トップへ

大谷翔平、WBC映画で発覚した長嶋茂雄を超える“ド天然行動”について脳内科医に真剣に聞いてみた

2023年07月04日 07:00  週刊女性PRIME

週刊女性PRIME

大谷翔平 写真/共同通信社

「俺のグローブどこ?」

 今年3月に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の裏側に密着したドキュメンタリー映画『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』。観客動員数85万人を突破し、7月1日から『Amazonプライム・ビデオ』で配信がスタートした作品のラストは、冒頭の大谷翔平の言葉で締めくくられ、映画館で鑑賞したファンからはこんな声が聞こえてきた。

バットに心臓マッサージ

「二刀流で活躍し、決勝のアメリカ戦では最終回に登板して胴上げ投手になった大谷選手の勇姿を見に行きました。優勝が決まった瞬間、興奮のあまりグローブと帽子を投げて喜びを表現していましたが、歓喜が少し落ち着くと、自分で投げたグローブを必死に探す姿が。その天然行動が映画のラストシーンにあり、観客からは笑い声が上がっていましたね」

 ネット上には《大谷が天然だということを思い出させてくれた映画》といった感想も。大谷の天然行動はこれだけではないようで。現地で取材をするスポーツライターの梅田香子さんに話を聞くと……。

「コロナ禍でのリモート会見では、回線の影響で記者からの質問が聞き取れないと変顔をよく見せていました。不調のとき、バットに心臓マッサージをしていたのも天然さがうかがえる行動ですよね」

 大谷の天然エピソードはまだまだある。

「昨年、オフシーズンの様子を『フライデー』が報じたときには、迎えに来た車を間違え、違う車に乗り込もうとする姿が目撃されていました。また、'21年のホームランダービー後、クーラーボックスの上に座った大谷選手は、水分補給をするためクーラーボックスを開けようとするも、自分が座っているため開けることができず。

 それでも必死になんとか開けようとする姿が、現地のファンの間でも話題になりました。さらに、チームメートが試合後にテレビの取材を受けているにもかかわらず、カメラの前を横切り、怒られるといったこともありましたね」(現地メディア関係者、以下同)

 真剣勝負の試合中にも天然っぷりは抑えきれず。

「ポケットが外に出たままプレーを続けたこともありました。ピッチャーとしてマウンドに立ったとき、いつもはベンチに置いている走塁用の手袋をポケットに入れたまま投球をしたことも。ベルトがねじれたまま打席に立つことも何度かあり、その状態でホームランを打っていました。こうした大谷の行動にチームメートらがこらえきれずに笑ってしまうこともしばしば。真剣勝負で笑ってはいけない状況ですが、チームメートを笑顔にしています」

天然すぎる“長嶋茂雄伝説”

 “天然伝説”は日本ハム時代やプロ入り前にも。

「'16年にリーグ優勝を決め、記念撮影をしているとき、チームメートが大谷選手に向かってゴミのようなものを投げてイタズラ。大谷選手は犯人にまったく気づかずに周囲をキョロキョロと見回していました。試合中のベンチでも同じようなイタズラをされ、何が起こったのかわからず、不思議そうな表情を浮かべている様子がカメラに映ったことも。

 さらに、日本ハム時代の監督でWBCでも一緒に戦った栗山英樹さんは大谷選手について、“野球に関しては完璧。だけど、普段は本当にマイペース”と証言していました。小学生のころは休み時間が終わったことに気がつかずに遊び続けて、授業に遅刻。先生に怒られることもよくあったようです。また花巻東高時代は、寮から急いで出ようとしたときに、身長が高いこともあり、ガラスに頭をぶつけて割ってしまったそうです」(スポーツ紙記者、以下同)

 次々に天然エピソードが出てくる大谷。野球選手では、“ミスター”こと長嶋茂雄も天然として知られている。

「ソックスが片方しかないと探していたら、左足に2枚重ねてはいていた、球場に連れてきた息子の一茂さんの存在を忘れ、試合後に一茂さんを置いたままひとりで帰宅してしまう、試合前の練習で気合を入れすぎたのか、試合前を試合後と勘違いして、そのままシャワーを浴びて帰宅しそうになったなど、“長嶋伝説”は数々あります」

天然キャラたちの特徴

 2人ともスター選手だが、どこか天然なのはなぜなのか。脳内科医の加藤プラチナクリニック・加藤俊徳院長に話を聞いた。

「いわゆる“天然キャラ”と呼ばれる人たちは、集中力の波の高低差が大きいということがいえます。このような人たちは、過度に集中しすぎてしまったり、その後はボーッとしたりと、落差が激しくなります」

 スポーツに大切な臨機応変さにも優れているようだ。

「その場の状況に反応して、自己表現をするのが得意な傾向があります。スポーツなど、多くの人が集まって行動するときに、一般的な人は他の人と同調します。一方で、天然キャラの人たちは同調しつつも自分らしさを出すことができます。見方を変えれば、臨機応変に対応できるということで、スポーツにおいては重要な能力、それが卓越しているのです。過去の記憶や経験したことに依存せず、その場でどうやったらうまくできるか、ということを考えて行動する創造性が高いのだと考えられます」(加藤先生、以下同)

 天然キャラの人たちには、ほかにも特徴がある。

「手順に従うのが苦手な傾向があります。一般の人は、手順を教えられたらそのとおりにやります。しかし、天然キャラの人は自分の脳が最大限の働きをするように自己流のアレンジをしてしまうのです。こうした自分の脳の最大限のパフォーマンスを出そうとすることが、スポーツなどの場においての結果につながっていきます」

 これには脳の発達が関係してくるようだ。

「無数の神経細胞が集積している脳は、同じような働きを担う神経細胞同士が集まって、成長していきます。人によって能力の長所と短所は違ってきますが、天然キャラの人たちは、この強みと弱みの差が激しいと私は考えています。平均より突出した部分があれば、反対に平均以下なことも。そうした脳の成長の極端な違いが、天然スター選手にはあるのだと思います」

 野球では前人未到の記録を打ち立てていく一方、凡ミスもする大谷。そのギャップも愛される要因なのだろう。

梅田香子 スポーツライターとして、野球以外にもフィギュアスケートやバスケットボールなど多くのスポーツに精通。現在はアメリカに在住し、大リーグを中心に取材活動を行う

加藤俊徳 脳内科医。加藤プラチナクリニック院長。独自開発したMRI脳画像法を用いて、子どもから104歳まで、1万人以上の脳を診断、治療。『すごい脳の使い方』(サンマーク出版)など著書も数多い