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【漫画】働けるならどこでもいい……“夢のない職場”で出会った「スーパーマン」とは? 日常が輝き始めるSNS漫画を読む

2023年06月30日 07:30  リアルサウンド

リアルサウンド

『働く!スーパーマン』より

 誰もが憧れの仕事に就けるわけではないし、多くの社会人の日々はキラキラしたものだとは言い難いかもしれない。夢も目標も持つことができず、「自分は主人公ではない」と思ってしまう人も少なくないだろう。そんななか、Twitter上で公開された創作漫画『働く!スーパーマン』を読むと、なかなかスポットライトが当たらない世界にも“スーパーマン”はいて、自分もそうなれるんだという勇気がもらえる。


(参考:漫画『働く!スーパーマン』を読む


 「働けるなら、どこでも良かったんだ…」夢も目標もなくスーパーマーケットに就職した、新入社員の吉岡祥太。業務に身が入らない吉岡は仕事でミスをしたり、パートで働く女性に無神経な発言をしたり、粗相が目立つ。それでも店長の三田をはじめ、同僚たちは吉岡を見放さずに声をかける。吉岡の気持ちが徐々にほぐれていた時、スーパーの催事に向けた商品の発注を忘れたことに気付いて――。


 本作を手掛けたのは、コロナ禍をキッカケに友人や家族にも会えなくなり、「今こそ本当にやりたいことをやろう。漫画に向き合おう」と思い立ったという、多喜ざわゆきさん(@zwzwyk)。「仕事」について考えさせてくれる本作をどのようにして描いたのかなど、話を聞いた。(望月悠木)


■実際にスーパーでの勤務経験アリ


――『働く!スーパーマン』はスーパーマーケットが舞台の作品でしたが、多喜さん自身はスーパーでの勤務経験はあるのですか?


多喜:2年弱と短いのですが、実際に売場に立って働いたことがあります。現在は販売促進の仕事をしています。


――では、登場人物も実際にモデルがいたのですか?


多喜:はい。全員モデルがいます。新入社員時代の自分や、店長をはじめと、今までに出会った職場の人達です。実際に言われた言葉も作中に入っています。


――就職氷河期という設定でしたが、これも多喜さん自身が経験されたことでしょうか。


多喜:そうです。就職した時期は氷河期でした。当時は「漫画家になりたい」という夢に挫折して、吉岡と同じく「働いてお金がもらえるならどこでもいいや」という気持ちで中小企業ばかりを受けていました。


――吉岡同様のモチベーションだったのですね。


多喜:その通りです。後ろ向きなスタートで、配属された店舗が激務だったこともあり、大変でした。


■「そろそろ成仏させたい」


――今回『働く!スーパーマン』誕生の経緯を教えてください。


多喜:本作は『ちばてつや賞』に向けて制作しました。アイデア自体は新入社員の時に考えたのですが、「漫画を描く時まで仕事を思い出したくない」と思って長い間放置していた話でした。ただ、「そろそろ成仏させたい」と思って描き始め、友達にアシスタントを依頼して、夏季休暇も使って1ヶ月半で完成しました。結果は期待賞でしたが、なんとか形にできて良かったです。


――中野の「きっと勇気が要ったと思うの」、萩原の「一緒にやれば早いでしょ?」など、何気ないセリフに優しさを感じました。セリフ選びで意識したことは?


多喜:一方的に叱ることはできても、相手の立場に立って考えてみることは、簡単ではありません。たった一言で勇気付けられたり、励まされることがある。私自身そんな経験があって、誰かに対してもそうでありたいと思って選びました。


――悩みを相談する場、息抜きの場など、現在では忌避されがちな“飲みニケーション”についても、魅力的な側面が描かれていました。


多喜:飲みの席は、普段仕事では分からない相手のことを知る楽しみもありますが、同じ「仕事」という話題で悩みや愚痴を共有できる、息抜きの場と思っています。「自分だけじゃないんだ」とホッとしますし、「明日もまた頑張ろう」と思わせてくれます。否定的な意見もわかりますし、確かに友達作りに仕事しているわけではありません。ですが、良好な人間関係を築けるかどうかで、お互いにとって働きやすさが変化するため、多少なりとも必要な営みのようには思っています。


――最後に今後の展望など教えてください。


多喜:現在新作を制作しており、今回『働く!スーパーマン』を読んでくれた人にも楽しんでもらえればと思います。また、ドキドキ、ワクワクしてもらえる話を描けるように精進します!


(取材・文=望月悠木)