サービス業で働く人たちにも、客を選ぶ権利はある。失礼なことを言われたら毅然とお断りしてもいいのではないだろうか。北海道に住む30代前半の男性は、前職の温泉旅館で衝撃的なクレームをぶつけられた経験があるという。
それはコロナ禍前の2019年夏のこと。昼頃に高齢と思われる女性から電話があり、空き状況や予約の取り方などを案内していたところ、突然
「あなたの日本語おかしいわね、日本人?」
と不躾な質問をされた。相手は失礼な言動を続けたというが、男性はどんな対応をしたのだろうか。編集部では男性に詳しく話を聞いた。
「ご宿泊頂いたところでどんな難癖つけられるかわかりません」
そこは宿泊代金がひとり一泊1万円ほどで、10部屋程度のこぢんまりとした旅館だった。最初は予約の方法などのよくある問い合わせ電話だったのだが……。
「こちらの話し方がお気に召さなかったようで、声のトーンを落として『あなたの日本語おかしいわね、日本人?』と言われました」
相手の声には不信感がにじみ出ていたのだろう。思いがけない問いかけに男性が言葉を失っていると、
「なんか気分悪いわ。別の宿にするわ」
と捨てゼリフのようなことを言われた。男性は他の人と比べれば話が得意ではないという自覚があったため、衝撃は大きかった。
「非常にショックでした。こんなクレームを受けたのは初めてでしたし、そんなお客様がご宿泊頂いたところでどんな難癖つけられるかわかりません。『ご予約いただかなくて結構です。お断りいたします』とこちらから電話を切りました」
一瞬のうちに面倒なクレーマーであると判断し、きっぱりと拒否したのだった。
小規模の宿だったため、こうしたクレーマーへの対応マニュアル等はなかったが、同僚は男性の対応を肯定的にとらえてくれた。「断って正解だ」とフォローしてくれ、数日落ち込んでいた男性を気遣ってくれたという。
「スタッフの中で『受けて嬉しいサービス』をしようと接客を行っていましたが、ご予約を頂く前ですし、お断りをさせていただきました。ワケわからないお客様は困りますので……」
「しばらくの間、電話が鳴るたびにビクビクしていました」
スタッフ側から客をお断わりするのはなかなか出来ることではないだろうが、当時の思いを再びこんな風に語っている。
「スタッフに無視されたとか、無愛想な対応をされたのだったらお客様も文句を言っていいと思います。ただ、自分は楽しくお泊まり頂こうとお話をしていました。あんなことを言われたのでその時点からお客様ではないなと思い、このような対応をさせていただきました」
それでもこの出来事は、「多様性の時代にこんな言われ方をされて、しばらくの間、電話が鳴るたびにビクビクしていました」と男性の心に深い傷を残してしまった。
その後は、自分勝手なオーナーに不信感が募り心身を病んだため退職したという。「あのまま続けていたらコロナで客が少ないのはお前のせいだ!とかワケわからないこと言われそうで、いいタイミングで辞めれたと思います」と清々した様子で語った。
現在は別の仕事に就き、「どちらかといえばサービス業に近いところがありますが、お客様対応ではないので気楽に仕事をしています」と心境を吐露している。
「最近は外国の方がフロントに立つ宿をよく見ます。その方々が『日本人か』なんて酷いことを言われていないといいなと思います。自分は今でも電話は極力出たくないですね」
※キャリコネニュースでは「あなたが目撃した衝撃クレーマー」をテーマにアンケートを行っています。回答はこちらから。https://questant.jp/q/BNPYRIJ9