《名誉棄損で罰金払うことになる人とか本当に恥ずかしいよな…。家族に「お父さんは会ったこともない人の悪口をネットに書いて訴えられたから貯金なくなったごめんね」とか言うの想像するとさ》
2017年、ツイッターにこう投稿していたのは、はあちゅうこと伊藤春香氏だ。
そのはあちゅう氏に損害賠償を求めた裁判の判決が、6月14日、東京地裁であった。裁判長は、原告A氏への慰謝料など計11万円をはあちゅう氏に支払うよう命じる判決を言い渡した。
「はあちゅう氏は、慶應大学在学中に《クリスマスまでに彼氏を作る》《世界一周旅行をタダでする》などの企画でカリスマブロガーとして人気を集めました。近年ではブログのほかにツイッターやインスタグラムを活用して“人生全部コンテンツ”をモットーに情報発信をする、人気インフルエンサーのひとりです」(スポーツ紙記者)
「はあちゅうに酷いなりすましアカウントを作られた」
そんな彼女に賠償命令とは、いったい何があったのか?
「ことの発端は2022年10月まで遡ります。ツイッターに投稿された内容により名誉が毀損されたとして、はあちゅう氏が50万円の損害賠償を求めてA氏を提訴。はあちゅう氏が問題視したのは、A氏が投稿した6件のツイートです。しかし、そのうち1件の投稿について、A氏が“ある証拠”を提出したところ、はあちゅう氏はその投稿への請求を放棄したのです」(WEBメディア編集者、以下同)
はあちゅう氏が賠償請求を放棄したA氏の投稿は、
《そういえば、はあちゅうに酷いなりすましアカウントを作られたことがありましたことがありましたね…》
という内容だ。
人気インフルエンサーであるはあちゅう氏が、まさか誹謗中傷するA氏の“なりすまし”などするはずがない……と思いきや、
「A氏は、その“なりすましアカウント”作成時に登録されたメールアドレスが、はあちゅうの電話番号と紐づけられていることを特定し、裁判所に証拠として提出します。
このなりすましアカウントには、A氏の本名、顔画像、出身地、血液型、職務経歴などのほか、A氏のSNSなどが投稿されていました。はあちゅう氏がそのツイートに関する請求を放棄したため、A氏は“不当訴訟によって損害を受けた”として、はあちゅう氏に330万円の損害賠償を求め、新たに提訴したのです」
つまり、はあちゅう氏は“自身がした行為に対する投稿”を“名誉を毀損する投稿”であるとして、A氏を訴えていたのだ……。
はあちゅう氏自身が賠償金を支払う日
「こうした経緯があって、A氏が“なりすまされた”と訴えた裁判では、はあちゅう氏に賠償を命じる判決が下され、彼女が敗訴したというわけです。はあちゅう氏も“なりすまし”行為を忘れていたのか、それとも事実を捻じ曲げて訴えたのかはわかりませんが」
冒頭の投稿にあるように、はあちゅう氏もまさか自身が賠償金を支払う日がくるとは夢にも思わなかったはず。
「ただ、はあちゅう氏が名誉棄損でA氏を訴えた裁判は、昨年12月にA氏の投稿内容で6件中3件に違法性が認められ、A氏に40万円の支払いを命じる1審判決がくだされています。はあちゅう氏の自宅が特定できる情報を投稿したことによるプライバシーの侵害や、A氏がはあちゅう氏に向けて“死ね”と書いた投稿による名誉棄損が認められました。しかし、A氏は控訴。この裁判は現在も継続しているのです」
はあちゅう氏は、これらの裁判についてどう考えているのか。話を聞こうと連絡すると、
「お問い合わせいただいた件につきましては、担当弁護士が近日中にYouTubeで動画を公開予定です。係争中につき、本人から個別メディアに対してのコメントはできかねます」
とのこと。その後、はあちゅう氏の代理人弁護士が裁判について説明する動画を公開。代理人弁護士は、動画でA氏やその関係者に謝罪の言葉を述べたうえで、大まかに次のような説明をした。
「はあちゅう氏は、誹謗中傷に関して謝罪や和解の連絡を受ける窓口を設置していたのですが、そこにA氏の本名などが記された匿名の情報提供があった」
そこで秘書は、提供された情報の真否を確認するため、なりすましアカウントを作成した。このA氏に関する情報が真実なら、A氏が運用するアカウントに何かしらの動きがあると考えたという。
「ただ、はあちゅう氏はA氏のなりすましアカウントが作成されたことは知らなかった。それが裁判で発覚したため、はあちゅう氏が秘書に聞き取りをしたら、一連の流れが判明。はあちゅう氏は、裁判で事実の説明をしたうえで“私がやったとして法的評価をしてもらってかまいません”と主張をしたのです。なので、判決文では、はあちゅう氏がなりすまし行為をしたと端的に認められている」
かつてはあちゅう氏がツイッターに綴っていたこと
一方で、なりすましアカウントを作られたA氏は何を話すのか。代理人弁護士に問い合わせると、
「取材はお断りしております」
と話すだけだった。
はあちゅう氏は、2020年にツイッターでこう綴っている。
《私は17年前にネット活動を始めてから、ずっと誹謗中傷の被害に苦しんでいたけど、去年の6月にやっと初めての裁判を起こした。お金も時間もものすごくかかる上に、特定できないことも多い。誹謗中傷は明確に犯罪だという考えが社会に広まってほしい》
こうした思いから、インターネット上の誹謗中傷と戦ってきたはあちゅう氏。
「そんな彼女だからこそ、仮に秘書がした行為であろうと、今回の“なりすまし行為”は残念です。ただ、はあちゅう氏が敗訴した裁判の判決文を読むと“なりすましアカウントを作成した背景にはA氏がはあちゅう氏を執拗に観察し、そのプライベートな情報を投稿していた”とする事実を、裁判所は考慮しています。そもそも、はあちゅう氏への誹謗中傷がなければ、こうした“なりすまし”もする必要はなかったはず。今もSNSに横行する誹謗中傷が根本的な問題なのだと思います」(広告代理店関係者)
よりよい社会にするために、考えなければ――。