トップへ

レインウェアの代名詞「K-WAY」の日本戦略 八木通商とのパートナーシップで得たものとは

2023年06月28日 16:52  Fashionsnap.com

Fashionsnap.com


ロレンツォ・ボリオーニ(Lorenzo Boglione)

Image by: BasicNet SpA
 レインウェアの代名詞として世界中から支持され、ラグジュアリーブランドとのコラボレーションも展開する「ケーウェイ(K-WAY)」。日本では2022年から八木通商をパートナーに迎え、さらなる成長を目指している。八木通商とのパートナーシップから得たものとは? そして数年ぶりの来日で感じた日本の印象とは? ケーウェイCEOで親会社BasicNet SpAの取締役を務めるロレンツォ・ボリオーニ(Lorenzo Boglione)氏が語るケーウェイの展望と日本市場の可能性。


ラグジュアリーブランドからも選ばれるウィンドブレーカーの魅力
 ケーウェイは1965年にフランス・パリで誕生。レインウェアとしての機能性だけではなく、創業者のレオン・クロード・デュアメル(Leon-Claude Duhamel)が目指した「コンパクトで、⾼い防⽔性を備えたお洒落なデザイン」が世界中で支持され、フランスでは国民的ブランドと位置付けられている。イタリア語とフランス語の辞書ではブランド名がレインウェアの代名詞として掲載されているという。2020年からはハイエンドライン「R&D」をミラノコレクションで発表するなど、ファッションブランドとしての訴求も強化している。

 2004月からは「カッパ(kappa)」や「スペルガ(SUPERGA)」を擁するイタリア証券取引所上場企業のBasicNetグループがケーウェイを運営。ロレンツォCEOはケーウェイについて「クラシックでありながら現代的で、機能性とカラフルなラインナップを備えたプロダクトです。アイデンティティに忠実でありながらもブランドとして進化し続けているのも、ケーウェイの魅力だと思います」と語る。
 BasicNetグループ傘下に入ってからケーウェイは着実に拡大を続け、ハイブランドとのコラボレーションなどのマーケティング活動を背景にした成長路線と戦略が奏功し、コロナ禍においてもパンデミックの影響が少なかったという。世界各地のビジネスパートナーとの密な連携により、ローカルマーケットでの需要をリアルに分析し対応できている点もブランドの大きな強みとなっている。イタリアでは国内での新規出店を加速し、売上は2桁増で推移。国内50店舗を展開するフランスをはじめ、スペインやアジアでも成長を続けている。
 コラボでは、これまでに「アー・ペー・セー(A.P.C.)」や「ヴェルサス ヴェルサーチェ(VERSUS VERSACE)」「ディースクエアード(DSQUARED2)」などさまざまブランドと展開。2021年には「プレイ コム デ ギャルソン(PLAY COMME des GARÇONS)」ともタッグを組んだ。これらの取り組みはラグジュアリー業界でも注目され、「フェンディ(FENDI)」や「サンローラン(SAINT LAURENT)」といったラグジュアリーブランドからもコラボ相手に起用されるようになった。

 ロレンツォCEOによると、今でも多くのコラボのリクエストが届いているという。「いずれもケーウェイのウィンドブレーカーというアイコニックな商材の伝統と優位性を認識して、私達にコラボレーションを提案してくださっています。私たちはケーウェイのポジショニングとストーリーテリングを軸にしてパートナーを選出しているのですが、方向性としてはグローバルなラグジュアリーブランド、もしくはクールでニッチなブランドのいずれかであることが多いと思います。その結果、多様な消費者セグメントにアプローチする機会を創出できていると考えています」。
 日本では今年、アーテイストの長場雄との初のコラボが実現。今後はファッションだけではなく、デザインやアート、音楽などの新しい分野でのパートナーシップを開拓していきたい考えだ。
八木通商とのパートナーシップで得たもの
 ロレンツォCEOは、日本について「アジアの中でも、また世界においても、ファッション全般において主要なターゲット市場」と注目する。
 日本においては2022年から八木通商とパートナーシップを組み、本格上陸。八木通商は「マッキントッシュ(MACKINTOSH)」や「モンクレール(MONCLER)」といった名だたるブランドを日本に持ち込んだことでも知られる。ロレンツォ氏も「八木通商は日本とヨーロッパでの豊富なブランド開発経験があり、ブランドの可能性とその価値を正確に理解しており、それを発展させて伝える方法を知っています。当社のプレミアムポジショニング戦略における要件とも完全に一致しています」と、同社を高く評価している。昨年9月には渋谷明治通り沿いに日本初となる旗艦店がオープン。インバウンド客の来店も目立っている。

 八木通商とのパートナーシップによる相乗効果は早くも現れている。顧客層のボリュームゾーンは20代の男性が8割弱を占め、そのほとんどは今春以降のマーケティング活動で獲得できたという。人気商品は、ベストセラー商品でもあるフルジップのウィンドブレーカー「クロード(CLAUDE)」。また、アーカイヴのロゴとオーバーサイズフィットを採用した日本限定の「REMAKE 1975」コレクションも注目度が高いという。

 先日、数年ぶりに来日したというロレンツォCEOは日本の印象を「常に最先端で、止まることのない非常にダイナミックな市場。同時にバランスが取れており、実際に私が感じるのはその“軽快さ”で、市場研究という意味で最も先進的な国であり、どんどん新しいことを採り入れています。ファッションだけでなく他のエリアにおいても、日本は真の“クールハンター”だと感じています」と語る。市場としての可能性の大きさも感じているといい、今後は日本マーケット向けの限定商品の開発などを通じてファンを獲得し、「プレミアムブランド」としてのポジショニングを確立していきたい考え。主要セレクトショップや百貨店に向けた卸売やポップアップも強化していくという。
「拡大のフェーズ」 鍵を握るのはアジアとアメリカ市場
 ケーウェイは今、「拡大のフェーズ」にあると捉えるロレンツォCEO。その要となるのは日本を含むアジア市場だとしている。また、アメリカ市場でもパートナーシップを締結。ヨーロッパではイギリス、ドイツ、スペインでの存在感を強めるなど、主要市場であるイタリアとフランスへの依存からの脱却を目指す。