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『風の谷のナウシカ』実はバッドエンド? ”原作漫画”と”映画”のストーリーが全然違ってた!

2023年06月28日 12:51  リアルサウンド

リアルサウンド

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 1984年に劇場公開された往年の名作『風の谷のナウシカ』。宮崎駿監督による作品でスタジオジブリの中でも非常に人気のある映画の1つだが、実は『風の谷のナウシカ』には漫画の原作がある。


(参考:【写真】『風の谷のナウシカ』造形総指揮・竹谷隆之が秘密に迫るメイキング写真集をみる


  映画はこの原作の序盤の部分を短くまとめたものだ。原作では映画で描かれていない世界の真実などが明かされるが、今回は『風の谷のナウシカ』の映画と原作の違いについて触れてみたい。


■漫画は救いがない? 映画と原作の結末の違いとは


 『風の谷のナウシカ』の舞台は、旧人類による最終戦争から1000年の時が経った世界。文明を失った人間たちは、瘴気を放つ腐海と巨大な蟲に侵食された土地で怯えながら暮らしている。


 映画の『風の谷のナウシカ』では、腐海や蟲と共存する道を選択するナウシカが描かれるものの、腐海や蟲たちの真の正体は明かされていない。一方、原作では腐海や蟲たちの真実が描かれている。ナウシカたちが存在する理由も明らかになるため、腐海や蟲との共存にとどまらないスケールの大きな結末を持つ。


 端的に言うと腐海は汚れた世界を浄化する役割を持ち、蟲はその腐海を守る存在だ。原作ではこの腐海と蟲が旧人類によって作り出されたものとなっている。また、ナウシカたち現代の人間も腐海の浄化を見守るために旧人類によって作られた存在。旧人類が望む完全に浄化された世界では、現代の人間は消滅してしまうという衝撃の設定が明かされている。


 映画ではナウシカとクシャナたちとの戦いがメインに描かれるが、原作はナウシカと旧人類との対立を描いた物語。映画と原作に共通しているのは環境問題をテーマにしているところだが、映画よりも原作はかなり重い。


 映画では平和的で希望のある終わりを迎えるが、原作ではナウシカが救いのない世界で愛する人々と生きる選択をするという厳しい現実が待つ結末を迎えた。自然との共生を目指す世界が前者とすれば、後者は自然破壊が招いた結果の社会と捉えることができるだろう。


■クシャナは敵じゃない? ストーリーで変わるキャラクターの見え方や描き方


 物語で描かれる真相や結末が変われば、キャラクターの見え方や描き方もまったく変わってくるもの。映画でのナウシカは自然と動物を愛する心優しい女性という印象だが、原作ではどちらかというとかっこよくて芯の強い女性というイメージが強い。もちろん優しさもあるが、それだけではない逞しさを映画以上に感じさせる。


 映画では敵だったクシャナも、原作ではナウシカと共闘しているなど違いがある。性格も高慢な印象があった映画に対し、原作では頭がよくキレる部下思いのかっこいい女性という印象だ。圧倒的なカリスマ性も持っており、ナウシカに次ぐほどの人気キャラでもある。


 そもそも原作は登場するキャラクターも映画より多く、相関図も映画より複雑だ。さまざまな立場がありそれぞれの思想や主張があるため、考えさせられることもたくさんある。ネット上でも「こんなに衝撃を受けた漫画は初めて」「映画だけで満足していてはもったいない」など、原作を推す声も多く見られた。


 映画の『風の谷のナウシカ』はテレビでもこれまで何度も放送されているが、原作の漫画の方は映画ほど認知されていないだろう。未読の方はぜひ手に取って、『風の谷のナウシカ』の世界をたっぷり堪能してみてはいかがだろうか。


(文=ヨークシャー)