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伸びた角が目に突き刺さったまま放置された羊、農場経営者が有罪に(ニュージーランド)

2023年07月11日 05:11  Techinsight Japan

Techinsight Japan

伸びた角が顔に突き刺さってしまった羊。農場経営者は治療を受けさせることなくそのまま放置していたことで有罪となった(画像は『SPCA New Zealand 2023年7月6日付「SPCA prosecutes man over ram’s ‘horrific’ horn injury」』のスクリーンショット)
このほどニュージーランドにて行われた裁判で、飼育していた羊の健康管理を怠ったとして農場経営者に有罪判決が下った。羊は角が伸びて、顔に突き刺さった状態で飼育されていた。ニュージーランドのニュースメディア『Newshub』などが伝えている。

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ニュージーランドのワイカトにあるハントリー地方裁判所で現地時間6月29日、地元の農場経営者アビテシュ・クマール(Abhitesh Kumar)に有罪判決が下った。彼は農場で飼育していたウィルトシャー・ホーン種のオスの羊1頭に対して、体及び健康的な管理、また羊が行動する上でのニーズを十分に満たしていなかったことを認めた。

この羊は、両方の角が内側に伸びて顔に突き刺さっていた。左の角は視界を遮るようにして目の上に刺さり、右の角は右目の奥に入り込み、眼球の裏側を突き破って目の外側に飛び出していたそうだ。当時撮影された羊の写真には、顔の両側から流血している痛々しい姿が捉えられていた。


この羊のことが公になったのは2022年2月で、地元住民からの通報を受けて「ニュージーランド動物虐待防止協会(SPCA New Zealand)」の検査官が査察に入ったことで明るみに出た。羊は頭を垂れた状態で絶えず首を振っており、方向感覚を失っているように見えたという。

当時、農場に査察に入った検査官は「羊の頭の周りにはハエが群がり、明らかにウジが湧いていた」と述べている。SPCAは羊が堪え難い痛みに苦しんでいると判断し、すぐに獣医を呼んで「羊の長い苦しみを終わらせるために」安楽死させ、アビテシュとその妻ラシュナ(Rashna)を起訴した。SPCAの暫定最高経営責任者(CEO)のロビン・キドルさん(Robyn Kiddle)は、このように語っている。

「この怪我は羊にとって激しい痛みを引き起こしていたと思われます。農場主がもっと早く行動を起こさなかったことは非常に残念です。これは伸びすぎた角によって引き起こされた恐ろしい怪我で、数か月と言わず数週間でも早く救うべきでした。農場主はそれを怠ったことで、この羊は痛みと苦痛に苦しむこととなったのです。」

アビテシュは当時、SPCAに対して「自宅から離れた場所で働いており、SPCAの検査官が来る2日前に農場にいたが、その時は羊の角には気づかず、いつも通り健康だと思って獣医による治療は受けさせていなかった」と話したそうだ。

またアビテシュの妻ラシュナも起訴されたが、有罪にはならなかった。なお彼女は2021年末に羊の角の状態に気づいていたと述べている。ラシュナはメディアのインタビューで「検査官が来る前の週に、獣医に羊の安楽死や角の除去の費用について問い合わせた」と語っているが、地元の2か所の動物病院が「彼女から連絡を受けたという記録は残っていない」と主張した。

有罪となったアビテシュには、向こう5年間は家畜の飼育を禁止され、100時間の社会奉仕活動と104.6豪ドル(約9980円)の賠償金、209豪ドル(約1万9940円)の起訴費用、さらに130豪ドル(約1万2400円)の法廷費用の支払いが命じられた。

画像は『SPCA New Zealand 2023年7月6日付「SPCA prosecutes man over ram’s ‘horrific’ horn injury」』『Newshub 2023年7月6日付「Waikato man charged over ram’s torturous horn injury」(Supplied/SPCA)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)