《私たちBiSHは2023年で解散します》
'23年6月29日をもって、アイドルグループ・BiSHが解散する。
解散するBiSHのデビュー前のコンセプト
BiSHは2015年に結成し、2016年にメジャーデビューを果たした。現在のメンバーは6人で、“楽器を持たないパンクバンド”という肩書で活動をしているものの、本格デビュー前のコンセプトは“新生クソアイドル”だった。
異色なコンセプトを掲げて活動していた彼女たちはパフォーマンスの内容も、他のアイドルとは一線を画している。デビュー曲『BiSH-星が瞬く夜に』のMVではメンバーが馬糞にまみれる場面があったり、ライブでは、スクール水着姿で楽曲を披露し、そのまま客席にダイブするなど、“アイドル”らしからぬ行いでファンを驚かせてきた。ちなみに、彼女たちのファンは、“クソを掃除する人たち”の意で“清掃員”と呼ばれている。
破天荒な部分にも注目が集まっていき、2017年には、“出演するのが夢だった”と語っていた『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演し、今年1月には武道館でのライブ開催を果たした。6月29日のラストライブは“私たちの夢の場所”と語った東京ドームで行われる。
そんな彼女たちの魅力を音楽ライターの宮本英夫さんに聞いてみた。
「BiSHは確かに過激なパフォーマンスをしていて、いわゆる“地下アイドル”っぽい雰囲気がありますが、突拍子もないことをするだけではなくて、グループの土台となる楽曲がとにかくいいんです。女の子の生き方や、夢を追いかける姿など、過激なイメージとはギャップのある、真っ当で熱い歌詞に惹かれているファンも多いと思います。彼女たちがデビューしたときは、アイドルといえば清楚で可愛く、大人しいといったイメージがあったので、髪の毛を振り回したり、大声で叫んだりといったことをしていた彼女たちがでてきたときは、音楽界もざわつきましたね」
王道アイドル”のカウンター的な存在となったBiSH
想いのこもった楽曲を過激なパフォーマンスにのせて表現することで、“王道アイドル”のカウンター的な存在となったBiSH。特に注目するべきは、ロックバンドメンバーなどにもファンが多いという、ライブパフォーマンスだ。
「ツアーをぶっ通しで行い、1年に何十公演もこなすほど、ライブは彼女たちの命。BiSHのライブは、いい意味で“暑苦しい”ので、ファンとメンバーが全員で“ウォー!”と一体感が出て盛り上がれるのが魅力です。パンク、ロック、アイドル、どんなジャンルでもくくれない、BiSHという新しいジャンルを生み出して、間違いなく音楽界に刺激を与えてくれたアーティストとなりました。“地下アイドル”たちも、彼女たちの活躍に勇気づけられているのではないでしょうか」
音楽界に影響を与えるほど人気となった彼女たちの解散は、実は、大人たちが描いた“美しすぎる”ストーリーが理由だった。BiSHのプロデューサー・渡辺淳之介氏は、“一番輝いているときに解散する”という美学を持っており、彼女たちの前身グループBiSも同じようなタイミングで解散している。
BiSHメンバーは、過去のインタビューなどで、渡辺氏から解散の決定を聞かされた際の気持ちとして“ショックで泣きました”といった正直な気持ちを吐露することも。また、初めは納得できなかったと前置きしたうえで、“BiSHは普通のグループではないし、何が正解で不正解かということがないグループ。渡辺さんの気持ちを感じながらBiSHとしての気持ちを表明しました”と語った。
This is BiSH
それでも、プロデューサーの想いを受け入れ、“これがBiSHだ”と、最後まで自分たちのBiSHを体現。解散を発表した2021年から“BiSHからの4つの約束”として、12か月連続リリースや、ベストアルバムの収益を寄付した全国ライブハウスツアーなどを行い、ラストライブまで全力で駆け抜けてきた。
この“有終の美”について、宮本氏は“BiSHらしい”とも語る。
「こんなに人気があるのに、辞めてしまうというのは潔くて、カッコいい。限られた時間の中で、爆発させることができたと思います。グループは解散になりますが、彼女たちは既にソロとしても個々の魅力を発揮しています。ファンの方は寂しいかもしれませんが、これからはそれぞれの活動を見られるという意味で“楽しみが6倍になる”と考えてもいい。これからの活躍も楽しみにしていきたいです」
6月29日の解散公演まで、あまり日はないけれど、今からBiSHを楽しみたい人はどうしたらいいのか。
「やっぱり、まずは曲を聴いてほしいですね。オススメは、彼女たちの熱量が存分に感じられる、『オーケストラ』や『プロミスザスター』。ラストシングル『Bye-Bye Show』も、週刊女性の読者の方たちにぜひオススメしたいです。収録曲は、THE YELLOW MONKEYが演奏に参加しているので、BiSHを知らない方でも、意外なコラボが楽しめるんじゃないかなと思っています」
波乱万丈なグループ人生だったけど、最後までBiSHを応援したい。“清掃員”の心から、BiSHへの想いが消えることはない。