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大場久美子、実父を看取り義父母との同居で考える介護「生きるのと同じくらい死ぬのって大変」

2023年07月11日 11:00  週刊女性PRIME

週刊女性PRIME

フットリフレクソロジストのスキルは父の介護時にも役立った

 7年前にがんを患った父親を自宅で看取り、今年、義父母との同居をスタートした大場久美子さん。「生きるのと同じように、死ぬのって本当に大変。自分はどうやって死ぬのだろう……と終活を考える年になりましたね」いずれは夫に自分の介護をしてもらうことを視野に入れ、起こした驚きの行動とは?

生きることと同じぐらい死ぬことも大変

「誰しもいつか介護され、看取られる側になりますよね。快く見送ってもらえるよう、持ち物を最小限にするなど生活を少しずつ整えています」

 そう朗らかに話すのは、女優の大場久美子さん。今年1月から同居する義父母の介護についても日常的に夫と話し合い、身近な自分ごととして介護・看取りと向き合う。

生きることも大変ですが、同じように死ぬことも大変。最期が近づいてきたとき、自分は何を大事にしたいか、周りの大切な人とどう過ごしたいか、きちんと考えておきたいし、介護する側になったときは、家族が自然とそういうことを考えられるよう支えたいです」(大場さん、以下同)

 大場さんがそう感じるようになったのは、実父の介護と看取りがきっかけ。約8年前、がんを患っていた父の在宅介護を担った。腹水がたまって歩けなくなり、不安げな顔をしている父を見て、大場さんから“うちに来る?”と誘ったのだ。しかし、当時は「父と良好な関係とはいえなかった」と振り返る。

一緒に過ごすとストレスになることもありました。でも、親であっても、たとえ他人であっても、死期が近く、自分を必要としている人がいたら見捨てることはできないでしょう?

 地域の困っている人を助けるために奔走していた母を見て育ち、幼いころから“目の前にいる人を助けるのは当然”というボランティア精神が身についていた。父の在宅介護に際しても「できるだけ本人の意思を叶えられる生活にしよう」と腹をくくった。

 とはいえ、仕事をしながらの在宅介護は過酷だった。

「介護は大変なものだと理解はしていました。ただ、そうは思っていても、疲れがたまってやりきれない気持ちになることがあって。父が寝ている隙に一人でこっそりケーキを食べてストレスを解消したこともありましたね(笑)。思っていることをため込まず、楽しみを見つけて気持ちをコントロールする時間が大切だと実感しました

在宅介護の知識がなく最期に苦しい思いを

 ハードなスケジュールのなかでも自分の時間を持つこと、待ち時間でも耳だけは澄ませ、出番がきたらパッと気持ちを切り替えることは、10代のころから芸能界で培ってきた習慣の賜物。それが介護生活でうまく活きた。

 加えて、「意外と頑丈なんですよ、私」と大場さん。段ボールを敷きさえすれば、どこでも寝られるような図太さが介護生活の助けになったと笑う。ただ、父の最期のことは、今も後悔として残っている。

「亡くなる3日くらい前から、父は痛みと弱くなっていく呼吸に苦しんでいました。最期の約1時間は、本当に息が苦しそうで。でも、わが家には酸素ボンベがなかったんです。からんでしまった痰を吸引するための器具もない。

 在宅で看取るための医療器具がまったくそろっていませんでした。そのことに気づくのが遅すぎて、最期に苦しい思いをさせてしまった。在宅介護の知識をもっと持つべきでした

 その後悔もあり、在宅介護インストラクターや認知症介助士、介護食アドバイザーなど、介護に役立つ資格を幅広く取得してきた大場さん。学んだスキルは、この先に待っているだろう義父母をはじめとした家族の介護に活かしたいと思っており、その思いが義父母との同居につながった。

 今は、自宅にあるちょっとした段差をDIYでなくして暮らしやすい環境を整えたり、身体のことを考えた食事を作ったり。義父母と同年代の人が登場するYouTubeの動画を見て、同居暮らしの参考にすることもある。ただし、そこで得た情報は、そのままうのみにするのではなく、自分たちの生活と照らし合わせながら取り入れている。

「いくら身体によい食べ物があったとしても、本人が食べたくないもの、好きではないものを無理して口に入れてもらうような介護はしたくないと思っています。逆に、身体にとってはマイナスになるようなものでも、それが本人にとって幸福感を高めるものであれば受け入れたいなと。身体や心によいと思うものは提案こそすれ、決めるのは本人。そのスタンスで義父母の人生のサポーターでいたいと思っています

 自身のYouTubeチャンネルでは、義父母との同居スタートを報告し、仲むつまじい暮らしが垣間見える。しかし、もちろんそんな日ばかりではない。生活の些細なズレに“不満が募ることもある”と感じるのが正直なところだ。では、なぜそこまで迷いなく献身的でいられるのか。

「40歳くらいのとき、もう人生をやり尽くしたなって感じたんです。芸能人として長く応援していただいて、なかなかできない経験もたくさんさせていただきましたから。この先はお世話になってきた人に恩返しをして死にたいなと思いました。すごく“いい人”みたいに聞こえてしまうかもしれないけど(笑)。

 義父母の介護については、昨日もパパ(夫)と話しましたが、実の両親と義理の両親という関係性の違いもあって意見が分かれることも少なくありません。でも、どんなことも話し合うようにしています」

介護生活になったらしてもらいたいことも具体的に準備

 そう遠くない未来、自分も“介護される側”になるという視点を持つことも、人生の最期の迎え方を考える上で重要だと思うようになった。

“私はこう思うよ”“こうしてくれたらうれしいな”と素直に気持ちを話し、相手の意見を素直に聞くことが、心地よい暮らしには必要ではないかなと。パパに快く介護してもらえるようなおばあちゃんになりたいから、そういうふうに過ごしていきたいと思っています

 さらに、介護生活になったらしてもらいたいことも具体的に準備している。例えば、食事。“これがあれば安心”という料理を夫に伝授した。

いざ介護が始まって“なんで作ってくれないの?”と言うのは違うんじゃないかなって。数年かけて、野菜スープと薬味たっぷりのそうめんの2品が作れるよう“夫教育”をしました。これで、私の介護食は安泰です(笑)

 いわゆる“終活”としては、家具を増やさないことを決め、持ち物も最小限に。必要以上のものは譲ったり、バザーに出すなどして整理した。元気でまだ若いと思えるときから、終末期を想像しての準備は悪くないと考える。

最近、お仕事先でも“足元に気をつけてください”と声をかけてもらう年齢になって(笑)。でも、言ってもらわないと確かに転んでしまうかも。“そんな年じゃない”なんて思わず、最期まで素直に“ありがとう”と言える人生を送りたいと思っています

取材・文/河端直子

大場久美子
'73年に子役として舞台デビュー。ドラマ『コメットさん』のほか、アイドル歌手としても人気を博す。心理カウンセラーなど100以上の資格を持つ。公式YouTubeチャンネルはほぼ毎日配信中。