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アフターピル、やっと今夏から試験販売 全国335カ所の薬局、「少ない」の批判も

2023年07月02日 08:31  弁護士ドットコム

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性交後72時間以内に服用すると約8割の確率で妊娠を回避できる「緊急避妊薬(アフターピル)」が今夏にも、一部薬局で処方箋なしで販売される。利用の実態調査・研究のための試験的な運用で、厚生労働省が6月26日、決定した。


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アフターピルのスイッチOTC(一般用医薬品等)化を巡っては、2017年に厚労省で議論されながら見送りになった経緯がある。2021年から再検討が始まり、2022年末から2023年1月までのパブリックコメントには約4万5000件の賛成意見が寄せられていた。



今回の運用を前進ととらえる向きがある一方、厚労省の議論では、薬事承認を経て実際にOTC化するまで「最低でも2年」という指摘もあった。早期の実現を求めてきたNPO法人ピルコンの染矢明日香理事長は「先延ばしによる弊害のほうが大きい。この議論の間にも女性の権利が侵害され続けています」と訴えている。



●事例を何件集めて調査するかは未定

現在、緊急避妊薬を入手するには医師による診察と処方箋が必要で、土日や深夜の対応が困難なことや価格が1万5000円程度と高額なことが指摘されていた。



夏から試験的に販売する薬局は以下の4つの要件を満たすことが必要で、これまで実績のあるところを中心に、最大335カ所を見込む。



①オンライン診療に基づく緊急避妊薬の調剤の研修を修了した薬剤師がいる
②夜間及び土日祝日の対応が可能
③プライバシー確保が可能な販売施設(個室等)がある
④近隣の産婦人科医、ワンストップ支援センターとの連携体制を構築できる



厚労省は薬局の販売実態や、購入者のアンケートを通して調査・分析するが、事例を何件集めるかは決まっていないとする。これに対し、医薬業界の専門家らでつくる検討会では「例えば10件では意味がない。一定のn数のメドが必要」「プライベートなことにどれだけ答えが集まるのか」といった意見が相次いだ。



●薬局の販売状況や購入者アンケートで事例集め

調査は夏頃から始め、2024年3月末を予定している。しかし集める事例数の目標を定めていない上、薬事承認には少なくとも2年ほどかかるという意見もある。一歩進んだはずの運用の後、再び購入できない「空白期間」が生まれるのではないかとの指摘もされる。



そもそもスイッチOTC化のプロセスは、医師や学会の専門家らが参加する検討会やパブコメを経た後、製薬企業が薬事承認の申請をし、薬事・食品衛生審議会が判断する。いくつもの段階を経るため、多くの時間がかかる。試験運用が決まるまでも2年かかっている。



染矢さんらは2020年に「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」を設立、厚労省への要望などの活動を展開してきた。既に3年以上が経っており、喫緊の課題ということが伝わっていないと疑問を呈する。6月23日には緊急会見を開き「当事者のためというよりも検討会の委員を納得させるものになっている」と検討会のあり方についても批判した。



同プロジェクトの福田和子さんも「試験運用がガス抜きにされたら困る。具体的な時期を示してほしい。パブコメで緊急避妊薬は『最後の希望』と書いてくれた人たちの思いを踏みにじらないで」と訴えた。



厚労省の担当課長は「空白期間」が生まれる点について6月26日の記者からの質問に対し「状況に応じて試験的運用を3月末以降も延長し、承認申請と並行していく可能性もある」と話した。