今春から『くりぃむナンタラ』(テレビ朝日系)が日曜から水曜へ移動し、放送時間は60分から30分へと短縮された。同局の『激レアさんを連れてきた。』、『ロンドンハーツ』も昨年4月に60分から30分に変更。フジテレビ系の『突然ですが占ってもいいですか?』も54分だった放送時間が昨年より40分となっている。
「民放各局のドラマ枠が増加傾向なので、そのぶんバラエティー番組が短時間になったり消えたりということもあるのかもしれません。TVerなどでの配信ではバラエティーよりドラマの再生回数が好調だということも影響して、各局がドラマ番組を重視しています」
と、解説してくれたのはメディア研究家の衣輪晋一さん。TVerは3月に動画再生数が月間3億回を突破し、ユーザー数も右肩上がり。各局とも配信を重視する傾向に。
重要なのは「コアなファン」
「TVer以外にもさまざまな配信メディアが登場したことにより、テレビの制作スタッフは試行錯誤している状況でしょう。ドラマも、’19年に日本テレビ系で放送された『俺の話は長い』はプライムタイムで異例の“30分を2話”という構成で制作。新しい試みが話題になりました」(衣輪さん、以下同)
若い世代はTikTokなどの短い動画を見慣れているため、時間短縮しているのでは?
「それも考えられますが、YouTubeでも1時間を超える動画で視聴回数を稼げているコンテンツはあります。テレビ番組でもTBS系の『水曜日のダウンタウン』や日本テレビ系の『踊る!さんま御殿!!』は60分番組ですがTVerでの再生回数は上位。バラエティー番組の配信で重要なのは、番組の長さよりコアなファンがつくかなんです」
それを裏付けるように、TVerで再生回数の多いバラエティー番組はほぼ固定化されており、各番組にはコアなファンがいると推測されるものが多い。
“力が抜けた笑い”に支持が
「地上波では“たまたまやっていたから見た”という視聴者も多いですが、“見たい人が見る”というのが配信の特徴。朝日放送テレビ・テレビ朝日系列の『相席食堂』は視聴率はイマイチですが、配信の再生数はローカルバラエティー番組において1位になるなど、ここ数年、好調です」
いつも配信で見るコアなファンがいるということ。
「プラットフォームが増えたおかげで、番組で入りきらなかった部分をスピンオフとして配信することもできる。だから、短時間のバラエティー番組が数多く制作されるのでしょう」
『相席食堂』の成功はいわゆるファミリー層による“コア視聴率”を重視するきっかけのひとつとなった。
これからファンを獲得するには、視聴率にとらわれない“尖った”内容が必要。深夜枠などで実験的なものが増えるのかも。
「重要なのは、若手芸人の起用やスタッフの育成。千鳥も『相席食堂』がきっかけで “力が抜けた笑い”がさらに支持されるようになった。まだ知られていない実力のある芸人は多いので、チャンスともいえる流れでしょう」
同様に、制作側も若手クリエイターが起用されやすい環境になりつつある。新感覚の芸人番組が増えて激戦になりそうだ。
きぬわ・しんいち メディア研究家。雑誌『TVガイド』やニュースサイト『ORICON NEWS』など多くのメディアで執筆するほか、制作会社でのドラマ企画アドバイザーなど幅広く活動中