2023年06月19日 10:21 弁護士ドットコム
FX(外国為替証拠金取引)の自動売買ソフトを購入して入金したところ、想定していない人為的な裁量トレードがおこなわれて、損害を受けたとして、購入客が販売業者とトレーダーを相手取り損害賠償を求めた訴訟で、新潟地裁(島村典男裁判長)は、約3000万円の支払いを命じた。判決は6月12日に確定した。
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FX自動売買ソフト(ツール)をめぐるトラブルや詐欺が問題となり、金融庁も注意喚起しているが、今回の裁判を起こした購入客の代理人によると、裁量トレードの取引の責任を認めた判決はめずらしいという。
判決文によると、原告5人は2018年12月から2020年1月にかけて、福岡県の販売業者からFX自動売買ソフトを購入した。「24時間365日稼ぐ~勝手に運用してくれます」「完全自動売買システム」という説明を受けた。また、契約書にも「裁量トレードをおこなわない」と記載があった。
海外の証券口座に計3000万円以上入金して、ソフトでFX取引をおこなっていたが、2020年に入って残金がほぼゼロになると、業者から「今期の実績は、すべて裁量で、システムは稼働しておりませんでした」と回答があったという。
5人は2020年9月、想定していない裁量トレードによる損害を受けたとして、販売業者とソフトを開発したトレーダーを相手取り、新潟地裁に提訴していた。
裁判所は、原告の主張を認め、残高が大幅に下落するとともに取引数が大幅に増加した時期から、トレーダーによる裁量トレードがあったと認定した。販売業者の関与も認めるとともに、それぞれ不法行為責任を負うと判断した。
業者やトレーダー側は、取引が増えるほど証券会社から手数料を得られるため、裁量トレードの動機があったと指摘した。
原告代理人の遠山光貴弁護士によると、FX自動売買をめぐる過去の裁判では「ソフトを購入させ、まったく運用しない」ことで問題になるようなケースが扱われてきたという。
「今回は販売業者だけでなく、購入者と直接の取引関係のないトレーダーらを含めて裁量トレードの不法行為責任を認めました」
ソフト購入費や口座に入金した全額のほか、入金で得られるボーナス相当額も損害として認められた。
FXのほか、バイナリーオプションや暗号資産などの「自動売買ソフト」をめぐる投資のトラブル相談が多数寄せられているとして、金融庁が今年4月、注意を呼びかけている。
中でも目立つのは、SNSで知り合った人からの勧誘を通じて投資した人からの相談だという。今回の原告らも先に始めた1人に誘われるかたちでセミナーに参加した。
金融庁によると、「日本で登録を受けていない違法な業者であったり、詐欺等をしているおそれもある」「投資したお金が引き出せない、出金の際に税金等の名目で高額な金銭を要求される、紹介者や業者と連絡が取れなくなる」といったケースが生じている。
取引や契約の前には、金融商品取引業の登録を受けているか確認したい。今回賠償が命じられた業者やトレーダーの会社も登録業者ではなかった。