2023年07月09日 08:31 弁護士ドットコム
勤務先のドラッグストアの客から、「お前、バカだろう」などといつも怒鳴られることに傷ついた女性店員から、弁護士ドットコムに相談が寄せられました。
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この客は、自分の思い通りにならないとすぐに店員を怒鳴ったり、店員に年齢や子どもの有無を聞いて、「そんな若いときに子供を作ったのか。やることしか考えてないスケベ女だな」「そんなバカな女と結婚する男もどうせろくなやつじゃないんだろ」など暴言を吐いたりと、やりたい放題だそうです。
女性店員が店長に「出入り禁止」にできないかを相談しても、店長は「我慢するしかない」と動こうとしないそうです。このような店側の対応に問題はないのでしょうか。藥師寺正典弁護士に聞きました。
カスタマーハラスメント(カスハラ)については法的にどう位置付けられているのでしょうか。
「2020年6月1日に労働施策総合推進法が改正され、顧客等による著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)により労働者の就業環境が害されないよう、使用者には雇用管理上の配慮が求められることとなり、2022年4月からは中小企業にも同様の義務が課されています。
使用者には、厚生労働省の『事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針』や『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』も参考にしつつ、従業員の職場環境を良好に保つよう対応していくことが求められます」
今回の事例についてはいかがでしょうか。
「ご相談にあるように、店舗内で特定の顧客から他の顧客への暴言や女性従業員への性的暴言が認められる場合は、違法なカスタマーハラスメントや業務妨害に該当する可能性が高いと考えられます。
店舗側としては、雇用管理上の配慮措置として、従業員からの相談を受け付ける体制の整備やその適切な運用に加え、暴言を吐く顧客に対して店舗(会社)の方針を伝えて店舗内での暴言は控えるよう説明することや、暴言が繰り返されている場合は来店を控えるよう要請したり、警察への通報も検討されるべきといえます。
また、顧客対応は別の男性従業員が交代して行うことや、女性従業員の意向も確認して他店舗に異動するといった配慮も検討の余地があります。
従業員への配慮措置義務を怠った場合、使用者は行政指導等の対象になったり、従業員に対する安全配慮義務違反として損害賠償の責任を負うなど、法的な責任を負う可能性もありますので、使用者側としても慎重な対応が求められます」
【取材協力弁護士】
藥師寺 正典(やくしじ・まさのり)弁護士
中央大学法科大学院修了後、2013年弁護士登録。労働法制委員会(第一東京弁護士会)、日本CSR普及協会、経営法曹会議等に所属。主に、使用者側の人事労務(採用から契約終了までの労務相談全般、団体交渉、問題社員対応、就業規則対応、訴訟対応、労基署対応、労務DD等)、中小企業法務、M&A等の商事案件に対応。
事務所名:弁護士法人第一法律事務所(東京事務所)
事務所URL:http://www.daiichi-law.jp/