2023年06月19日 07:01 リアルサウンド
赤坂アカと横槍メンゴによる漫画【推しの子】のヒットが止まらない。単行本の累計発行部数が、900万部を突破したことが明らかになった。
(参考:【写真】推さざるを得ないクオリティの『【推しの子】』星野アイ、1/7フィギュアをさまざまな角度から)
その人気を決定づけたのが、テレビアニメの放送である。今年3月のアニメ放送前は約450万部だったが、単純計算で倍に増えたことになる。【推しの子】の人気は現状衰える様子がなく、年内の1000万部突破も現実味を帯びてきた。
現代の漫画のヒットは、テレビアニメのクオリティが生命線になっていると言っても過言ではない。テレビアニメを見て、原作の漫画単行本を買い求めるケースが目立っているのだ。その傾向は、はっきりと部数に表れている。
アニメ放送前と放送後の部数を比較するとわかりやすい。『鬼滅の刃』はアニメ放送前は11巻まで刊行され、約250万部だった。これでも十分に売れている漫画なのだが、アニメ放送終了後は16巻までで約1200万部、18巻が刊行されたときは2500万部を突破した。当時、書店では品切れが相次ぎ、印刷が追い付かず、転売屋まで出現する事態になった。
その後、『鬼滅の刃』の単行本は23巻で完結したが、映画のヒットもあって、なんと現在では約1億2000万部という驚異的な部数まで到達している。
昨年もっとも話題になった『ぼっち・ざ・ろっく!』は、アニメ放送後、1月21日に「電子版を含まず」に100万部を突破したばかりだったが、その勢いは止まらず、3月10日には2か月経たずに200万部の大台に乗った。漫画専門店に行けば単行本が店の入口に山積みになっている状態で、再注目の漫画のひとつになっている。
同様に、『チェンソーマン』や『SPY×FAMILY』も、アニメ放送を経て漫画の部数が急増した例だ。いずれも、アニメが“神作画”といわれ、内容も面白いと評価された点が共通している。逆にアニメの出来がイマイチだった場合は、漫画の部数増につながらないのだ。しばしばファンの間で(アニメの)制作会社ガチャといわれるのは、そのためである。
アニメがヒットするとキャラクターグッズやタイアップが一気に増える傾向にあり、出版社もIP事業部に力を入れている状態にある。対して、雑誌はというと、ヒットが続いているにも関わらず部数減が続いており、現在最多の発行部数を誇る「週刊少年ジャンプ」は約125万7273部(日本雑誌協会発表の2023年1月~2023年3月の3ヶ月ごとの平均印刷)となっており、数年以内に100万部を割る可能性も出てきた。
従来、漫画のヒットは雑誌から火が付くことも多かったが、近年はアニメ経由で漫画が売れるというケースが一般的になってきた。そのため、ある出版社では雑誌よりもIPに人員を割き、IP偏重になりつつあるともいわれる。しかし、良質な原作を生み出すためには雑誌の存在が不可欠であり、新人発掘のシステムの維持も欠かせない。雑誌、単行本、IPのバランスをうまく保つことが、今後もヒットを継続して生み出すためには重要であろう。
(文=元城健)