「最先端の音楽を作り出してきたキャリアや才能と、性加害に対する世間の厳しい目を自分のものとしてアップデートできるかどうかは別問題。山下さんも70歳ですから、『私の人生にとって一番大事なことは“ご縁”と“ご恩”』といっている。義理人情が先立つ気持ちも分からなくもないのですが」
シンガー・ソングライターの山下達郎(70)が先ごろ、自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組『サンデー・ソングブック』(TOKYO FM)で、ジャニーズ問題から発生した出来事に、自らの言葉でコメントした。冒頭の発言は、それに対する情報番組芸能デスクのもので、端々に“古き良き昭和世代あるある”というニュアンスが盛り込まれている。続けて、
「ツッコミどころが満載というか、自身の言葉で完全鎮静化できるとは思っていなかったと思いますよ。ジャニーズのタレントの音楽活動を応援することを明言しているし、自分の発言について『このような私の姿勢を忖度、あるいは長いものに巻かれていると解釈されるのであれば』とエクスキューズをしていることから、忖度と受け止められる可能性のあることは最初からわかっていたと思いますよ」
それでも山下は語った。語らないですますことができないくらい、対岸の火事ではなくなっていたからだ。
性加害が「本当にあったら許しがたい」
山下の所属する音楽プロダクション「スマイルカンパニー」が、音楽プロデューサーの松尾潔氏(55)との業務委託契約を終了したが、その理由として松尾氏が、ジャニー喜多川前社長の性加害問題について言及したことと告白。さらに「私をスマイルに誘ってくださった山下達郎さんも会社方針に賛成とのこと、残念です」といい、波紋を広げていた。
スポーツ紙芸能記者も、山下のラジオ発言に首をひねる。
「性加害については、『本当にあったら許しがたい』という、まだ本当かどうかに疑問を持っている。多くの元所属タレントが、勇気をもって告発しているのにもかかわらずです。山下は『今回の報道が出るまで噂でしかなくて』といってることから、噂を知っていたことになる。1999年の文春との裁判について『聞かされていない』としていますが、裁判というのは公のものですから、『聞かされていない』というのはちょっとピントがずれている。
自分は『いち作曲家・楽曲の提供者』と位置づけ、『性加害の事実について知る術はなかった』としていますが、多少は知るところとなった今、どう思うのか、どう考えるのか、ということをラジオ発言には期待していたんですけど、それはあまりなかったですね」
山下は「ジャニーさんの功績に対する尊敬の念」「ジャニーさんへの恩」「プロデューサーとしての才能」など、性加害者としての地金が表沙汰になりつつあってもなお、ジャニー喜多川前社長に対する賛辞を惜しまない。
「やはり義理人情なんですよ、山下にとって大切なのは。子供のころ山下は、浪曲、浪花節を聞いて育っているんです。お涙ちょうだい、義理人情の世界に子供のころにどっぷりつかって、それを大切にして成功を手にしたわけですから、恩に感じる人の性犯罪が暴かれようとも、手のひらを反すわけにはいかないのです」
レコード会社関係者は、山下の発言にそう理解を示す。
ラジオの最後、山下は「私の姿勢をですね『忖度』あるいは『長いものに巻かれている』とそのように解釈されるのであれば、それでも構いません。きっとそういう方々には私の音楽は不要でしょう」と突き放した。
不要だと感じる人にも、山下の音楽が届く、耳に入る季節は来る。年末、クリスマスシーズンのスタンダード『クリスマス・イブ』を今年、CM等で使う企業は出てくるのだろうか。