2023年07月06日 11:01 弁護士ドットコム
青森市の公園にあるスピーカーから、そこに生息するはずのない鳥の鳴き声が聞こえてくる——。
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市民から寄せられた指摘に、青森市は「鳥害対策」だと回答した。
花見の季節にはおよそ650本のソメイヨシノが咲き誇り、桜の名所としても知られる市営「合浦公園」では、約10年前からひっそりと猛禽類の鳴き声を流していたという。
10年もの間、特に指摘を受けることもなかった取り組みに気づいたのは何者なのか。(編集部・塚田賢慎)
今年5月、合浦公園の鳥の鳴き声について、青森市に「市民の声」が寄せられた。市のホームページで公開されているQ&Aを紹介したい。
【市民の声】 スピーカーから流れている鳥の鳴き声が気になります。「キョキョキョ」というヨタカの鳴き声、「ヒーヒー」というトラツグミの鳴き声、どちらも深い森林の夜の鳥の鳴き声です。海の公園にそぐわないと思います。スピーカーで流さなくてもウミネコ、イソヒヨドリ等、合浦公園は自然の鳥の声がいっぱいですよ。
【青森市の回答】 ご意見のありました猛禽類の鳥の鳴き声については、ウソによる桜の花芽の食害を抑制するため、また、春まつり期間中のカラスによるゴミの散乱を防ぐため、毎年3月下旬から4月下旬の午前7時30分頃から午前10時頃までの時間帯において、スピーカーにより流しているものです。放送を開始した平成26年からはウソやカラスによる被害が減っており、一定の効果があるものと認識しておりますので、何卒ご理解をいただきますようお願いいたします。
担当の公園河川課によると、合浦公園は市で一番古く、海水浴場もありながら桜の名所でもあり、青森市の代表的な公園だという。
このような問い合わせは初めてだという。
公園の指定管理者をつとめるNPO法人「パークメンテ青い森グループ」の千葉洋一会長は、2014年に鳥の声を流して以来、初めて指摘されたと驚く。
「ウソ(スズメの仲間)が桜の花芽を食べて、食べ殻が雪にちらばっている。そんな年は花が少ないと感じる。なんとかしたいと思っていました」(千葉会長)
猛禽類の鳴き声がウソ避けに効果があると聞いて、千葉会長は知り合いの音響業者から鳴き声の音声データを入手した。
公園の2カ所からスピーカーで流すと、食べ殻が落ちているのを見かけなくなったという。さらにカラス避けの思わぬ効果もあった。
「花見期間に客が残していったゴミをカラスがあさるので困っていたのんですが、カラスも鳴き声を聞いてビックリして逃げていく」(千葉会長)
市内では桜が咲く「野木和公園」でも鳴き声を流している。また、この音声データは、青森県むつ市の公園でも利用されているという。
1年に1カ月の間だけ、朝の数時間に限って流されるとはいえ、少なくない青森市民が実は耳にしているはずの「鳴き声」。
奥ゆかしい青森市も公園も10年間、特に広報していないのに、この人はよく気づいたものだ。
「鳥害対策としてニュースに取り上げられた記憶もない。たしかに海の公園にはふさわしくない鳴き声なんです。気づいたのはきっと鳥のことが好きな方ですよね」(千葉会長)
公園河川課は「回答後に、提言してくれた方から問い合わせはないため、おそらく納得してくださったんだと思います」と推測した。