2023年06月25日 08:51 弁護士ドットコム
元婚約者が私以外とホテルに泊まっていた「証拠」がほしい――。弁護士ドットコムにこんな相談が寄せられています。
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相談者は、結婚式の招待状を発送したあとで、婚約者だった男性から一方的に「好きじゃなくなった」と婚約破棄されたそうです。
旅行サイトの履歴から、婚約中に相談者が実家に帰っているタイミングで、彼がホテルの「カップル限定プラン」を利用したり、旅館に泊まっていたりしたことがわかりました。
相談者は「婚約不履行の裁判」を検討していますが、婚約者が「自分は予約しただけで泊まったのは別の人」と反論するのではないかと不安に思っています。
裁判にあたっては、婚約者がホテルに宿泊していた事実を立証したいところです。証拠として、宿泊者名簿を開示してもらうことはできるのでしょうか。浅野格之紳弁護士に聞きました。
——相談者は確実に宿泊したという証拠を手に入れたいようです。
相談者の知らないところで、婚約者が「シティホテルカップル限定ダブルベッドプラン」や「旅館」に泊まっていたという旅行サイトの履歴を発見してしまったら、他の女性との関係を疑うのも当然かと思います。
ただ、このような怪しいという疑いの域を出ない履歴だけでは、仮に訴訟を提起したとしても、裁判所は、婚約者が相談者以外の女性と肉体関係を持ったとは認めない可能性があります。そのため、どうにかして婚約者が女性と肉体関係を伴う浮気をしていたことの証拠を入手したいところです。
現在も女性と関係を持っていれば、興信所などを使って証拠を得ることができるかもしれませんが、すでに関係が終わっていたり、警戒されて女性との接触を控えられてしまっていたりすると、そのような方法も難しいです。
——本人が正直に打ち明ければ良いのですが、なかなかそうもいきませんよね?
たしかに、婚約者を直接問い詰めて、女性と関係を持ったことを婚約者自身が認めれば、その音声の録音は証拠となりえます。しかし、相談者も心配されているように、婚約者が「自分は予約しただけで泊まったのは別の人」などと主張する可能性も考えられます。
——弁護士であれば、宿泊名簿を開示できるのでしょうか?
はい、弁護士会を通じて、ホテルなどの宿泊施設に照会して回答を求める方法が考えられます。弁護士会照会といいます。この方法は弁護士でなければできません。
どのような事項について照会を求めるかにもよりますが、ホテルを利用した事実の有無、利用人数、同伴者の有無、同伴者がいる場合に同伴者の氏名・性別、チェックインの時間、チェックアウトの時間、部屋のタイプ、総支払金額などについて回答してもらうことができる可能性があります。
ただ、宿泊施設に対する弁護士会照会は、宿泊者のプライバシー保護を理由に紹介先の宿泊施設が回答を拒否することが多い印象です。
——では、この方法も使えないということでしょうか?
婚約者に対する訴訟提起後であれば、同様の事項について調査嘱託の申立てをおこなうことも考えられます。これは裁判所から宿泊施設に対して必要な調査を依頼する方法です。弁護士会照会よりも回答があることが多いです。
相談者の場合、まずは弁護士会照会をおこない、シティホテルや旅館からの回答を求め、もしシティホテルや旅館が、婚約者のプライバシー保護を理由に回答を拒否するようであれば、婚約者に対して損害賠償請求訴訟を提起したうえで、調査嘱託を申立てるのが良いのではないでしょうか。
【取材協力弁護士】
浅野 格之紳(あさの・かくのしん)弁護士
弁護士登録以降、離婚を主とした家事事件に注力。弁護士法人とびら法律事務所は、累計5000件以上の相談実績を誇る。早期解決を目指し、裁判所を使わない協議案件に力を入れている。
事務所名:弁護士法人とびら法律事務所
事務所URL:https://www.tobira-rikon.com