正を考えていれば規範意識は排斥されるとするなど、規範意識を厳格に認定しています(東京地裁昭和63年2月24日判決、大阪高裁平成5年6月25日判決、東京高裁平成7年6月28日判決)。



●労働契約の内容となっている以上「これまで通り取得可」

——相談者のケースではどうでしょうか。



(1)従業員に夏季休暇を与える慣行が長期間にわたって続いている、(2)会社(前社長)がこれまで夏季休暇の取り扱いを是正するアクションを起こしてこなかった、(3)会社と従業員の双方が、夏季休暇は従業員に与えられるべきものと認識していた、という状況なら、夏季休暇に関する慣行は労働契約の内容となり、会社を拘束するルールとなります。



この場合、会社は夏季休暇を一方的に廃止することはできません。なお、「就業規則に定めのない休暇の付与は闇給与に当たる」との主張は、法的に意味をなすものではなく、夏季休暇廃止の理由とはなりません。



会社側が夏季休暇の廃止を一方的に宣言しても、夏季休暇の付与が労使慣行により労働契約の内容となっている以上、従業員はこれまで通りに取得できます。



むしろ、対応が求められるのは会社側です。会社が夏季休暇を廃止したいのであれば、個々の従業員や労働組合から夏季休暇の廃止について同意を得るか、または就業規則の不利益変更に準じた手続きを取る必要があります。




【取材協力弁護士】
近藤 暁(こんどう・あき)弁護士
2007年弁護士登録(東京弁護士会、インターネット法律研究部)。IT・インターネット、スポーツやエンターテインメントに関する法務を取り扱うほか、近時はスタートアップやベンチャー企業の顧問業務にも力を入れている。
事務所名:近藤暁法律事務所
事務所URL:http://kondo-law.com/