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ドローンの認識機能で逃亡者を追跡! 千葉の高校で特別授業が実施される

2023年06月28日 10:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
若い世代が学びの中で、将来自分たちが活躍する社会で、企業がどのようにICTを使っているかを知ることは大変意義深いことだ。



千葉県立市川工業高等学校とNTT東日本は、同校の2年生を対象にドローンを活用する企業活動を学びとして採用、ICTの最新事例として生徒たちにリアルな体験を届ける特別授業として実施した。6月1日、2回目となる授業が行われたので当日の模様を紹介しよう。


○企業はテクノロジーをどのように活かしているのか



NTT東日本がドローン活用の特別授業を行ったのは千葉県立市川工業高等学校(以降、市川工業高校))。1クラス約40名を対象に座学、演習、実習を約2時限でこなすというカリキュラムだ。



対象となったクラスは電気科2年生で、科目はプログラミング技術。将来、ICTに関わる仕事を目指している若者に、企業が実践しているドローン活用の実際を体験してもらおうという試みだ。


「NTT東日本さんは生徒たちの就職先としてもお付き合いがあり、私たちの学校とも協力関係にありました。そんな中、学生たちの課題研究のテーマをいくつかご提案を頂いた中で、『企業におけるドローン活用』というものがありました。生徒たちにも興味のある分野なので実現へ向けて計画し、こうして実現に至ったという背景があります」と語るのは同学の教諭である片岡氏。



「私自身、外部の企業の方とこういった授業を創るというのは今回初めての試みとなるので、驚きを持って取り組ませていただきました。当校の文化祭ではドローンレースが開催されるなど、生徒たちにも身近なものです。自分たちが将来就職するかも知れない企業の中でドローンがどのように使われているか、理解するにはとてもよいチャンスだと考えました」とおなじく教諭を務める皆森氏も語る。

○生徒たちの目がキラキラな楽しい授業



ドローン活用の特別授業の内容だが、座学ではNTT東日本が普段どのような活動をしているのか、同社におけるドローンの活用事例を交えて約20分で学ぶ。



これにより、企業におけるドローン活用の概要を知った生徒たちは、いよいよ演習・実習が行われる体育館へと移動する。


体育館では最初にドローンの人物認識機能を使い、対象となっている人がドローンからの追跡を逃れようとすると「どのような動きをするのかというケース」を想定した実験を行う。



代表として選ばれた生徒がドローンのパイロットとなり、NTT東日本の専任スタッフと共に逃亡者役の人物を追うように指示をすることになる。もちろん、逃亡者役も本日の授業のために立候補した生徒達だ。


見学している生徒たちにも理解が進むように、「A君が建物に逃げ込み、すぐにB君が同じドアから飛び出した場合、ドローンはどのような動きをするか」といったクイズが出されるなど、授業はインタラクティブ性を持たせた内容となっていた。



逃げ回る生徒にしっかり追従するドローンを見て感心したり、ドアに逃げ込むと同時に飛び出した別の生徒は追わず、立ち止まったままのドローンを見て、納得する生徒や疑問を持つ生徒が議論を始めたりするなど、授業は冒頭から熱の入った展開となる。


ドローンは対象物と認定した人物を見失い、追跡機能を停止する。



タイミングと場所がうまく重なればAからBへ追跡対象が切り替わることもあるが、最初に登録したAのみを認識するケースが大半となる



次の演習では、最初にドローンの自動飛行のメカニズムを解説し、その後、ポールやアーチなどが張り巡らされた複雑なコースを自動飛行させるという応用編も体験した。



ちなみにこちらの授業でも、自動飛行の設定が終わったコースにあえて障害物を設置し、ドローンがどのような行動をとるかといったクイズが出されている。


○自分たちが学んでいる技術の集大成

最後の演習では、自動飛行によって対象物の3Dスキャンを実施する様子をレクチャー。これにより、生徒たちは適切なルート設定のやり方や、対象物の三次元データ生成のやり方を学ぶことができる。



この時、対象物としてポージングを取った片岡氏と、ピエロの衣装を着た皆森氏が登場。生徒たちはいつも壇上にいる先生がユニークなポーズをしたり、着ぐるみをまとっている姿を見たりしたことで大喜びだ。



もちろん、それだけでなく、ドローンが細部までスキャンする様子を見て感心するなどで授業にのめりこんでいく。この時のデータがいわゆる「点群データ」となるが、採取方法を実践から学ぶことができるなど実に収穫の多い授業となったようだ。


1機のドローンですばやく点群データを採取ができるようになったことを体感、この技術により、大規模設備のメンテナンスや災害現場のリアルタイムな現状把握に活かされていることを学んだ

○ドローン活用特別授業を終えて



――授業を終えた感想は?



小髙さん「参加してみたら、ドローンを飛ばすときのプログラムの指定などの細かいところまで教えていただいたのとても楽しかったです」。



和田さん「文化祭でドローンレースを見ましたが、実際に飛ばしてみたのは初めてだったので楽しかったです」。



※両名ともパイロットを体験している


――どんなところが学びになりましたか?



小髙さん「プログラムを学んでいるところですが、ぼくたちがやっていることの一つひとつが基礎となっていてしっかり覚えれば、いろいろなところで役立てられると思いました」。



和田さん「海外ではドローンを運送業に使ったりしているのを知っていました。自分でも操縦してみて思ったよりも簡単だったので、今回の経験でそれが実用可能なことが分かった気がしました」。



――またドローンの授業があったら受けてみたいですか?



小髙さん、和田さん「受けてみたいです!!!(両名)」



――ありがとうございました!

○関係者の振り返り



「ここで学んでいる生徒たちはプログラミング技術や電子技術に明るい子どもたちです。普段学んでいることが、ドローンを通じてこうして形になっていくことが伝えられたのかなと思っています。生徒たちの反応もとてもよく、パイロット役にも積極的に手を挙げてくれていました。そもそも基礎がしっかりしている子どもたちですから、飲み込みも早かったですし、企業がこうやってテクノロジーを使い、日々社会貢献をしているということが実感できたと思います」と語るNTT東日本の金木氏。



今回の授業の成功を受け、NTT東日本としてもかなり手応えを感じているのが受け取れる。


「今回はドローン活用をテーマに、いつも自分たちが学んでいることが社会ではこのような形で役立っているということが体験できました。今後も様々な形で入手したデータをどのように役立てていけるのか、データサイエンスという視点で授業に役立てていければと考えています」と片岡氏。



「自分たちが学んでいることの積み重ねが、こうして完結してひとつの取り組みとして集約される。その様子を生徒たちは実感できたと思います。別のツールを与えられた時も、同じように、センサーがデータを受け取って値を得る、それを処理して次の動作につなげるといった一連の流れを理解してくれるとうれしいですね」と皆森氏は語った。



市川工業高校の教職員、NTT東日本千葉事業部のスタッフたち、そして同校の生徒ら全員が創り上げた特別授業はこうして幕を閉じた。



「NTT東日本には、様々な設備アセットがたくさんあります。学校だけでなく地域に貢献できるツールがいろいろとあるので、今後もこうした活動を通じて、社会貢献ができる人材育成につなげていければと考えています」と最後に金木氏は語ってくれた。



NTT東日本の今後の取り組みに注目していきたい。(エースラッシュ)