女優は演技力が問われる世界。それと同等にイメージや好感度が大切な人気商売でもある。それなのにレストランのオーナーシェフ・鳥羽周作氏(45)とのダブル不倫問題の渦中にいる広末涼子(42)は自ら墓穴を掘り続けている。
広末涼子、事務所批判は最悪の手段
最悪の一手は所属芸能プロダクション『フラーム』の批判にほかならない。『週刊文春』記者に自らアプローチして、反目している夫のキャンドル・ジュン氏(49)とフラームが連絡を取り合っているのではないかとの疑念などを語った。
《色んな疑いを私が会社に持ってしまった。ジュンさんと繋がってるんじゃないか、ジュンさんをどうして擁護するのか、とかも含めて》(『週刊文春』6月29日号の広末の発言より)
15歳だった1996年のデビュー以来、ずっと一緒に歩んできた同社の井上義久社長については記事の中で「同志」と評しているが、それでいて「信頼はしていない」と口にした。
「芸能人の所属芸能プロ批判はタブー」などと古臭いことを言うつもりはない。不満があったら、世間に訴えればいい。それによって所属芸能プロが折れて、解決する問題もある。
ただし、個人差はある。広末の場合、過去にもトラブル、スキャンダルがあった。それでも芸能界で重用され続けたのはフラームの存在があったからでもある。同社が保証人的存在、担保的役割を果たしてきたので、仕事先は一定の安心感を持っていた。
しかし、今後は厳しくなりそうだ。仮にフラーム側が広末による批判を水に流そうが、仕事先に「広末は会社の指示や指導に従わない恐れがある」と思われてしまったからだ。
ドラマや映画、CMなどの担当者の見方が違ってくるはず。担当者らはフラームという後ろ盾があるから仕事をしているのであり、同社と広末の関係が良好でなかったら、起用にためらいが生じるだろう。
現在の広末は鳥羽氏とのダブル不倫問題が泥沼化している。キャンドル氏からは「心が不安定になって、(言動が)急変することがある」と指摘されてしまった。かつてなく保証人的存在と担保的役割が求められているのだから、フラームとの関係が悪いことをうかがわせる発言は絶対に避けるべきだった。
保証人との関係がギクシャクしていることがバレてしまったら、金も賃貸住宅も借りにくくなるのと同じ理屈である。保証人抜きでも本人に十分な信用があればよく、実際に満島ひかり(37)らフリーの芸能人も活躍しているが、広末の場合は十分信用があるとは言えない。
広末を守ってきた井上社長
2001年5月、21歳だったときの広末はジャン・レノ(74)とダブル主演した日仏合作映画『WASABI』の製作発表会見で、突如として号泣した。その後、涙の理由を説明したが、ポエムのような内容で意味不明だった。
《夢をかなえることと、自分を守ってくれる人がいること、そういう人がいるから負けてはいけないなと思ったり。でも、こういうことは勝ち負けではないと思ったり》
さらに同7月にはタクシー料金の不払いを写真誌が伝えた。広末は東京・西麻布の飲食店で俳優・金子賢(46)と遊興したあと、タクシーに乗り、そこからフジテレビの連続ドラマ『できちゃった結婚』のロケ地である千葉県白浜町に向かった。距離は100キロ以上。その運賃約4万円を支払わなかったと報じられた。また、タクシーを降りたあとはダンスを踊るようなポーズを取り、世間はいよいよ首を傾げた。
火消しにあたったのはもちろん所属事務所のフラームだ。2002年1月に行われた『WASABI』の公開記念会見では参加を許すマスコミを限定。一連の広末の行動を「奇行」などと報じたマスコミは排除した。
その上で広末を笑顔で会見場に登場させ、本人は「あれは喜びの涙。あの時は失礼しました」と悪びれずに語ったのだ。参加するマスコミを絞ったため厳しい質問は出なかった。これにより、一連の問題はなかったことになった。
2005年に広末は夜の街で自分が遊び歩いているなどと報じた記事は虚偽だとして、週刊誌を訴え、勝訴。実質的に裁判を取り仕切ったのは言うまでもなくフラームだ。2008年には元交際相手との接触を不倫と誤解される表現で報じた女性誌を訴え、やはり勝訴した。
芸能人の記事は揉めても訴訟になることが少ない。記事に間違いや誇張などがあった場合、掲載した側が訂正・謝罪文を載せて終わる場合が多いからだ。
だが、井上社長は広末のイメージを守ろうと懸命になった。広末に好意的な記事を書くマスコミは優遇し、スキャンダルを書く相手とは戦った。穏やかそうに見える人だが、行動は熱い。
広末の今後は?
井上社長にとっても広末は同志だったのだろう。同社長が広末と1998年にフラームを設立したのは知られているが、その前の2人は芸映に所属していた。芸映は故・西城秀樹さんや浅田美代子(67)、岩崎宏美(64)、河合奈保子さん(59)らを輩出した老舗有力芸能プロだ。井上社長と広末は老舗の看板がなくても成功できることを証明しようと躍起になったのかも知れない。
その目標は達成されて、現在のフラームには戸田恵梨香(34)、有村架純(30)、吉瀬美智子(48)、田中みな実(36)らが所属する。急成長し、女優専門の準大手芸能プロと呼ばれるようになった。新人の売り出しには広末も一役買った。
たとえば2013年に広末が主演したフジテレビ系(制作・関西テレビ)の連ドラ『スターマン・この星の恋』には、まだ知名度が十分でなかったころの有村も出ている。広末という人気者がいたから、後輩たちもドラマに出演しやすくなった。
同社ホームページで紹介される筆頭の所属女優はずっと広末である。井上氏と2人で旗揚げしたのだから当然だ。会社からも特別扱いを受けてきた。スキャンダルから守られたのみならず、NHK連続テレビ小説『らんまん』への出演など良い仕事を常に用意されてきた。
もっとも、現状を見ると、特別扱いが広末の考えの甘さを招いてしまったのかもしれない。何をやろうが、なんとかなる、そう無意識のうちに思い込んでしまったのではないか。
フラームは広末を斬り捨てはしないだろう。広末のためにつくられ、大きくなった会社なのだから。広末も同社と袂を分かつつもりはない。『週刊文春』6月29日号で「もしも井上と仕事をしないのであれば、この世界、この業界を去る時かなと」と語っている。
従来のままでは仕事先も広末への不安が消えないだろう。そうならないためにはフラームが特別扱いをやめ、本人に強く自重をうながすか、あるいは広末がそろそろ自ら筆頭女優の自覚を持つしかないのではないか。
6月21日、フラームのエース級女優の1人である戸田がAmazonのセールのPR会見に出席した。5月に夫の松坂桃李(34)との第1子誕生後、初の公の場で、ママとなった日々を笑顔で明かした。
だが、広末のスキャンダルのニュースが大きく報じられたため、戸田の記事は片隅に追いやられてしまったように思う。筆頭女優らしくない。
取材・文/高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立。