マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がF1第10戦オーストリアGPを制して、第5戦マイアミGPからの連勝を「5」に伸ばし、今シーズン7勝目を挙げた。
金曜日の予選でポールポジションを獲得し、前日のスプリントを制しているフェルスタッペンが、今年のレッドブルリンクで最速のドライバーであることは、レースが始まる前から誰もがわかっていた。
しかし、レースは必ずしも速いドライバーが勝つとは限らない。アクシデントやハプニングが起きたタイミングでどの位置を走っているのか。そして、そのとき、どんな判断を下すのかによって、戦力が変化することがあるからだ。
この日のレースで、14周目にニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)がマシントラブルでコース脇にマシンを止めたことで出されたバーチャルセーフティカー(VSC)が出たタイミングがまさにそうだった。
フェルスタッペンの後方を走っていたふたりのフェラーリドライバーはすぐさまそろってピットインした。VSCやセーフティーカー(SC)が出た場合、走行速度が制限されるため、ピットストップによるロスタイムが軽減されるからだ。
しかし、レッドブルはフェルスタッペンにステイアウトを命じて、コースにとどまった。
フェルスタッペンがピットインしたのは、それから9周後の24周目。そのとき、レースはVSCもSCも出ていなかったため、フェルスタッペンのピットストップロスタイムはフェラーリに比べて大きくなり、結果的にフェラーリ勢2台の後塵を拝することになる。
これにより、マイアミGPの48周目から続けていたラップリーダーの座は248周でストップとなり、ラップリーダーはルクレールに渡った。
しかし、フェルスタッペンは動じなかった。
「僕にとって最も重要なことは、最終的にトップに立ってチェッカーフラッグを受けること。僕たちには速いマシンがあったから、あのときは自分たちのプランに従うのがベストだったと思う」
チームの戦略を信じたフェルスタッペンは、ピットアウトした翌周の26周目にカルロス・サインツ(フェラーリ)をオーバーテイクし、その9周後の35周目にシャルル・ルクレール(フェラーリ)も抜いて、実力で定位置の座を取り戻した。
トップに戻ったフェルスタッペンは、その後も後続を引き離し続け、もう一度ピットインしても逆転されないギャップを築く。それを確認すると最後にエキストラピットインを敢行。ファステストラップを獲得して、スプリントフォーマットの週末を完全制覇した。
チーム創設者のディートリッヒ・マテシッツが亡くなってから初めて開催されるチームのホームレースとなった今年のオーストリアGP。見事な逆転勝利を飾ったクリスチャン・ホーナー代表はこう語った。
「ライバルたちとは明らかに違う戦略を取ったので、マックスはコース上でオーバーテイクをしなければならなかったが、見事にやり遂げた。最後のピットストップもリスクが伴うが、ディートリッヒの信条は常に “ノーリスク、ノーファン”。彼の情熱とスピリットがあったからこそ、私たちは今日ここにいるのだし、彼には多くの借りがある。この勝利をディートリッヒに捧げる」