「最近の中学受験の問題は難しくなっている」
「10年前までは6割取れたら入れた学校でも、最近は8割得点しないと合格できない」
中学受験についてこのような噂を耳にしたことがある方はいらっしゃいませんか?学習塾経営・現役のプロ家庭教師である私から言わせていただくと、「一部は正しく、一部は正しくない」ということになります。
教科書に準拠した問題が出題される高校受験や大学受験と違い、中学受験ではそれぞれの学校が、各校の特色を発揮すべく独自色の強い問題を作成してきました。
これまでも難関校は互いの問題をチェックして参考にしてきましたが、近年のインターネットの普及によってそのスピードは加速しています。さらに、問題を解く側、すなわち受験生や学習塾も、ネットを通じてスピーディに解法を共有するようになりました。
これらの状況から「問題が難しくなった」「周りの得点率が上がった」と感じる人もいるようですが、実際の状況はもう少し複雑です。
この記事では、インターネットの普及が昨今の中学受験に及ぼしている影響を詳しく解説していきます。(個別指導塾経営、プロ家庭教師:妻鹿潤)
出題はむしろ予想しやすくなっている
私の肌感覚になりますが、問題を解ける子と解けない子の差は広がっているように感じます。また、その差は出題傾向のトレンド把握力の違いにあるのでは、というのが私の仮説です。
例えば、最近では「関西のとある難関中学校で出題された問題は、数年後に必ず関東の超難関校で出題される」というトレンドがあります。
このトレンドは、難関校の出題内容をデータ化し、しっかりと分析している学習塾であれば把握できる情報ですし、個人・家庭レベルでも分析して把握している方はいらっしゃいます。
「自分が受験する年には、多分この問題に似た問題が出るな…」と予想できると、難関校の受験はグッと難易度が下がります。
一方で、こうした情報収集・分析に疎い塾や家庭の場合は、出題の予想ができないため、「周りが解けている問題が解けない」「難しい問題なのに解けている人がたくさんいる」という状況に陥りやすいです。そのため、“難易度が上がった”と感じる方が一定数いらっしゃるのではないでしょうか。
「情報格差」という言葉が表れて久しいですが、受験においても情報戦の時代になっていると言えるでしょう。
受験生の解答スキルも向上している
中学受験は、その学校に行きたい人だけが受験するものです。また、「教科書の内容から出題しなければならない」といったルールも無いため、基本的には難易度は上がっていく一方です。
ただし、問題の難化のスピードと解答スキルの向上のスピードは、インターネットの普及に伴い以前よりは格段に速くなったと言えます。
それぞれの学習塾は解答速報をいかに早くインターネットに上げるかで競争し、また、大手学習塾以外でも教育系YouTuberたちが一つの問題を様々な角度から解説して、複数の解法を示しています。
学校側はこれらの情報を参考にして次年度の問題を練り上げることで、さらに難易度を高めていきます。受験生側はこれらの情報に加え、学習系アプリなどで効率的に学びつつ、時にはアニメキャラが解説してくれる動画なども見ながら解答スキルを磨いていきます。
これらは総じて情報化社会だからこそ生じている現象であり、これについていけない学習塾や個人にとっては厳しい時代となっています。
これからの中学受験は「情報リテラシー」がカギ
「いかに情報を速く入手し、分析するか」
「デジタルツールを活用し、効率的に学習を進めるか」
これからの中学受験では、この2つが大きなカギになるでしょう。現代社会において情報を正しく扱う力=情報リテラシーは必須のスキルであり、中学受験段階からそれが試される状況にあります。
また、今後は中学受験だけでなく、高校受験や大学受験でもこの傾向が強まることが予想されます。これから受験を控えているご家庭においては、基礎的な学力をしっかりと伸ばすことに加えて、情報収集・分析についても意識的に取り組まれることをおすすめします。