2023年07月11日 09:50 弁護士ドットコム
親が高齢になってくると、子どもたちがお金の管理をすることはよくあるが、弁護士ドットコムには、親がもつ現金8000万円を子どもたちで勝手に「生前贈与」として分配しようとしているという事例が寄せられた。
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投稿によると、8000万円をもっているのは90歳近くの高齢女性で、認知症になることもなく元気だが、お金の管理は相続人である子ども2人がしているそうだ。
最近になって、子どもたちは慌てて相続税対策をしようと、この女性の了解を得ないまま、非課税枠の限度額である110万円を毎年分配しようとしている。
相続人とはいえ、本人の許可なく現金を得ることについて、法的な問題はないのか。新保 英毅弁護士に聞いた。
おばあさん(老親)の持っている現金はおばあさん自身の財産であって、生前贈与するかどうか、仮に生前贈与するとしてもいつ誰にいくら分配するかは全ておばあさん自身が決めることです。たとえ、将来相続する子どもであっても、おばあさん本人に無断で分配することは認められません。
そもそも本人にその気がないのに勝手に本人のお金を分配する行為は、「生前贈与」ではなく、刑法上は「横領」や「窃盗」と評価される行為です。刑法上、親子間の窃盗や横領は刑罰が免除されていますが、違法な行為であることには変わりありません。
なお、おばあさん本人が認知症になって自分自身で判断できなくなった場合であっても、勝手にお金を分配してはいけません。この場合は、家庭裁判所に成年後見の申立てをし、家庭裁判所が選任した成年後見人が本人の財産を管理することになります。
成年後見人は、管理する本人のお金を本人のために使うことになり、働けない子どもを扶養している等の特殊な事情がない限り子どもにお金を分配することはありません。
将来相続するのだから年老いた親のお金を自由にしてよいという考え方は間違っているでしょう。
【取材協力弁護士】
新保 英毅(しんぼ・ひでたか)弁護士
2004年弁護士登録。相続・遺産分割事件、中小企業の法務の案件を多く取り扱っている。モットーは「依頼者ひとりひとりに適したオーダーメイドのサービス」。
事務所名:新保法律事務所
事務所URL:http://shinbo-law.com/