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最新ミニバン比較! 「ノア/ヴォクシー」「ステップワゴン」「セレナ」

2023年06月14日 11:41  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
去年から今年にかけて人気のミニバンが相次いでフルモデルチェンジを実施した。実用性はそのままに燃費、走行性能、先進性などあらゆる面で進化が著しいトヨタ自動車「ノア/ヴォクシー」、ホンダ「ステップワゴン」、日産自動車「セレナ」の3台を比べてみよう。


○燃費良好なハイブリッド車を比べる



トヨタ「ノア/ヴォクシー」とホンダ「ステップワゴン」は2022年にフルモデルチェンジを実施。今回の新型セレナ登場で、いわゆる「5ナンバーミニバン」(ほとんどの車種が3ナンバーサイズだが)の分野で人気の3台の最新版が出そろったことになる。



いずれの車種にも共通するのは、快適性が高く走行性能も向上していて、移動が楽で運転が楽しいクルマに仕上がっているということ。「家族向けミニバン」はもはや、実用性重視の「移動の道具」以上の存在となっている。



ハイブリッド車(HV)をそろえ、WLTCモードで20km/L前後の低燃費を達成しているところも3台の共通点。燃費性能ではノア/ヴォクシーが23km/Lで頭ひとつ抜けている。これには、各社が採用するハイブリッドシステムの違いも関係しているだろう。車両重量はいずれも1.7トン前後におさまっている。



トヨタのハイブリッドシステム「THSⅡ」は、1997年の初代「プリウス」が初採用した「THS」以来、2つのモーター/発電機を持つ「シリーズ・パラレル式」という方式だ。ガソリンエンジンの燃費向上を最大の目的とする。プリウス誕生の際の開発目標は「燃費でガソリンエンジン車の2倍」だった。ちなみにノア/ヴォクシーのガソリン車は15km/Lなので、1.5倍以上の燃費性能を実現している。


ホンダのハイブリッドシステム「e:HEV」は発電用と駆動用の2モーターを備えるシステムで、エンジンにはクラッチ機構を持つ。基本的に通常はモーター走行となるが、高速道路など、ほぼ一定速度で走る状況ではエンジンも駆動に使うことがある。シリーズ式が基本ながらパラレル式で稼働することもあるシステム構成だ。


日産のハイブリッド「e-POWER」は1つのモーターと1つの発電機を持つシステムで、ガソリンエンジンは発電のみに使い、走行はモーターのみで行う。電気自動車(EV)を基にしたシリーズ式ハイブリッドシステムだ。


エンジンの効率向上を目的としたTHSⅡが燃費性能で他社より優れるのは当然といえる。一方、e:HEVとe-POWERは、モーター走行による価値の広がりも視野に入れたHVだが、燃費性能で大きく負けているわけではない。特にe-POWERは、EVと同様に減速時の回生を積極的に活用できる「e-Pedal Step」という機能を使えるので、運転の仕方や交通状況によっては燃費を大幅に向上させられる可能性を持つ。



ハイブリッドシステムの違いにより、走行中の乗車感覚にも違いがある。



ノア/ヴォクシーもステップワゴンもHVらしく、ガソリン車に比べると静粛性に優れ、上質な走行感覚が味わえる。ことに現行モデルではエンジンの稼働をあまり意識させないようにしており、それぞれ前型に比べ上級車の趣になった。


それでもセレナは、走行中にモーターでしか駆動を行わないので、より静かで滑らかな上質さを感じられる。まるでEVに乗っているかのような感覚だ。現行「ノート」からe-POWERは第2世代へと進化し、発電のためのエンジン始動を乗員に意識させにくい制御にした。このため、発電の必要があってエンジンが始動しても、それほど気にならなくなっている。


○走行感覚は?



操縦安定性や乗り心地について、ノア/ヴォクシーは全体に調和の取れた違和感のない走りで、操作に対し素直にクルマが応じるところにトヨタ車らしい安心がある。


ステップワゴンは新設の「エアー」(AIR)と従来から人気の「スパーダ」(SPADA)という2タイプから選べるが、やや乗り味に違いがある。エアーは軽快で爽快な動きや乗り心地に新鮮味があり好ましい。素のよさを感じさせる。スパーダは上級車種の趣があり、なかでも「プレミアムライン」という上級車種は、スウェードや合成皮革の風合いも相まって高級な雰囲気だ。


セレナは日産らしく操縦安定性に優れた高性能さが感じられる。確かな走りの手ごたえが特徴だ。人気グレードは「ハイウェイスターV」だが、新しく追加となった「ルキシオン」(LUXION)という最上級車種は「プロパイロット2.0」が標準装備となっていて、ほかの量販ミニバンにはない先進的な走りが楽しめる。


高速道路などでの前車追従クルーズコントロール(ACC)の使い勝手を比べてみると、ノア/ヴォクシーは前車追従型ではない通常のクルーズコントロール(CC)の操作ボタンもハンドルスポーク部に設定されており、ACCとの区別にわかりにくさがあった。ステップワゴンの「ホンダセンシング」は操作が容易で機能の信頼性も高かった。



セレナのプロパイロットやプロパイロット2.0は起動スイッチがわかりやすく、迷いなく操作できるので使いやすい。わかりやすい操作性のおかげで利用頻度も増えるはず。それにより、運転支援や自動運転の在るべき姿についての日産の知見が、より厚みをますことになる。



あらためて競合各車をまとめれば、ノア/ヴォクシーは誰にとっても不都合の少ない総合性能に優れたミニバンであり、「80点主義プラスα」を初代「カローラ」から唱えてきたトヨタらしい商品性だ。



ステップワゴンは、ホンダが「フィット」以来大幅に改善してきた前方視界のよさによる安心感の高いミニバンで、ことに新設グレードのエアーは日々快適に利用できる清々しさを持っている。ここは、ほかのミニバンにない風合いだ。



そしてセレナは、e-POWERやプロパイロット2.0などにより、先進性を最も強く感じられるミニバンに仕上がっている。家族のためのミニバンを基本としながらも、時代の先端をいくクルマでもあるところが嬉しい。最上級グレードのルキシオンは、車格が上の高級ミニバンとも比較対象となり得る新たな価値を提案してもいる。



御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら(御堀直嗣)