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鬼門の鈴鹿で大躍進。「予想外の驚き」au TOM’S GR Supraがランク首位でシリーズの主役に

2023年06月14日 12:20  AUTOSPORT web

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2023スーパーGT第3戦鈴鹿 ポールポジションの位置にマシンをつけるau TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋)
 レース後は裁定などの関係で結果が二転三転する事態となった2023スーパーGT第3戦鈴鹿は、19号車WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南)の優勝が決まった。これにより、シリーズランキングも第3戦終了時点のものに更新され、au TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋)がGT500クラスのランキング首位に浮上した。36号車は第3戦では40kgと重いサクセスウエイトを背負っていながら、予選・決勝ともに力強い走りをみせ、陣営も中盤戦に向けて手応えを掴んでいる様子だった。

 5月の第2戦富士で優勝した36号車は前述のとおりサクセスウエイトも重くなったことで、第3戦鈴鹿はある程度苦戦も覚悟していた模様。両ドライバーをはじめ伊藤大輔監督からも「Q1を通過できれば御の字」という声が聞こえていた。

 しかし、土曜日午前の公式練習が始まると予想以上に好調な走りをみせ、セッション途中まではトップにつけていた。その勢いで午後の公式予選もQ1の宮田、Q2の坪井ともに好アタックを披露して2番手タイムを記録。のちに24号車リアライズコーポレーション ADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平)の車検不合格によってポールポジションに繰り上がり、「40kgのウエイトを積んでいたなかでは上出来の結果」とチーム内の雰囲気は明るかった。

 日曜日の決勝レースも序盤からトップをキープしていた36号車は、1回目のピットストップで19号車をはじめ、1号車MARELLI IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)、23号車MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)の先行を許して、4番手まで後退。序盤までの好調な走りから一転したレース中盤の順位だったものの、これに関してもチームは想定の範囲内だった。

「1回目の給油を長めにしたので少し順位は下がりましたけど、2回目の給油でライバルの前に出られる想定でした」と36号車の吉武聡エンジニア。第1スティントを担当した坪井も「2回目のピットが終了したときでないと順位整理ができないと思っていたので、1回目のピットで順位が下がったことは問題視していませんでした」と前向きに捉えていた。

 その手応えは36号車の走りにも現れており、10秒以上あったトップの19号車との差を宮田が安定したペースで徐々に縮めていき、19号車が2度目のピットストップを行う直前の段階で6秒後方まで迫っていた。

 その後、19号車が46周目に2度目のピットストップを行ったのに対し、36号車は2周後の48周目にピットイン。ここでもメカニックたちがミスなく作業を済ませ、一瞬は19号車の前でピットアウトしたものの、直後の2コーナーで逆転を許すこととなった。

「ライバルとの位置関係については僕も把握していなかったので、その瞬間で常にベストを尽くすことだけを考えていました。ただ、鈴鹿ではピットアウト後のウォームアップが厳しいということは分かっていました。その影響が2回目のピットストップで出てしまいました」と宮田。

■“一番美味しい”数周にトラフィック。「レースが続いていれば優勝も狙えた」
 このタイミングでは19号車の先行を許した36号車だが、スティントの後半ではペース的に上回っているというデータもあり、冷静にコース上での逆転を狙った。しかし、ふたつの誤算が生じた。まずは36号車が2度目のピットストップを終え、タイヤが温まり始めてからの“一番美味しい”数周で、GT300クラスの集団に遭遇してしまったことだ。

 50周を過ぎたタイミングで19号車の阪口が1分51秒台前半を維持しているのに対し、宮田は1分50秒台で周回。当初は最大で8.4秒あった両車のギャップも53周終了時点で4.3秒まで詰まっていた。このままいけば、36号車陣営が目論むコース上での逆転が現実味を帯びてくるはずだったものの、ここから2~3周にわたって宮田のペースが上がらなくなったのだ。

 このときの状況について宮田は「トラフィックに引っかかっていました」と語る。「19号車は(トラフィックの集団を)ホームストレートやバックストレートで全部抜き終わっていたのですけど、僕はちょうど1コーナーからS字まで(集団の)なかにいる状況でした。でも、その集団を追い抜いてからは良いペースで追い上げることができましたし、トラフィックのなかにいるときも決して悪いペースではなかったと思うので、パフォーマンスとしては高いところにいたのかなと思います」

 トラフィックは特に大きな影響があったという捉え方はしていない宮田だが、少なからずタイムロスにつながっていたことは確か。36号車はその集団を抜き切ると、19号車に対して1周あたり1秒以上速いペースで追い上げ2秒後方まで迫るも、アクシデントが発生して赤旗中断。そのままレース終了となった。

「正直、追い抜くつもりで追い上げていました。個人的には、あのままレースが続いていれば良いトップ争いができたと思いますし、優勝も狙えたと思っています」と宮田。勝てるだけの手応えがあったレースだけに、悔しさを押し殺そうとしている様子が伺えたが、「こんな上位の結果で終えられるのは万々歳ですし、僕たちは鈴鹿が鬼門だと思っていたので、全体を通して見れば良かったと思います」と、40kgのサクセスウエイトを積みながらも上位で争えたことに手応えを感じている様子だった。

 パートナーの坪井も、レース途中終了の影響で逆転のチャンスが潰えてしまったことは悔しそうだったが「苦手意識がある鈴鹿で優勝争いができたというのは、想像もできなかったことです。次は得意の富士に戻りますが、逆に苦手な鈴鹿でここまで調子が良かったので、次の富士も調子が良いとは限らないですけど(サクセスウエイトが)重くても戦えることは分かりました」と、全体的にはポジティブな一戦だったと捉えている様子だった。

 この2位でランキング首位に立った36号車は、次戦は72kgのサクセスウエイトを積むことになる。さらに燃料リストリクター制限も課されるが、鈴鹿で掴んだ手応えがあれば、中盤戦もコンスタントにポイントを稼いでいく存在になっていきそうだ。