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三菱「デリカミニ」にスズキ「ジムニー」から乗り換える…それってあり?

2023年07月07日 11:41  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
スズキ「ジムニー」の現行型は発売から5年が経過しているにも関わらず、いまだに人気で納車には1年以上かかるといわれている。先代ジムニーオーナーの中には、乗り換えられなくて困っている人もいるかもしれない。そこで考えてみたいのが、三菱自動車工業「デリカミニ」への乗り換えだ。現行型ジムニーとデリカミニを比較してみる。


○先代「ジムニー」は20年続いたロングセラーモデル



筆者は先代ジムニー「JB23型」のユーザーだ。発売から20年間、フルモデルチェンジなしでスズキが売り続けたロングセラーモデルである。筆者所有の先代ジムニーは1998年式と最初期のモデルだったが、初年度登録から20年を経過してもなお大きな不具合がなかった。



しかし、さすがに20年も経過すると、オイル漏れを起こしたり、内装がやれてきたりと細かな不調は少なくなかった。そこで、現行ジムニー(2018年発表)に乗り換えるべく見積もりを取ったところ、納車まで1年8カ月もかかると言われてしまった。



噂には聞いていたが、そこまで時間がかかるとは思わなかった。結局、別のコンパクトハッチバックに乗り換えたのだが、やはりジムニーへの思いが断ち切れないでいた。


そんな折に発表されたのが「デリカミニ」だ。そもそもクルマとしての仕組みもスペックもジムニーとは異なるクルマだが、SUV的な軽自動車というコンセプトには近いものを感じる。自分が今でも先代ジムニーに乗り続けていたとして、はたしてデリカミニは乗り換えの有力候補になるのか。自分ごととして考えてみた。


○「デリカミニ」の快適性にはかなわない



発表直後から予約、注文が殺到しているデリカミニ。全高1,830mmのボディに広大な室内空間を備えるスーパーハイトワゴンで使い勝手は抜群だ。軽自動車としては大径タイヤといえる15インチタイヤ(165/60R15)を装着している(4WDのみ)ので、最低地上高もライバル達に比べると高い。段差のある路面や除雪されていない積雪路などでもスムーズに走行可能だ。



さらに、前後輪で回転速度をわずかに変えて、すべてのタイヤに駆動力を配分するフルタイム4WDを採用することで高い悪路走破性を獲得。チューニング精度を変更した専用のショックアブソーバーを採用し、走行中の路面からの衝撃をやわらげることで、安定性が高く乗り心地のいい走りを実現している。


使い勝手を見てみると、足先をスライドドア下部にかざすだけで、自動でドアの開閉ができる「助手席側電動スライドドア(ハンズフリーオートスライドドア)」が便利だ。スライドドアを全開にしたときの幅は650mmと広く、大型のクーラーボックスなどを持っていても素早く乗り込める。地面からステップまでの高さは400mm(4WDの場合)だから、子どもでも乗り降りしやすいだろう。トランクの開口高は1,080mmとかなり高く、間口も広い。後部座席を倒しておけば長尺の荷物も難なく積み込める。


そのほか、汚れても拭き取りやすい撥水生地を採用した座面シート、乗車人数や荷物の量に応じて変えられる多彩なシートアレンジなども魅力だ。

○極限の環境で走行することを想定した「ジムニー」



一方のジムニーはスズキ、いや日本を代表する本格SUVとして世界的な人気を誇る。現行型は2018年7月に登場した。

1998年にデビューした先代ジムニーが丸みを帯びていたのに対し、現行ジムニーは直線的で角張ったデザインとなった。これには、室内空間がより広く感じられるという効果もある。



デザインが高く評価されている現行ジムニーだが、伝統の悪路走破性にも全く妥協がない。新開発の「ラダーフレーム」(車体を支える骨格)を採用し、クルマのねじり剛性を先代比で約1.5倍も向上させているのだ。


車体とラダーフレームをつなぐ部分のゴムも新設計。車体の上下方向の動きに対して柔らかさが生まれ、乗り心地がよくなった。水平方向の動きに対しては硬さを維持し、操縦安定性を高めている。


ジムニーの室内は極めてシンプルなデザインだが、本格SUVらしさが垣間見える。例えば、ドア側に付いていることが多いパワーウインドウスイッチはシフトレバー付近のセンタースイッチにまとめられている。スズキの販売担当者からは「ドアに衝撃が加わったとしても、パワーウインドウスイッチを修理して付け替えなくてもすむように、ドアにスイッチを付けていない」と聞いた。岩場など、落石のある極限の環境で走行することも想定してのことだという。


デリカミニのようにスライドドアはないため、後席へのアクセスは悪い。むしろ、後席に人を乗せるというよりは、後席は倒しておいて荷室として利用するべきなのかもしれない。後席シートを倒せば352Lの荷室スペースが確保できる。ラゲッジスペースの開口部は横幅850mm、縦幅1,030mmあり、登山道具や大きめのボストンバッグ、ゴルフバッグなども問題なく積める。


○何を優先するか?



では、デリカミニと現行ジムニーのどちらに乗り換えるか。



悪路走破性という面でジムニーに軍配が上がるのは火を見るより明らかだ。しかし、そこまでの悪路を走行する機会がどれだけあるのかということは考えておかなければならない。筆者も自問自答を繰り返した。



もし、毎週のようにアウトドアを楽しむのならまだしも、月に数回、しかも比較的整備されたキャンプ場にしか行かない筆者のようなユーザーにとって、ジムニーはオーバースペックと言わざるを得ない。高速道路や幹線道路を使っての長距離移動が多いドライバーなら、デリカミニのほうが快適に乗れるはずだ。



現行ジムニーは後席へのアクセスこそ不便だが、一度乗り込んでしまえば快適だ。しかし、デリカミニのような広々とした居住空間は得られない。後席を筆者のように完全な荷室として割り切って使うのであれば問題ないが、3人以上で長距離ドライブに出かけるとなると厳しい。



ボディ形状を見ればわかるように、室内空間の快適性はデリカミニが圧倒的だ。しかし、それでもあえてジムニーを選ぶのは、いわゆるジープらしい本格SUVを体現するボディデザインと悪路走破性に惹かれるからにほかならない。逆に、ボディデザインと走行性能を妥協できるのであればデリカミニに乗り換えよう。



結論、3~4人で快適なドライブを楽しみたいのであればデリカミニで問題ないが、実質2人乗りでも構わないし、ボディデザインは絶対に妥協できないというのであれば現行ジムニーとなる。そうなれば気長に納車を待つしかないが、待つだけの価値がジムニーにはある。



室井大和 むろいやまと 1982年栃木県生まれ。陸上自衛隊退官後に出版社の記者、編集者を務める。クルマ好きが高じて指定自動車教習所指導員として約10年間、クルマとバイクの実技指導を経験。その後、ライターとして独立。自動車メーカーのテキスト監修、バイクメーカーのSNS運用などを手掛ける。 この著者の記事一覧はこちら(室井大和)